このメルマガは、株式会社皓星社の「ざっさくプラス」最新情報や、新刊案内等を配信します。弊社サイトから購読を申し込まれた方や、これまでご縁があった方にお送りしています。
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目 次
★第五号をお届けします
☆【新連載】よめば羊もよってくる 第一回(本屋B&B 錦織可南子)
★在野研究者のレファレンスチップス 第五回(小林昌樹)
☆趣味の日本近代出版史 第五回(河原努)
★ざっさくプラスニュース
☆出版ニュース
★【10月末まで】夭折の詩人・長澤延子、ミニ展示開催中
☆【宇野マサシさん画集】目標達成のお礼とネクストゴールのお知らせ
★『訴歌』トークイベントのアーカイブ販売中!
☆編集後記
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★第五号をお届けします
いつも弊社刊行物をご愛読、またデータベースをご愛用いただき誠に有難うございます。皓星社メールマガジン第五号をお届けいたします。
このメルマガでは、弊社の本やデータベースの新着情報とともに、弊社付属機関である近代出版研究所の活動報告も配信ししてまいります。
月1回配信いたします。お知り合いの方々へぜひ転送、拡散をお願いいたします。
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☆【新連載】よめば羊もよってくる
この企画は、本を起点とした方々に、今興味を持っていることや夢中になっていること、知って欲しいこと、変えたいと感じていることなどをご紹介いただき、その関心を読者の皆様へ繋げていきたいという考えをきっかけに始まりました。
偶然で繋がる予想のつかない流れを大切にするため、ご寄稿いただく方に次回の執筆者を指定していただくリレー方式で進めてまいります。
外のものに心を奪われ、肝心なことを忘れるたとえとして、「読書亡羊」という言葉がありますが、むしろ《よめば羊もよってくる》。熱中しすぎることでそこから新たな仕事や人間関係が広がっていくかもしれません。このリレーを通し、それぞれの視点の違い、あるいは通底するもの、そして読者の皆様のさらなる未来を呼び寄せるような新たな興味の手掛かりが見つかればと願っております。(編集部)
第一回 民芸に心惹かれる理由
錦織可南子(本屋B&B)
9月下旬。長袖を着ていてもぶるぶると震えるほどの肌寒い一日でした。冷たい雨が降り頻るなか訪れたのは、長野県・松本市に位置する松本民芸館。ここには、民芸運動に力を注いだ丸山太郎(1909~1985)が生前に蒐集した約6,000点にも及ぶ世界各国の多種多様な品々が収蔵されています。どれもキャプションには品名と産地のみが記載されていて、説明は最小限に留められています。「そのものの持つ美を直感で感じてください」という丸山の民芸に対する想いがそこに込められているように感じました。丸山の実家は「ちきりや」という広く知られた老舗問屋でした。祖父と父の代に家業が進展し多くの資産を築きます。家業を継ぎ、精を出す丸山に大きな転機が訪れる事になったのは1936年の秋でした。
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★在野研究者のレファレンスチップス
第五回 明治期からの新聞記事を「合理的に」ざっと調べる方法
小林昌樹(図書館情報学研究者)
■新聞紙*自体のこと
幕末明治から新聞紙が作られてきた。図書館にもそれらは備えられたのだが、通常、消耗品として廃棄され、帝国図書館ですら主要紙の保存に留まった。新聞紙の史料としての価値に気づいた畸人・宮武外骨が明治新聞雑誌文庫(東京大学)を開いたのは昭和2年のこと。
新聞紙も保存されるようになったのは、戦後、国会に国立図書館が移されて規模が10倍になってからだった。政治史にはあまり役立たないが、しかし新聞記事は、文化史、社会史、風俗史、生活史、ファミリー・ヒストリーに絶大な威力を発揮する。
ところが、新聞紙は図書と異なり、様々な事柄、雑多な記事が載っているのに索引がない。後から史料として使う場合には、雑多な記事をどう見つけてくるか、という検索法が決定的に重要になってくる。
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☆趣味の日本近代出版史
第五回 短詩形文学を手がかりに情報を探す――中央公論社の岩渕鉄太郎と横山真一の場合
河原努(皓星社)
■得がたい支援者
事典の編纂は個人プレーではなく多くの知友の協力があってこそ、恩師・稲岡勝のご友人である坂本寛さん(元東京経済大学図書館)もお世話になっている御一人。古書展で会うと「お、どうだい」と温かく声をかけてくださり、続いて「最近こんなの見つけたんだ」と出版関係者の饅頭本や追悼特集の載った雑誌などを無償で譲ってくださるのである。恩師曰く「サカモトは昔からそういう奴なんだよ」。坂本さんは古書展常連の開場前行列組、私はそこまで病膏肓に入っておらず混む頃合いを外すためにお会いする機会はそう多くは無いのだが、そんな私も(貧書生故に)西部古書会館の大均一祭だけは朝イチにいくので、その場で最近の収穫を受け渡して頂くのが恒例となっている。いつもありがとうございます。
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★ざっさくプラスニュース
【zoom商談・使い方ガイダンス 承ります】
Zoomを使ったご案内を始めます。ご契約機関様には使い方のご案内を、導入をご検討中の機関様には商品説明をさせていただきます。
1回30分単位~ご予約いただけます。ご予約や、トライアルのお申込みはこちらから。
【閉鎖するデータベースのデータ、お引き受けします】
ざっさくプラスは、閉鎖予定のデータベースのデータを引き取り、続けて公開します。かねてより、図書館関係者の方から「科研で作られたデータベースで、非常に有益なものなのに、教授の退官時や公開サイトの閉鎖時に消滅してしまうものが多い」という声を聞いておりました。そうしたデータを消さず、拾い上げたいと考えています。方法は主に以下の2通り。
①データを引き取り「ざっさくプラス」に登載。(無償)
②独立したデータベースとして引き取り連携検索して検索結果を「ざっさくプラス」と共に一覧表示。(費用等応相談)
どちらも検索結果に元のデータベースのデータであることを示すアイコンを表示します。
詳しいお話をお聞きになりたい方、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
【先月からの新規登載情報】
〇独自登載分
「号外」第1巻第1号(1927年7月)〜第2巻第3号(1928年3月)
※プロレタリアートの団体・東京記者聯盟の機関誌。NDLデジタルコレクション分(3冊)の欠号を不二出版からの復刻版総目次から補い(5冊)、全号通しての検索が可能に。表紙は柳瀬正夢。全8冊。
「にほんばし」第1巻第1号(昭和39年10月)〜第2巻第14号(昭和40年12月)
※アド・プロモーション発行の日本橋のPR誌(B6版横開き)。木村毅、境田昭造、加太こうじ、宮尾しげを、佃公彦らが連載、藤間紫、森茉莉、今日泊亜蘭、安藤鶴夫らが寄稿。谷崎潤一郎特集(12号)も。全14冊。
「こおろ(こをろ)」創刊號(昭和14年10月)〜第5年秋冬號(昭和19年4月)
※福岡の文学同人誌。詩人の矢山哲治が主宰、島尾敏雄、真鍋呉夫、阿川弘之、那珂太郎、小島直記、一丸章、吉岡達一らが集った伝説的な雑誌。13号は早世した矢山の追悼特集。言叢社からの複製版あり。全14冊。
「支那學」第10巻第3号(昭和16年8月)〜第11巻第4号(昭和21年7月)
※京都帝国大学の中国研究者が学科横断的に結成した支那学会の事実上の機関誌で、弘文堂書房が発行。NDLデジタルコレクション分の欠号4冊を補い、全号通しての検索が可能に。弘文堂からの複製版あり。
「台所」第1巻第1號(昭和4年9月)
※台所改善協会の機関誌で、編集兼発行人は鍵山博史。「何故にいかにして台所の改造をなすか」山下信義、「台所の構成 附農家及借家の台所改造」鈴木仙治、「家庭燃料としてのメタンガス」菅真三などの記事がある。創刊号以降未見。
「転形」創刊0号(1985年7月)〜創刊1号(1986年3月)
※劇団転形劇場の雑誌で、編集人に大杉漣の名前も。吉本隆明、大野一雄、別役実、鈴木忠志、伊藤比呂美、佐々木幹郎、柄本明、高田渡、鴻上尚史、渡辺えり子、村瀬学らが寄稿。泉谷しげると宇崎竜童のインタビューも掲載。全2冊。
「婦人戰線」第1巻第1號(昭和5年3月)〜第2巻第6號(昭和6年6月)
※高群逸枝、平塚らいてうらが結成した無産婦人芸術連盟の機関誌(月刊)で、発行兼編集印刷人は高群が務めた。住井すゑ、望月百合子、伊福部敬子、八木秋子、松本正枝らが執筆。緑蔭書房からの複製版あり。全16冊。
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・新規登載情報につきましては、Twitter皓星社ざっさくプラスアカウント(@zassakuplus)でも随時お知らせしております。どうぞご覧ください。
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☆出版ニュース
【新刊】
『虹のむこうには 為さん・大作さんの言葉ーーハンセン病取材二十年の記録』
10月5日刊、定価1800円(+税)
小川秀幸著。三重テレビ放送に勤める著者が、取材でハンセン病回復者と出会ってからおよそ20年。ふたつの国立ハンセン病療養所がある長島(岡山県瀬戸内市)を舞台に、療養所の入所者の皆さんとの親しく深い交流を通じて、ハンセン病をめぐる諸問題を考察した取材記です。俳優の常盤貴子さんの特別寄稿も収録。
『アナキズムを読むーー〈自由〉を生きるためのブックガイド』
10月22日刊、定価2,000円(+税)
田中ひかる編。不自由を強いられるパンデミックが長引くなかで、私たちはどう生き、将来をどう思い描いたらいいのでしょうか。ここに一つの手がかりがあります。それはアナキズム。みんなが生きやすい社会を構想するために、豊かな生き方と考え方を探る“希望と解放”の読書案内です。55のブックガイドとコラム・エッセイのほか、編者による「アナキズムの歴史と現在」を収録。
『大正アナキストの夢——渡辺政太郎とその時代』
10月22日刊、定価2,000円(+税)
多田茂治著。渡辺政太郎(1873-1918)は、堺利彦、幸徳秋水と同世代、後輩格の大杉栄、荒畑寒村らとも苦楽をともにした大正期の社会運動家でアナキスト。本書は、彼らの活動を陰で献身的に支えた政太郎の生涯と、彼が生きた時代を活写した本格的評伝です。土筆社刊(1992年)の新装版。解説は映画監督・瀬々敬久さんです。
【近刊】
『古本マニア採集帖』
11月30日刊行予定、定価2,000円(+税)
南陀楼綾繁著。本を集め、本と遊び、本で調べ、本から本を作る……。その情熱と執着は、どこから生まれてどこへ行くのか?「読者の記録」を追いかけてきた著者による、古本マニア36人へのインタビュー集です。「日本の古本屋メールマガジン」人気連載に、新たに書き下ろし原稿を収録。
『シリーズ紙礫15 ゴミ探訪』
11月30日刊行予定、定価2,000円(+税)
日比嘉高(名古屋大学教授)、熊谷昭宏(同志社大学非常勤講師)編。新しいものを作り出し、取り入れながら、私たちは常に何かを捨て、排出しています。ゴミは私たちの社会のもう一つの姿といえます。「シリーズ紙礫(かみつぶて)」第15弾は、屑拾い・屑屋ものに始まり、糞尿譚、瓦礫、ゴミ屋敷、核廃棄物に至るまで、人の生活と切っても切り離せない様々な「ゴミ」を探訪する、ゴミ文学アンソジーです。
『田村史朗全歌集』
11月20日刊行予定、予価5,000円(+税)
皓星社編集部編。田村史朗(1918~1958)は福岡県大川市に生まれ、旧制佐賀高校から京大経済学部を繰り上げ卒業・入営。戦後、駿河療養所に入所。失明しながら自治会長・評議会議長を歴任。「アララギ」によって作歌。本書は田村の全短歌、エッセイと追悼文を収めています。
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★【10月末まで】夭折の詩人・長澤延子、ミニ展示開催中
戦後間もなく、17歳という若さで自ら命を絶った桐生の詩人・長澤延子。そのミニ展示が群馬県立土屋文明記念文学館で始まりました。
今年6月に弊社より『長澤延子全詩集』を刊行したことが契機となり、土屋文明記念文学館に、延子の直筆ノートのコピーや肖像写真が寄贈されました。今回の展示は、これら新収蔵資料を展示するもので、延子の肉筆に触れられる貴重な機会です。 同館では、企画展示として《わらう!太宰治展》も開催されています。ぜひお運びください。
【期間】10月16日(土)〜10月31日(日)
【時間】午前9時30分~午後5時
【場所】群馬県立土屋文明記念文学館 1階ロビー
【観覧料】無料
※火曜休館、観覧受付は16:30まで。企画展、常設展の観覧は有料です。詳細はこちら。
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☆【宇野マサシさん画集】目標達成のお礼とネクストゴールのお知らせ
READY FORにて受け付けております画家・宇野マサシ氏の画集『賚−らい−』刊行にむけたクラウドファンディングが、10月20日(水)に目標額の100万円を達成いたしました!
いつも宇野さんの創作活動を応援してくださっている皆様、今回のプロジェクトを通じて初めて宇野さんのことを知り、ご支援くださった皆様に、この場をお借りして篤くお礼を申し上げます。
本プロジェクトは、全体で150万円の編集費と出版費用の一部を、皆様にご支援いただく形でスタートしました。これから終了日の11月1日(月)まで、全体で必要な「150万円」を新たな目標として、引き続きプロジェクトを継続していまります。
10月3日(日)の東京新聞でも、2012年制作の《太子の兄弟(大阪)》とともに本プロジェクトをご紹介いただきました。この機会に、より広く宇野さんの活動を知って頂きたいと願っております。
《太子の兄弟(大阪)》2012年、変形10号(57cm×43.5cm)
皆様からいただきましたご支援は、出版費用のため、大切に使わせていただきます。引き続きどうぞご支援・ご宣伝のほど、よろしくお願い申し上げます。
【プロジェクト概要】
・期間:2021年9月15日(水)午前10時〜11月1日(月)午後11時
・目標額:100万円(NEXT GOAL 150万円に挑戦中)
・事務局:株式会社皓星社
・プロジェクトページはこちら。
・新着情報ページには、山崎ハコさんや梅田画廊・梅田俊弘社長など宇野さんと縁のある方々からの応援メッセージ、さらに友川カズキさんによる宇野さんを歌った楽曲なども掲載しております。ぜひご覧ください。
【宇野マサシさんについて】
1948年、愛知県豊田市生まれ。新宿美術研究所にて山口長男、麻生三郎らから基本を学び、同時にボナール、スーチン等の色彩の持つ生命力に感銘を受ける。1976年、銀座の現代画廊・洲之内徹に見出され二度の個展を開催。その後、梅田画廊・土井憲司と出会う。1983年には、昭和美術史を支えた伝説の画商とも呼ばれる羽黒洞・木村東介と専属契約を結び、朝日アートギャラリーや柊美術店、松坂屋、そごう等の大型デパートで展覧会を実施。現在は書家である妻・小畑延子と共に下町平井で暮らす。著書に『ぼくの旅ー放浪と人と絵とー』(2014年、皓星社)がある。目下、豊田市の「矢作新報」に随筆連載中。
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★『訴歌』トークイベントのアーカイブ販売中!
8/29に下北沢の本屋B&Bにて行われた『訴歌 あなたはきっと橋を渡って来てくれる』刊行記念イベント《阿部正子×ドリアン助川 表現者たちの生きた証を残していくこと》のアーカイブを販売しております。アーカイブの販売・視聴は今月末日までとなっておりますので、ご購入の際はお気をつけください!
『訴歌』は、全国のハンセン病療養所で詠まれた短歌や俳句、川柳などを集めたものです。イベントでは、編者阿部正子様と本書の前身である『ハンセン病文学全集』(皓星社、全10巻)との偶然の出会い、編集上のこだわり、そしてそこに込めた想いをお話しいただきました。また、編集者として長いキャリアを持つ阿部様。これまで手がけてこられた本の紹介や仕事にかける情熱の秘訣などについてもお伺いしました。
さらに、ドリアン助川様による『訴歌』におさめられた短歌・俳句・川柳の朗読と作品解説もお楽しみいただけます。
本書ならびに本イベントはハンセン病についての理解を深め、病とそれをめぐる差別や偏見と長い間闘い続けてきた人々の生き様を知るための一つの機会でもあります。書き残されたその跡から、何を感じるかは私たち一人一人の知識と共感に任されています。皆様ぜひご覧ください。
【販売・視聴期間】9月22日(水)〜10月31日(日)
※本イベントのアーカイブ販売・視聴は期間限定です。
※Vimeoの限定公開URLを発行いたします。インターネット接続環境下のPCやスマートフォン、タブレットからのご視聴が可能です。
※ご購入直後に視聴用のURLが送信される都合上、お客様都合によるキャンセルは承っておりません。何卒ご了承ください。
お申し込み、詳細につきましてはこちらをご覧ください。
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☆編集後記
神保町という土地柄、千代田区立図書館には出版やデザインに関する<本の本>と呼ばれるジャンルの蔵書が豊富で、駅とは反対方向にもかかわらず、仕事帰りによくふらふらと寄ることがあります。先日手に取った編集者の心得を説いた本には、そもそも編集者は執筆者寄りと読者寄りの二つのタイプに自然に分かれていくものとあり、両方のバランスを保った天才的な例として菊池寛が挙げられていました。考えるまでもなく、私は徹底的な読者タイプ。というよりむしろ、過去の自分・未来の自分が必要とする本を作りたくて、のこのこと上京しこの業界に入りました。今回、ご寄稿してくださった錦織さんのおられる本屋B&Bは、オンラインでのイベントを精力的に企画・開催しており、本屋もないような田舎に住んでいた頃の私にとっては、まさに氷の海に浮かぶ救命ボートのような存在でした。次は私が誰かの小舟になれるでしょうか。そんなことを考えながら仕事をしています。(楠本)
先週末の南部古書会館にて。一通り買って外に出て、歩きながらふと路上に置かれた外台に目をやると「岩崎治子」の文字列が目に飛び込んできた。慌てて手に取ると、版元は岩崎書店。これは同社創業者・岩崎徹太の妻で、岩崎美術社の社長をしていた岩崎治子の饅頭本では、と思ったら案の定。二百円だった(会社に戻って調べると国立国会図書館以外には所蔵無し!)。ほんの一瞬、外台に目をやらなかったら見落としたまま帰っていた。一瞬が勝敗を分ける(?)ということですかね。ちなみに、ベストセラーになった『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の著者・岩崎夏海は岩崎徹太・治子の二男(岩崎駿介)の子、つまり創業者夫妻の孫にあたり、自身も岩崎書店の社長をしていました。(河原)
今日は高崎にある土屋文明記念文学館へ。全集刊行を契機に、これまで江古田詩人会に保存されていた長澤延子のノートのコピーや肖像が同館へ寄贈された。10月末日まで、これらの新収蔵資料を紹介するミニ展示が行われている。1948年5月に16歳で書いた「わだち」の直筆原稿もパネルで展示されていた。
かすかな夕映えに黑影はくらく
この馬車には灯火がない
この馬車には馭者がない
カツカツと又しめやかに荒原の幻想は行く
──寂寥よ
はたして私は生きて来たのだろうか」(「わだち」より)
延子の文字には、「肉筆」と呼ぶに相応しい力強さがある。ぜひ実物を見てもらいたい。
このミニ展示のことを言いたかったために、配信前夜にギリギリで書いています。(晴山)
駆け出しの頃、誤植の笑い話として「刊行がちょっと事情が有って遅れた」というのを「刊行がちょっと情事があって遅れた」としてしまった話を人の悪い先輩にされ顔を赤らめた(嘘つけ)。しかし、これは文字が一字一字独立していて(だから活字である)、なにかの拍子に前後が入れ替わったり横転してしまうことのある活版印刷の話で、現在のようなキーボード入力では起こりようのない話だ。「曾て(かつて)」に木曽の「曽」を当ててしまうのも有名な誤植ではあるが、これもキーボード入力では起こりようがない。読みではなく字形が似ているから起こるのは、活版工がこの字が読めなくて似た字形を探したか、OCR入力の特徴だ。不思議なのは「屋根を葺き変える」という誤植だ。活版でもOCRでもあまり起こりえない。ワープロでは「ふきかえ」と打つと「吹き替え」と「葺き替え」と変換されるから「葺き替え」を選べばよい。「屋根を葺き変える」は「葺き」と「変え」と分けて変換したか、確信犯的に「替え」を「変え」に「代え」ないと出てこない。この二例は当社の10月新刊の誤植である。前者は新装版なのでOCR入力。後者はキーボード入力である。前者は納得だが、後者はわざわざ間違えないと起こりようがないから不思議である。校正恐るべし。(藤巻)
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第五号をご一読いただきありがとうございました。
今号より、本をめぐるリレー新連載【よめば羊もよってくる】が始まりました!読書亡羊の解釈を一回転させ、この連載を読むことで自分の外にある全く違った人々の興味や関心を取り込むこと、そしてそこから新たな仕事や人間関係など思いもよらないフィールドが広がっていくことを期待して名付けられた本連載。記念すべき第一回をご担当いただきましたのは、本屋B&Bの錦織可南子さんでした。さて、錦織さんから第二回のバトンを渡されたのは一体どなたでしょうか?こちらは第七号にご寄稿いただく予定でございます(隔月更新)。
次号、小林昌樹さんの【在野研究者のレファレンスチップス】は、アンケート解答編第三弾<「として使う」法――例えば新聞DBを百科事典として>。
そして、森洋介さんの【書評未満/抄記以上】で取り上げますのは、『ラインズ 線の文化史』(ティム・インゴルド著、 工藤 晋訳、左右社、2014年)。こちらもどうぞお楽しみに!
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