■ Column 工房長のサイケデリックな日々 Vol.3
テーマ「デザイン」
私の場合だけかも知れないが、田舎に住んでいると、デザインというものを深く意識する機会は非常に少ない。
20年ほど前になるが、前職の鮨屋を新築した際に、見積もりに「デザイン料」なる高額な項目を見つけて唖然とした。
その奇抜過ぎる悪趣味なコテコテのデザインを抜きにしても、第一印象は「デザイン料って何だ?ボッてるの!?」だった。
考えてみれば、世の中にあるモノは全て”誰か”がデザインしたものだ。そのように意図しようとも、そうでなくても。
そもそも私の認識が、デザイナーとつくり手との境界線が曖昧だっただけの話なんだけど、正直、意識するまでは一緒だと思っていたし(笑)
つまり、大工さんが建てた家は大工さんのセンス(デザイン)だと。そこにデザイン”er”というワンクッションがあることすら想像も出来なかった。
以前、高速道路のサービズエリアにベンチを置きたいと、ネクスコ東日本さんから石巻工房にベンチのデザインと制作のご依頼を頂いた時の話。
せっかくなので石巻工業高校の生徒を巻き込んでデザイナーと何か出来ないかと相談したところ快諾して頂いた。
プロのデザイナー達と高校生による「サービスエリアに設置するベンチのワークショップ」が開かれ、数点のデザインが決まり、ネクスコさんが候補を絞り、模型をつくり、原寸大のベンチをつくる…といった具合。
結果、石巻工房の ENDAI をデザインした藤森泰司さんのベンチと高校生チームのモックアップをつくることになった。
製品化するにあたり、出来上がったベンチを見たネクスコさんが、高校生ベンチのデザインに藤森さんのデザインを融合出来ないか?と提案してきた。地元の高校生たちがつくったベンチを置くことは大変意義があることだが、デザインの完成度としては低い。サービスエリアという公共の場所に置く以上、それなりのベンチを置かなければならない…と。
ネクスコさんも相当悩んだらしく、とても決められないというので、藤森さんに相談したところ、彼曰く、「デザインを世に出した以上、私にはそのデザインに責任がある」「高校生たちがデザインしたものに私が手を加えるのはデザインとしては意味がない」。相手が誰であろうと、それは相手に失礼にあたるというスタンスにシビれた。
結果的に、高校生ベンチはネクスコさんの要望を取り入れる形で石巻工房でブラッシュアップし、制作、設置することになった。
この一件のお陰で、私のデザインの考え方、というか認識を改めることが出来た。
ハーマンミラー社曰く、「デザインとは、問題を解決すること」だそうだ。同じモノあっても、そのデザイン1つで使いやすさや愛され方が大きく変わったりする。さすがはハーマンミラー、シンプルで分かりやすい。
さて、そろそろオチの時間であるが、
皆さんは「愛」といえば何と答えるだろうか?
20代の頃は、愛とは「信じること」だと思っていた。
30代になると愛とは「感じること」と思うようになった。
40代の今は…愛とは「疑わないこと」と答えるようにしている。
50代では見える形がまた変わるだろうから、それが今から楽しみではある(笑)