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Volume 11, Number 2 | March 2014 Published bi-monthly
 

スポットライト

今号では、フィリピンにおけるマイクロインシュランスプロジェクトについて、東南アジア局(マニラ本部)の青木弘行・上級金融セクター専門官にご紹介いただきます。

アジア開発銀行では、日本政府の基金からの拠出を得て、2008年からフィリピン政府のマイクロインシュランス (MI)の推進プロジェクトを支援しています。MIというと、日本では、ニッチマーケットに特化した少額短期保険制度が頭に浮かぶかもしれませんが、マイクロクレジット同様、低所得層向けの金融サービスの一つです。保険商品は、生命保険、損害保険、入院保険など多岐に亘っています。

フィリピン政府は、農業関連など一部を除いて、基本的には低所得層向けの金融サービスの推進について、補助金など財政支出や政府系機関の直接の関与は行わず、法制面を含め、プライベートセクターの事業環境の整備に注力する方針を打ち出しています。MIは、低所得層に対するセイフティネットとしての機能も期待されており、政府としても、今後も増え続ける人口に対して、従来の社会保障制度頼みでは、財政の持続可能性の点で大きな懸念がある中、MIのような自助努力の制度の健全な普及に、大きく期待しています。

MIについては、従来の保険事業の延長としてのBottom of Pyramid Businessと、コミュニティや会員組織のサービスメニューとしての二つの大きな流れがあります。前者は主に都市部を中心に活動する保険会社、後者は職域や地方を中心に担い手となっているInsurance Cooperatives(保険共済)やMutual Benefit Associations(互助会)などです。

アジア開発銀行のプロジェクトは、様々な利害関係者の意見を吸い上げるプラットフォーム作りの支援を行った上で、政府の戦略や規制の枠組みの作成、消費者啓蒙や契約者保護の仕組み作りを進めてきました。保険庁の一元的な行政監督の下、MIは今後、様々なプレーヤーがそれぞれの強みを活かしつつ、健全な競争を伴って発展することが期待されています。また、保険庁から、MIに特化した信頼性のある統計データが把握可能になったことは、今後の発展の推移をモニタリングする上で、画期的な成果に挙げられます。

MIは、低所得層向けの小口契約という性格上、保険料については、最低賃金をベンチマークに上限が設定され、契約書類も出来る限り簡素化、保険金についても、必要書類の提出から10営業日以内の支払いが義務付けられるなど、低所得層のニーズを反映して設計されています。

今後は、事業採算上、少額の保険料対比で、相対的に事業者の大きな負担となる事業費をどう圧縮できるかが大きな課題であり、いわゆるIndexやParametricタイプなど、いわゆるデリバティブに近い新商品の開発や、e-mobileやe-paymentなどの新たな事業インフラの活用などに期待が寄せられており、アジア開発銀行でも、これらの分野で政府に対する支援を継続していく予定です。


また、昨年の大型台風Yolandaからの災害復興を契機に、被災地域での迅速な対応や保険金の支払いは被災者の生活再建に大きな成果を上げ、MIの有効性が大きな注目を集めており、今後の更なる普及に期待が高まっています。

2013年時点で、フィリピンの保険普及率は、保険料/GDP比 2%程度ですが、総人口のカバーでは20%を突破しています。フィリピンの成功例は、有効な低所得層対策を模索するアジア各国の注目を集めており、各種の国際会議においても度々取り上げられています。アジア開発銀行としては、域内協力、あるいは有用なKnowledgeの提供という面からも、フィリピン政府に協力して、MIのBest Practice作りのお手伝いをして行きたいと考えています。


ニュース

ブータンの現地事務所がオープン

2月、ADBのブータン駐在員事務所がオープンしました。ブータン(写真)は1982年にADBに加盟。以降、ADBの対ブータン支援は地方電化や電力セクター改革、道路、都市インフラなど、総額で融資が約3億4000万ドル、グラントが約1億4000万ドルになります。現在ADBが支援している同国のダガチュ水力発電所の建設により、インドへの売電が実現すれば、同国にとって重要な収入源となります。 

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→関連動画(英文、2分30秒)はこちら、フォト・エッセーはこちら

  

アジア開発銀行研究所新所長に吉野直行氏を任命

の新所長に現慶應義塾大学経済学部教授の吉野直行氏が任命されました。着任は4月1日の予定です。吉野氏は東北大学経済学部卒業、ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士で、スウェーデン・ヨーテボリ大学及び独・マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクから名誉博士を贈られています。

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ミャンマーの生活向上に無償援助400万ドル

ADBはミャンマー(写真)に対し、「貧困削減日本基金」(JFPRを財源とする無償援助400万ドルの供与を決定しました。ミャンマーの都市部では、1980年代後半から1990年にかけて開発された再定住地区に多くの住民が暮らしていますが、これら地区では、きれいな水にアクセスできないため市販の水を購入するなど、住民負担が高まっているほか、人口密度が高いエリアでは、下水処理能力が追いつかず、衛生上の問題を引き起こす恐れが高まっています。今回はヤンゴンおよびマンダレーを対象に、簡易トイレや下水管整備を目指します。

→リリースの和文抄訳はこちら、プロジェクト詳細はこちら

 

アジア債券モニター発表

ADBは、『アジア債券モニター』(Asia Bond Monitor)を発表しました。それによると、昨年12月末時点での東アジア新興国9カ国・地域の政府・企業が発行した現地通貨建て(LCY)債券市場は、足元の市場の不安定をうまく乗り切っているものの、市場にとってのリスクはじりじりと増しており、各国は備える必要があります。また今号では、マレーシアなどの牽引により拡大が続くイスラム債(スクーク)市場について分析し、インフラ・プロジェクトの資金源として大きな潜在性がある一方、より多くの発行体がスクークを活用できるよう、各国は適切な規制枠組みを設置すべきとしています。

→リリースの和訳はこちら、モニター本体はこちら
→ADBエコノミストによる英文インタビュー動画はこちら、インフォグラフィックはこちら

 

イベント報告

 2月21日(東京)
Facebookからのスピンオフ講演会を実施

Facebookで活動日誌を好評連載中の村木祐介インフラ専門官が来日、スピオフ講演会『途上国開発に宇宙技術を活用しよう』を実施しました。村木専門官からは担当案件だけでなく、リモートセンシングや衛星技術が途上国の防災対策にどう役立つのかにつき、丁寧な説明がありました(写真)。ご来場の皆様、ありがとうございました。

→当日の使用資料(ppt)はこちら
→ADBのFacebookサイト(和文)はこちら

 

 

イベント予告

 4月15日(東京)
アジア経済見通しセミナーを今年も開催します

駐日代表事務所では4月15日(火)、アシスタント・チーフエコノミストを本部から迎え、恒例のADB『アジア経済見通し』(Asian Development Outlook)セミナーを開催し、ADBの開発途上加盟国の経済見通しについてADBの見方をご披露します。また、「インクルーシブな成長のための財政政策」をテーマに、持続的な経済発展を実現するために財政に何ができるのかを論じます。参加ご希望の方は、登録サイトにアクセスの上、4月11日(金)までにお申込み下さい(http://www.adb.org/forms/ADO-Seminar-2014)。
→アジア経済見通しの過去の号(英語)はこちら



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