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Volume 10, Number 5 | September 2013 Published bi-monthly
 

スポットライト

アジア諸国の繁栄に製造業は不可欠

ADBは8月、キー・インディケーターズ(主要指標集)2013年版」を発表しました。同報告書は域内各国の経済・社会データを幅広く網羅した、ADBの代表的刊行物の一つです。第1部では、アジア各国が繁栄を目指し、中所得国の罠を回避する上で、工業化が成長の根幹をなすとの見方を示し、農業の近代化やサービス業の生産性向上にとっても製造業へのテコ入れは不可避と強調しています(「Asia’s Economic Transformation: Where to, How, and How Fast?」)。ADBの李昌鏞(イ・チャンヨン)チーフ・エコノミストは、「製造業が国全体の産出量と雇用に占める割合が最低18%以上の状態が一定期間続かなければ、高所得国への移行は難しい」とした上で、サービス業が一種のブームとなる中、経済繁栄を遂げようとするなら、製造業を軽視すべきでないと述べています。

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→英文フルリポート(PDF、計350頁)はこちら、要旨(計23頁)はこちら

→チーフエコノミストのインタビュー動画(英文、2分43秒)はこちら、インフォグラフィックはこちら


ニュース

スリランカ・コロンボ港拡張工事第1期が完成

ADBが支援していたスリランカ・コロンボ港は拡張工事(第1期)が終了、8月より正式に操業を開始しました。今回の工事では、浚渫を行ったほか、防波堤とターミナル1基を新規開設し、最新世代である18,000TEU級のコンテナ船が受入れ可能となりました。物流施設も整備されたことで、貨物輸送にかかる所要時間とコストの削減効果が見込まれ、同港が南アジアの主要海運拠点としての役割を果たすことが期待されます。

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ベトナム・メコンデルタ地域の国道新設を支援

ADBはベトナムに対し、ホーチミン市とメコンデルタ地域および南部沿岸地域とを結ぶ幹線道路整備の支援として、4億1,000万ドルの融資を決定しました。プロジェクトでは、南部のアンザン、カントー、ドンタップ省を経て、メコンデルタの西側に至る国道(総長26㎞、斜張橋2ヶ所を含む)を建設します。国道・橋梁とも2017年末までに開通予定で、完成すれば、所要時間が大幅に短縮されます。

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→『アジア経済見通し』ベトナムの項はこちら

 

カリマンタン西部に再生可能エネルギー、ADB初のBIMP-EAGA融資案件

ADBはインドネシアに対し、マレーシア・サラワク州に隣接するインドネシア・西カリマンタン州の送電線整備のため、4,950万ドルの融資を決定しました。プロジェクトでは、総長145㎞の送電線と支線、変電設備を整備し、2015年1月からの稼動を目指します。完成すれば、マレーシア・サラワク州の水力発電所で発電される電力を、西カリマンタン州の約8,000世帯へ送電することが可能となります。同地域では現在、インドネシア国有電力会社が石油火力発電所からの電力を供給していますが、熱源が再生可能エネルギーに切り替わることで供給が安定化し、コストが下がるほか、二酸化炭素排出量の削減効果が見込まれます。

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→『アジア経済見通し』インドネシアの項はこちら

 

キルギスの次期国別支援戦略を決定

ADBは、キルギス共和国に対する今後5年間(2013-2017)の支援戦略の柱となる国別支援戦略(CPS)について、このほど同国政府と合意しました。CPSは、途上加盟国に対するADBの支援業務の方針を、各国が策定する開発戦略に沿った形で定めるもので、ADBキルギス駐在員事務所の平岡理恵所長は、「ADBは、キルギス政府に対し、成長の阻害要因の解決や投資環境の改善、経済機会の格差是正を通じた、全ての人々に恩恵が行き渡るための取り組みを、重点的に支援していきます」としています。

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→『アジア経済見通し』キルギスの項はこちら


イベント

7月16日(東京)、7月18日(大阪)

ミャンマー・セミナーを開催

JROでは、民主化・市場経済化の進展を受け、日本の経済界からも高い関心が寄せられているミャンマーに関するセミナーを、東京および大阪にて、それぞれ経団連、関西経済連合会・大阪商工会議所との共催で実施しました。セミナーでは、同国の経済・投資環境の現状と展望およびADBの取組みについて東南アジア局の岩崎秀明・主席インフラ専門官が、次いで同国の経済改革進展に伴う南アジア経済圏と東南アジア経済圏の統合促進への影響について、南アジア局のロナルド・ブティオン主席地域協力専門官が説明を行い、プレゼン後は活発な質疑応答が行われました。


7月29日(大阪)、7月31日(東京)

ビジネス・オポチュニティ・セミナーを開催

JROでは例年、ADBが提供するビジネス機会に対する日本企業の参加促進を目的とするビジネス・オポチュニティセミナーを開催していますが、今年は初の試みとして、国土交通省が進める水・環境ソリューションハブに参加する都市・団体のご協力を得て、都市の水、特に下水セクターにフォーカスした形で実施しました。セミナーでは、コンサルタント雇用や機器・工事の調達に関するADBガイドライン、関連情報の入手方法、留意点などにつき業務管理・財務管理局の宮尾泰助・調達専門官が、アジアにおける水セクターの課題とADBの対応、ADBの関連プロジェクトなどについて、地域協力・持続的開発局のジンミン・ファン都市開発専門官が説明しました。参加者のバックグラウンドが共通していたこともあり、多くの質問が寄せられました。


8月20日(ジャカルタ)

法政大学生がジャカルタ事務所を訪問

夏休みを利用してインドネシアを訪問していた法政大学・後藤ゼミの皆さんが、ジャカルタにあるADB現地事務所を訪れ、リンドボルグ所長より、同国の政治経済情勢や開発における課題、ADBの果たす役割などについて説明を受けました。続く質疑応答では、活発な意見交換が行われました。


10月5~6日(東京)

グローバルフェスタに出展します

 JROでは日比谷公園で開催されるグローバルフェスタに、本年もブース出展予定です。ADBの業務についてスタッフに質問したり、関連資料を入手するチャンスですので、皆様のお越しをお待ちしております。フェスティバル詳細は、主催者サイトをご参照下さい(http://www.gfjapan.com

 

 
ADBとナレッジ

去る7月、横浜で3つの大きな気候変動関係のイベントが開催されました。「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)第5回年次会合」、「持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP)2013」、そして「低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)第2回年次会合」です。ADBのマニラ本部からは、ロハニ副総裁(知識管理・持続的開発担当)が来日し、討議に参加しました。今号では、ADBが重視するナレッジの取り組みについて、地域協力・持続的開発局の杉本留三・環境専門官にご紹介いただきます。

LCS-RNetは、低炭素社会の実現に向けた研究の促進を目的に、世界規模の研究機関ネットワークとして設立され、5回目となる今次会合で初めてアジア開催が実現しました。ISAPは専門家や企業、政府、NGO関係者が集まり、アジア太平洋の持続可能な開発に関する多様な議論を行うフォーラムで、本年のテーマは「グリーン経済―アジア太平洋の視点」でした(写真)。LoCARNetは、アジアにおける低炭素発展の政策策定のための知識共有と能力開発を目的に昨年設立されたもので、昨秋のバンコクでの第1回会合に続き2回目の会合となります。

ロハニ副総裁は、グリーンファイナンス、知識共有、さらにはミャンマーにおける環境問題など、幅広いテーマのセッションに出席し、ADBの知見を共有させていただきましたが、一貫してADBとして掲げたのが「Finance ++」です。Finance ++とは、融資を行うだけでなく、そこにプラスアルファの価値を付加するという考えです。最初のプラスは「パートナーシップによる外部資金の活用」ですが、低炭素社会のためのファイナンスにおいては、様々な外部資金を調達・動員することによって、ADB単体で貸し付けるより、はるかに大きな規模のプロジェクトが可能になります。低炭素社会における緩和の分野では、民間資金との協調や民間の実施機関との協同実施がより重要になるといえるでしょう。

二つ目のプラスはナレッジ(知識)です。ADBでは、プロジェクトを通じて得られた経験や知見が、その国や他の国における新規プロジェクトの創出につながる例が少なくありません。つまり、ナレッジはそれ自体独立したものでなく、プロジェクトと密接に関わり、サポートし、またそこから産まれてくるものなのです。したがってナレッジとプロジェクトは相互補完関係にあるといってよいでしょう。

では、そうした個々のナレッジをネットワーク化することの意義はどこにあるのでしょうか。ADBでは、ナレッジのネットワーキングは、研究成果を単にシェアするだけでなく、新たなプロジェクトの可能性を見いだしたり、資金調達の道が開けたり、人材発掘につながる、業務遂行に直結したプラットフォームととらえています。知見を得てから一定の形になるまで、ADB1機関だけでは時間がかかりますが、ネットワーク化することによって、より短いサイクルで回すことができるという触媒効果を期待しているのです。今後更なる成長が見込まれるアジアにおいて、低炭素社会への移行は待ったなしであり、迅速な対応が求められています。各国や各機関が蓄えたナレッジを持ち寄ることで、業務の効果・効率が更に向上すればと思っています。


ADB出版物
 

ADBの年次報告書(2012年)の和訳版がウェブサイトにアップされました。従来の年報より大幅にハンディになりましたので、業務や研究に役立てください。→ダウンロード(PDF)はこちら

 

今回、先着10名の方に無料でお送りいたします。ご希望の方は、お名前、宛先、ハードコピー・CDのいずれかについて数を明記の上、当事務所・望月までメール(amochizuki@adb.org)にてお申込みください。



JRO連絡先

 
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