こんにちは、イベントスタッフの坂本です。
今でも覚えています。
ある春の日、初めて御影を訪れたとき、
私ははっきりと文化の香りを感じました。
あぁ、この地には真贋を
見分けるヒトがいるだろう、とそんな空気感です。
山の緑が雨に濡れていて、
ただでさえ水の気配が濃いだろう土地が、
ますます水を蓄えている。
自然が豊かな一方で、負けないくらい、
いや共存するかのように、文化人の気配もしたのです。
こんな場所があるんだなぁ、と感じたのが、第一印象です。
そんな場所で、実際にMAMEHICOをやることになったとき、
どんなカップでお飲み物を提供しようか、随分と検討していました。
紛い物はもちろんNG、チープであってもダメだし、
肩に力が入っていてもおかしいし、高級すぎるのも何だか変だ。
そんなとき、群馬県にある骨董屋さんとのご縁もあって、
そうだ江戸時代の染付の猪口(ちょこ)にしよう、
とすんなりと決定しました。
決まるときは、一瞬で決まるものなのです。
骨董は、実際に手に取ってみると、その個性がよく分かります。
ちょっと歪みがあったり、ぽってりしていたり。
色も真っ白ではなく、ふっくらとした柔らかい白
とでも言えば良いのでしょうか。
染付も長閑なものや、迷いのない力強いもの・・・
器一つずつに、当時の陶工の息遣いを感じて、全く飽きません。
骨董屋さんって、何となく敷居が高いから、
カフェでカジュアルに使えたらきっと良いよね。
そして、骨董をもっと身近に、生活の中で使えたら素敵だよね。
なーんて、ときめきつつ、いざ自分たちで、
骨董をカップとして使おうとやってみると、
これだけで一仕事だということがよく分かりました。
1.大きさが揃わない
骨董屋さんが「あぁ、猪口ならいっぱいあるよ」
と言ってくれたものの、当たり前ですけど、大きさがバラバラ。
カフェの営業で使うのならば、カップの大きさは
ある程度揃っていて欲しいのですが、同じかたちはありません。
カップの提供だと量が違いすぎて問題になるので、
お飲み物はポットに一定の量を入れることに。
カップ1杯いくら、と提供することって、
全く同じ大きさのカップが前提条件だったということに気づきました。笑
今では、三軒茶屋店までポット提供に切り替わりましたが、
この御影のポット&猪口が良かったからこそ、なのです。
2.時代が揃わない
御影で使っている、染付の猪口(ちょこ)は、
だいたい江戸中期〜後期に作られたものが多いです。
江戸時代のものを中心に揃えているのは、淡くて、
枯れたような味わいがある藍色で、雰囲気を揃えたかったためです。
明治時代になると、鎖国が解けて、
西洋から純度の高い化学顔料を輸入するようになり、
ぱきっと鮮やかな藍色が生まれました。
鮮やかな藍も良いんですが、雰囲気を揃えるためには、
時代を揃えるのが良さそうです。
でも、”江戸時代”って簡単に言いますけど、数百年前のものです。
そして、”大きさ”という条件もある。
群馬の骨董屋さんの蒐集したものだけでは足りなくって、
骨董市に行ったり、競りに付き合ってもらったりと、
足を使って、どうにか数を揃えたのでした。運が良かったです。笑
3.在庫がない
猪口が割れたり、欠けたりしてしまっても、どこかに発注は出来ません。
自分たちで骨董屋さん巡りをするしかないのです。
この世に存在している江戸時代の骨董なんて、
これから先、増えるはずがありません。
どう考えたって、減る一方でしょう。
欠けてしまった器がいくつかありますが、いつの日か金継ぎしなきゃなぁ、
と保管してあることを、ここにこっそりと告白します。笑
江戸の猪口を揃えるということは、自分の目と足で探すしかないもので、
世の中のお店がわざわざ骨董を使わない理由も、よく分かりました。笑
でも、数百年前に誰かの手で作られたものが、時の洗礼をうけて、
令和のいまも使われているということが、とても素敵だなと感じるのです。
素敵だな、のために、手間を惜しまずにやってみる!そのひとつが、MAMEHICO御影の猪口でもあるのでした。
御影の皆さんが、なんか良いなぁ〜とお茶していてくれたら嬉しいです。