【ガザ北部の戦闘でナハル旅団の兵士4人が死亡】(Y,P)
10日国防軍は、ガザ北部ザイトゥンでの作戦においてナハル旅団の近くに設置された爆弾が爆発、19歳の兵士たち4人が死亡、司令官を含む複数が重傷を負った。
死亡したうちの2人は、小学校からの旧友で同じ部隊で兵役を行っていた。同旅団は近くの学校で大量の武器が隠されているとの機密情報を得て、制圧・押収の作戦に向かう途中だった。その後教室の中などから、ライフル銃やマシンガンなどの武器や軍事装備が発見されている。10月からの戦争でここザイトゥンで作戦が行われるのは3度目で、国防軍による制圧→撤退→ハマスが戻り軍事拠点化というパターンが、ガザ地区内の複数の場所で見られており、翌11日にも同部隊の20歳の兵士1人の死亡が発表されている。(5/10-11)
【ハマスにより続く心理的テロ、50代男性のビデオを公開】(Y,P,H)
11日にハマスは、10月7日にキブツ・ニリームから拉致され人質となっている1人、ナダブ・ポペルウェルドさん(51)のビデオを公開した。負傷により片目が腫れており短い文章を読み上げている様子だが、動画の撮影時期については分かっていない。母親のハナ・ペリーさんも拉致されていたが、11月の休戦中の人質解放により無事帰宅しており、彼の兄弟の1人ロイさんは10月7日の虐殺の犠牲者となっている。被害者家族の会は「人質からの生存の徴は、政府に対する助けの叫び。全員解放のため、交渉に全力を注ぐべき」との声明を出している。ポペルウェルドさんの家族はメディアに対してビデオの公開を控えるよう求めているため、動画は掲載・放送されなかった。(5/11)
【ジャバリアでも再び軍事作戦が】(Y,P,H)
国防軍は11日、ガザ地区北部ジャバリアに対して避難勧告を行い空爆を実施、その後に地上での軍事作戦を実行した。同地区内においてハマスが再び軍事力を回復しているという機密情報があるため、この軍事作戦が開始されることに。パレスチナメディアは、ジャバリア内で国防軍・ハマス間の激しい銃撃戦が行われていると報じている。これにより現時点でガザ地区内では南のラファ、北部のザイトゥン・ジャバリアと3箇所で地上作戦を行っていることになり、北部の2箇所についてはこれで3度目の地上作戦。軍高官からは「ハマスに代わる支配体制が出来なければ、同じ場所に何度も戻ることになる」と、長期的戦略のなさを危惧する声も。(5/12)
【ガザへの支援物資の一部が西岸地区内で、破壊・焼き討ちに】(Y,P,H)
西岸地区ヘブロンとイスラエル南部の間にある検問所近くで13日、宗教的な入植者たちがガザへの支援物資を運んだ輸送団のトラック9台に、破壊・強奪という妨害行為を行った。またその中の1台には火が付けられるなどの事例も起こり、3人が逮捕されている。ホワイトハウスはイスラエル政府に対して事実確認を行い、「人道支援の輸送団に対しての妨害は起こるべきではなく、イスラエルが関係者に対して相応しい罰則を科すよう望む」とイスラエルに要請した。この様子はSNSなどで世界中に発信されることとなり、「(真偽は不明だが)軍や警察が極右活動家たちに輸送団に関する情報を教えた」との情報も海外メディアでは報道され、アメリカだけでなく英独でも外務相が非難声明を発表している。(5/13)
【人道支援のための埠頭建設が完了、近日中にも船舶到着】(Y,P,H)
国防軍ハガリ報道官は16日に会見を行い、4月初めから建設が行われていた人道支援拡大のための臨時埠頭が完成したと発表した。すでに物資を積んだ船舶2隻がキプロスでセキュリティーチェックを終えガザに向けて出航しており、国防軍も船舶・物資の受け入れ態勢を進めている。現在は1日に約350台の支援物資を積んだトラックが各検問所からガザに入っており、これによって人道支援のさらなる拡大が予想される。同報道官は「攻撃と並行し、政府からの指示を受け私たちは人道支援の拡大のため尽力している。これは戦闘継続を可能にするもの」とコメント。アメリカはイスラエルの協力を評価するも、閉鎖されているラファに代わる新たな検問所を開設するなど、さらなる努力が必要と働き掛けている。(5/16) |
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【首相・大統領が戦没者記念日の式典で演説】(Y,P,H)
12日夜・13日朝と戦没者記念日の国家式典が嘆きの壁・ヘルツェルの丘で行われ、大統領と首相がそれぞれ基調演説を行った。ヘルツォグ大統領は10月7日以降の犠牲者への喪を表しシャツの襟を破った姿(ユダヤの喪の服す際の習慣)で演説、「捕らわれ人を救う以上の義務はないということを、私たちは決して忘れない。彼ら全員が我が家に戻るまで、私たちが休み沈黙することはない」と、拉致被害者とその家族に向かって語り掛けた。翌13日朝の式典ではネタニヤフ首相が登壇し、「この戦争の軸は―私たちイスラエルか、モンスター・ハマスのどちらか、自由・安全・繁栄か殲滅・虐殺・レイプのどちらか、の二者択一だ」と話し、ハマスとの戦争続行がイスラエルにとっては必要不可欠だと語った。また式典内では追悼をモチーフにした聖書の聖句や、追悼の伝統的な祈りが朗読された。(5/13)
【ガラント防衛相がネタニヤフ首相を厳しく批判】(Y,P,H)
ガラント防衛相は15日にビデオ演説を行い、戦後のプランについて明言しないネタニヤフ首相を批判した。「イスラエルは、ガザでの軍事・行政的支配という危険な流れにある。これは戦略・安全保障・軍事的観点から危険な行為」と語り、首相に対し①ガザでの行政に関わることはなく、②(西岸地区のような)軍による統治も行わず、③ハマスに代わる政権が樹立されることを明言するよう呼び掛けた。そして「政治家としての代償が生じたとしても、国益を考えての決定が必要」と、ネタニヤフ氏の姿勢をを批判した。これを受けてネタニヤフ氏もビデオメッセージを発表。「(今後ガザ統治を担うと考えられる)パレスチナ自治区はテロに対し支援・出資している。ハマスがガザに居る限り、何者かがガザに入り行政統治するようなことはない。(イスラム教国をもじり)ハマスタン(=ハマスによる統治)をファタハスタンに取り換えるつもりはない」と話し、ガラント氏を批判した。(5/15)
【テル・アビブ大でナクバを主張するデモが発生】(Y,P,H)
アラブ政党のテル・アビブ大学内の支部が中心となり15日、構内でイスラエル建国により起こったパレスチナ人の「ナクバの日」を記念するデモを行い、ラファ作戦中止とガザ地区内における虐殺停止の声を上げた。デモ開催は許可されたがパレスチナ国旗の使用は認められなかったため、参加者はスイカのプラカードで代用。数十人が集まっての集会・演説が行われた。その近くではナクバのデモ開催に反対するデモも並行して行われ、そちらにも数十人が集結。そちらのデモ主催者は「イスラエル国家の存在を否定するデモが、国内の大学構内で行われてはならない。ここはコロンビア大学ではないからだ」と、メディアに話した。幸いにも、デモ参加者の間での衝突などは起こらなかった。(5/15) |
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【国連、パレスチナ自治政府に加盟国家に準ずる権利を認める】(Y,P,H)
国連総会は10日、パレスチナ自治区に対し国連加盟国と同様の権利を認める決議案について採決し、賛成143・反対9・棄権25の賛成多数で可決された。主要国ではアメリカが反対、英独・カナダなどが棄権、日仏などは賛成票を入れた。正式な加盟国としての承認ではないが、これにより自治政府は加盟国と同列に並んで座ることや議論における返答権、パレスチナ問題以外に関する国連内の議論への出席、各種委員会への選出など、加盟国と同等の様々な権利が認められることとなる。イスラエルのエルダン国連大使は「テロ国家ハマス・シンワル大統領」と書かれた顔写真を持って登壇、「今日のヒトラーによるテロ国家承認を進めている」と痛烈に各国を批判。演説の最後に「恥を知れ」との言葉を残した。(5/10)
【エジプト、国際司法裁判所で南アによる提訴を支持】(Y,P,H)
検問所をはじめラファ郊外で開始された国防軍の軍事作戦を受けエジプトは12日、南アフリカがイスラエルに対し「ジェノサイド」として起こしているという、国際司法裁判所での訴訟について支持する意向を示した。限定的ではあるもののラファ作戦が開始されてから両国間の関係性は悪化しており、エジプトは国連安保理に対して即時停戦のため働くよう求めていた。仲介役の立場に立つエジプトが南ア陣営に加わるとの知らせに驚きが広がっているが、①ラファ作戦を中止させるための外交的圧力、②国際的な舞台でイスラエルと対立することによるガザ側へのアピールではないか、とイスラエルと米情報筋は推測している。(5/12)
【米政府高官、ガザでの絶対的勝利に懐疑的】(Y,P,H)
13日に行われたNATOユースサミットで米のキャンベル国務副長官が、ガザ戦争におけるイスラエルの完全勝利に対して懐疑的なコメントを行った。「イスラエルの指導者たちは一貫して、戦場における完全勝利について語っている。しかしそれは起こりそうになく、可能とは思えない」と語り、現状はアフガン・イラク戦争でアメリカが直面した状況と同じであるとし、軍事的ではなく政治的解決が必要だと話した。ラファ作戦に関してイスラエルとの対立が深まる中、サリバン大統領補佐官も「ハマスを完全に倒すのに、軍事的圧力だけでは不十分」と話しており、米政府高官からイスラエルの戦略に対して疑問の声が相次いでいる。(5/14)
【76度目の独立記念日、国外からも祝賀の声】(Y,P,H)
76度目の独立記念日を迎えたイスラエルに対し14日、国外からも祝賀の言葉が寄せられた。バイデン大統領はヘルツォグ大統領に対し親書を送り、「イスラエルを国家として初めて承認した国として、私たちの絆は共通の民主主義的価値観や国益、文化的類似性により実証されている。イスラエルの安全保障に対する米国のコミットメントは、鋼鉄のように強いものだ」と述べた。その他にもインドやイタリアの大統領、アゼルバイジャンやルーマニア、パラグアイやラトビアなどの外務相からもXや書簡を通じての祝辞が届いている。(5/14) |
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【カンヌ映画祭で、「Bring Them Home」】(Y,P,H)
カンヌ国際映画祭で15日に行われた、「マッドマックス:フュリオサ」のワールドプレミア上映のレッドカーペットに、10月7日のノヴァ音楽祭での虐殺を生き延びたイスラエル人女性、ルラ・ブラジュマン・カダルが登場。人質解放を願う黄色地に、未だにガザで人質となっている被害者の写真がプリントされたドレスを着、「Bring Them Home」と書かれた黒いタスキを掛けて、レッドカーペットの階段を登った。カダルさんは10月7日の生存者としてEU議会での演説や欧州の外交官たちなどと面会を行い、虐殺・拉致被害者の声を世界に対して届ける活動をしており、その一環としての映画祭への参加。「今年はイスラエル映画の存在感がないこともあり、人質解放というメッセージと共に参加出来たことは大変重要だった」とメディアに話した。(5/16) |
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[情報源略号表]
文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
P=エルサレム・ポスト https://www.jpost.com/(英語)
H=ハアレツ http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)
[転載・引用・再配布について]
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