ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【米イラン間の合意が秒読みも、ヒズボラの無人攻撃機が北部に飛来】(Y,P,H)
アメリカとイランによる休戦延長の覚書署名が、週明けの14日にも行われるのではないかとの報道が広がるなか、12~13日の週末にもヒズボラによる無人攻撃機攻撃が続いた。北部国境地帯では計6回サイレンが作動し、そのうち2機はイスラエル領内に着弾したが、負傷者は確認されていない。こうした休戦違反を受け、国防軍は南レバノンでの地上作戦を継続し、「安全ベルト」の拡大を進めている。しかしイランとの最終調整を進める米への配慮から、政府は国防軍に対し大規模作戦を控えるよう求めていると報じられている。一方で、米イラン間の覚書にレバノン問題がどの程度盛り込まれているのかについては、相反する報道が続いている。報道によると覚書の第1条には「レバノンを含む全ての戦線における即時停戦」が盛り込まれており、ヒズボラ問題も交渉の対象となっていることは確実視されている。しかし、どこまで具体的な合意がなされているのかについての詳細は不明。イラン側は、レバノンでの停戦がイスラエル軍による「安全ベルト」からの撤退を意味していると主張しているが、カッツ防衛相は「10月7日の教訓として、イスラム聖戦主義者から国境を守り続ける」と述べ、安全ベルトからの撤退を否定。また軍関係者からも、2024年末の休戦協定で定められたヒズボラの南レバノン撤退を、掃討作戦を通じて履行させる方針であることが分かっている。
このようにイスラエル・イラン間の主張に大きな隔たりがあるため、ヒズボラに関する米イラン間の合意がどのような形になるかについて、イスラエルでは注目が集まるとともに不安の声も広がっている。
(6/12-13)
 
【米イラン合意の裏で、イスラエルは『安全ベルト』維持を継続】(Y,P,H)
17日深夜、仏ベルサイユ宮殿で米イラン間の覚書調印式が行われたが、合意成立後初日となる18日もレバノン戦線では緊張した状況が続いた。18日午前6時ごろには、国境から約9キロ離れた地点に駐屯していた国防軍の戦車部隊にヒズボラの無人攻撃機が着弾し、兵士4人が負傷。さらに負傷者の救助に向かった車両に対しても別の無人攻撃機が攻撃を行い、救助に当たっていた兵士1人も負傷した。このように米イラン合意が公表された後も、ヒズボラによるロケット弾や無人攻撃機を用いた攻撃は1日を通じて続いた。さらに軍は、前日にリタニ川周辺をパトロールしていた部隊の近くでヒズボラが設置したとされる爆発物が作動し、29歳の予備役兵が死亡していたことも公表している。
覚書にはレバノンの領土保全に関しての言及も含まれているとされ、南レバノンからの国防軍撤退についてアメリカが働き掛けを行っているとの報道もある。しかしイスラエルは24年末の停戦協定が完全に履行され、南レバノンでのヒズボラ武装解除とイスラエル北部の安全が確保されるまでは、現在の「安全ベルト」を維持する方針を強調している。ネタニヤフ首相もこの日、同ベルト維持を改めて表明。国防軍も、駐留地点と安全ベルトを示した地図を公開した。この安全ベルトには今月初めに制圧した要衝ボーフォート城やその周辺の村々も含まれている。これはヒズボラを国境から遠ざけ、イスラエル北部が(発射が簡単な)短距離ロケット弾の射程内に入ることを防ぐための緩衝地帯としての意味を持つ。また同時に、ヒズボラの拠点ナバティエを監視する戦略的役割も担っている。
軍関係者によると、イスラエルは少なくとも米・中間選挙のある11月まではこの安全ベルトを維持することを目指しており、米の政情次第ではイランに対する軍事作戦を再開できるとの見方も軍内部には存在しているという。
(6/18)

◯ 内政

【合意を受けネタニヤフ氏が会見、戦争目的に関しては矛盾する発言も】(Y,P,H)
15日夜、ネタニヤフ首相は3カ月以上ぶりとなる質疑応答付きの記者会見を開き、昨年と今年の対イラン戦争がイスラエルにもたらした成果を強調した。
冒頭でネタニヤフ氏は、「私がイスラエルの首相である限り、(米イラン間の)合意の有無にかかわらず、イランが核兵器を保有することはない」と断言。その上で、イランの核開発に関与する科学者や指導層、核関連施設、弾道ミサイル能力の大部分を昨年と今年の戦争を通じて排除することに成功したと主張した。また、「これらの戦争がなければイランは核保有国となっていた。イスラエル国民は大量死の危機に瀕していた」と述べ、イスラエル人の大量殺戮という危険を「何年も遠ざけることができた」と成果を強調した。

しかしある現地メディアは、ネタニヤフ氏が昨年と今年の戦争を一括りに語った点に注目している。会見では今回の戦争による具体的な成果よりも、昨年の戦争や2023年10月以降の2年半にわたる戦果全体を強調する場面が目立ったためだ。また質疑応答では、今回の戦争目的について問われると、「私が戦争目的をどう定義したか覚えているだろう。核による生存上の危険を『遠ざける』ことであり、それは達成された」と回答した。しかし2月末の開戦時に氏は、生存上の危険を『遠ざける』のではなく『排除する』と述べていた。この表現の変化についてメディアは、戦争目的のナラティブ修正が行われている可能性があると分析。当初は「危険の排除」を掲げていたにもかかわらず、会見では「危険を遠ざけたこと」が目的の達成として語られており、戦争の目的を書き換えることで今回の戦争を成功と位置付けようとしているのではないかと指摘している。
一方、アメリカとイランの間で合意された覚書については、「内容の全てが明らかになっているわけではない」としながらも、「全ての合意の背後には確実な軍事的圧力が必要だ」と発言。アメリカとイスラエルが共同で軍事行動を行ったことで十分な圧力が形成されたと評価し、国内で高まる合意への批判的な声とは距離を置き、合意そのものを批判する発言は行わなかった。
(6/15)

◯ 国際情勢

【ダヒヤ空爆で緊張高まるも米イラン合意成立 イスラエルに危機感】(Y,P,H)
14日朝、ヒズボラが少なくとも3機の無人攻撃機をイスラエル領内に向けて発射した。国防軍は当初「全て軍用地に着弾した」としていたが、その後、このうち1機が北部国境部の住宅近くに着弾していたことが判明した。これを受けてイスラエルは先週と同様、「ヒズボラの北部への攻撃→ダヒヤ地区への空爆」という抑止のための方程式を適用。数時間後にはヒズボラ本拠地であるベイルート・ダヒヤ地区の司令部に対し、精密爆弾による空爆を実施した。先週はこのダヒヤ空爆をきっかけにイスラエルとイランの直接交戦が約1日続いたことから、今回も国防軍が同様の攻撃に踏み切るかどうかが注目されていた。
国防関係者らは、イランからのミサイル攻撃を懸念してダヒヤ空爆を見送れば、ヒズボラやイランに対する抑止力が損なわれることになるとして、今回の攻撃は方程式を実際に維持するための象徴的かつ重要な作戦だったと評価している。しかしこの空爆を受け、イラン側は再びミサイル攻撃による報復を示唆したため、両国間の直接交戦が再燃するのではないかとの懸念が広がった。イラン高官らは相次いで「シオニズム政権に罰を与える」と発言し、弾道ミサイルによる攻撃を示唆。またアメリカに対しても、イスラエルがヒズボラへの攻撃を継続する状況では「合意への前進はあり得ない」と圧力をかけた。
これを受けて、何としても戦争を終結させたいトランプ大統領は公の場でイスラエルを批判。「お前は何てことをしたんだ」とFワードを交えてネタニヤフ首相を叱責したと明かし、死者が出ていない攻撃への報復として実施されたダヒヤ空爆を厳しく非難した。さらに取材時には「ネタニヤフには分別が全くない。本人にもそう言ってやった」といった強い表現が。イスラエルメディアはこれを、近年の米大統領によるイスラエル批判としては最も厳しいものだと報じている。
またこの一連の発言は、テロ組織と直接対峙するイスラエルとアメリカ間のの温度差や、イランの脅威に対する戦略認識の違いを改めて浮き彫りにしたとの分析も多く見られた。
こうした米政府による公式なイスラエル批判や攻撃自制要求を受け、イランは最終的にイスラエルへの報復攻撃を見送った。そして14日深夜、アメリカとイランは休戦延長を含む覚書への合意を発表した。覚書には60日間の休戦延長のほか、ホルムズ海峡の封鎖解除、レバノンを含む全戦線での交戦停止、核問題に関する交渉継続、さらにイラン関連資産の凍結解除などが盛り込まれている。交渉の当事者ではなかったイスラエル政府はこれに対して、公式なコメントを出していない。しかし国防関係者や専門家の間では、これまで比較的自由に実施されてきた対ヒズボラ軍事作戦が、覚書に盛り込まれた「レバノンを含む全戦線での停戦」によって制約を受け、結果としてヒズボラの再軍備化を許してしまうのではないかとの懸念が広がっている。
(6/14-15)

 

【ソマリランド大統領が初の公式訪問 イスラエルとの幅広い協力強化を確認】(Y,P,H)
国際的には承認されていないものの、事実上の独立国家として機能し、国連非加盟地域としては最大の実効支配地域を持つソマリランドのアブドゥラヒ大統領が、14日からイスラエルを訪問している。アブドゥラヒ氏は昨年にも極秘裏にイスラエルを訪れていたが、公式訪問は今回が初めて。滞在中にはヘルツォグ大統領やネタニヤフ首相、サアル外相らと会談し、海上安全保障や経済分野を中心とした協力関係の強化を今後も進めていくことを確認した。アブドゥラヒ氏は、国連加盟国として初めてソマリランドを承認したイスラエルに対して謝意を表明。
会談の前後にはヘルツェルの丘やホロコースト記念館ヤッド・バシェムも訪問している。
また協力の一環として16日には、国営水道会社の施設も視察した。現地ではイスラエルが持つ海水淡水化技術や農業用水の再利用技術などについて説明を受けたという。水資源の確保が重要課題となっているソマリランドでは、こうした技術への期待が高く、すでにイスラエルの支援団体を通じて技術者への研修や技術支援も行われている。さらに17日には中央部の病院を訪れ、イスラエルの支援によって心臓疾患の治療を受けているソマリランドの子供たち9人と交流した。
イスラエルの人道支援団体「Save a Child’s Heart」と外務省の協力により、生後3カ月から18歳までのソマリランドの子供たちが治療を受けており、アブドゥラヒ氏は患者や家族、医療スタッフらと言葉を交わした。
イスラム教国であるがソマリランドとイスラエルは、この半年ほどで急速に関係を深めており、今後さらなる協力の進展が期待されている。
(6/14-17)
 
【トランプ氏「シリアがヒズボラに対処すべきでは」と異例の提案】(Y,P,H)
G7開催期間中に行われたトランプ米大統領とカタールのタミム首長との会談で、トランプ氏が「隣国シリアがヒズボラに対処するのが良いのではないか」と発言し、イスラエルでは驚きをもって受け止められている。
発言はイランとの合意や核問題に関する議論の中で飛び出したもの。トランプ氏は「私が介入しなければ、イスラエルはとうの昔に滅ぼされ存在していなかっただろう」と述べたうえで、イスラエルの対ヒズボラ戦争について「時間が掛かり過ぎており、犠牲者も増え過ぎている」と批判。「イスラエルには、ヒズボラをシリアに任せてはどうかと提案した。彼らの方がより良い仕事をするように思う」と語り、イスラエルを批判しつつシャラア暫定大統領率いるシリア新政権がヒズボラ問題への対処を担う可能性に言及した。
この発言に対し、イスラエルの国防関係者は「まるで仮想現実の話だ」と否定的な反応を示している。関係者によれば、シリア国内からヒズボラ勢力はすでにほぼ排除されており、シリア新政権軍にはレバノン国内でヒズボラ掃討作戦を行うだけの軍事力もないという。またシリア・レバノン両国はヒズボラの武装解除自体には賛同しているものの、シリア高官は隣国問題への介入を否定。レバノン側もシリアによる軍事介入はありえないとの見方を示しており、トランプ氏の提案が実現する可能性は極めて低いとみられている。
(6/15)
 
【バンス米副大統領、イスラエル政府内のトランプ批判を厳しく牽制】(Y,P,H)
イランとの合意交渉で中心的な役割を担ったとされるバンス米副大統領が記者会見を行い、ネタニヤフ政権内で高まっているアメリカ、そしてトランプ大統領への批判に対して厳しい口調で反論した。
バンス氏はまず、現在イスラエルに共感を示している世界の指導者はトランプ大統領のみと、イスラエルの国際的孤立に言及。その上で、「もし私がイスラエルの政権に居たならば、残された唯一の強力な同盟国を攻撃するようなことはしない」と発言し、トランプ政権が締結したイランとの合意を巡る政府内の批判を牽制した。さらに、「あなたたちの国を守った防衛兵器の3分の2はアメリカで製造され、アメリカ国民の税金によって賄われたもの」と述べ、支援国であるアメリカを閣僚が批判する姿勢に対して強い不快感を示した。
今週にはトランプ氏自身もイスラエルを批判する発言を繰り返しており、イスラエルメディアは「関係が悪化していたクリントン、オバマ、バイデン時代でさえ、大統領と副大統領がそろってこのような口調でイスラエルを批判したことはなかった」と指摘。イスラエル・アメリカ関係が、短期間でいかに険悪な状況に陥っているかについて危機感をもって報じている。イスラエル政府高官の中からも、イランとの合意に対する懸念は抱きつつも、「なぜこのような状態に至ってしまったのか、自問する必要がある」との、対米関係の行方を懸念する見方も出ている。
(6/18)

◯ 文化

【イスラエルNPOが運営する障がい者雇用カフェ、東京でオープン】(Y)
精神疾患や障害を抱える人々の社会参画を支援するイスラエルのNPO「シェクーロー・トブ・グループ」が運営するカフェが東京でオープンしたと、イスラエル大手紙が特集した。このカフェは、同NPOと障がい者の雇用支援に取り組む日本企業との協力によって実現したもの。イスラエルで培われたノウハウを基にスタッフへの研修や訓練が行われ、無事オープンにこぎ着けたという。シェクーロー・トブは、コーヒーチェーン「カフェ・トブ『良いコーヒー』」のほか、書店やリサイクルショップなども運営しており、イスラエル国内で数千人の障がい者に雇用や社会参画、経済的自立の機会を提供している。
オープンに際しては在日イスラエル大使も店舗を訪問し、スタッフと共にコーヒーなどのドリンクを提供したほか、イスラエル国内で進められている障がい者の社会参画について話すなど、温かい交流の場となったという。
取材した記者は、「サイバー技術やハイテクだけでなく、思いやりもイスラエルは輸出できているようだ」との言葉で記事を締めくくっている。
(6/15)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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