【グシュ・エツィオン入植地区で連続テロが発生】(Y,P,H)
30日深夜、ベツレヘムの南にある入植地区グシュ・エツィヨンのガソリンスタンドで、爆発物を載せた乗用車が炎上し数分後に爆発が起こった。その15分後には数キロほどの場所にある入植地の入口に、同じく爆発物を積んだ乗用車が突っ込み入植地内に侵入して爆破するという、連続テロに。
乗用車に乗っていたテロリスト2人は射殺され、テロを阻止しようとした計3人が軽傷を負った。2件とも爆発が起こったのが、テロだと判明しテロリストが射殺された後だったため、大規模な爆発は起こったがそれによる怪我人は居なかったため、メディアでは「テロ未遂」と盛んに報じられている。
テロリストが2人ともハマス色の強いヘブロンの住民であることから、翌日にハマスはテロを称える声明文を発表。それに対しイスラエル軍は同町にあった爆発装置の製造施設を爆破し、テロに関与した疑いで6人を逮捕している。今年に入って西岸地区を中心に200以上のテロ事件が未然に阻止され、今回のような未遂事件もここ数週間大きく増加している。(8/31)
【6人の人質がハマスによって殺害され、遺体で帰還】(Y,P,H)
31日夜に国防軍は男女6人の人質の遺体収容を発表、翌1日に全員の身元が公表されイスラエルへと帰還した。レイームの音楽祭とキブツから拉致された23~40歳の男女で、中には米国出身のイスラエル人で両親が先月の米・民主党大会をはじめ、世界中で人質解放を呼び掛ける活動をしていた、ヘルシュ・ゴールドバーグ=ポリンさん(23)も含まれている。
6人はラファの住宅地の地下20mのトンネルから発見されたのだが、この一帯では約1週間前から6人に関する情報がないなかで軍事作戦を行っていた。当初は監禁場所から離れた場所で作戦が行われていたが、部隊が接近し約1キロの場所まで迫ったことを受けテロリストたちが6人を射殺したことが分かっている。
ハマスは人質の監禁・見張りを担当するテロリストたちに対し、「イスラエル軍が近づいてきたら、(生存したまま救出させないため)人質を死刑に処すように」と通達しており、今回はそのケースが適用された。遺体の解剖から先月29または30日に6人とも至近距離から頭を打たれ即死したが、その他の部位にも銃弾を受けていたことが分かっている。
31日に国防軍部隊がドローン使って地下トンネルを調査していたところ、6体の重なり合った遺体が発見され、そこから遺体救出・収容作戦と急きょなった。ちなみに6人のうちの4人は、休戦期間の第1段階で解放される予定になっており、もう1人についてはロシア国籍所持者であるため、こちらもハマスとロシア政府の交渉が進んでおり、近いうちに解放されるとされていた。このように休戦が実現していれば救われていたはずの命が失われたことから、1日夜にはテルアビブをはじめ国内数か所で休戦を呼び掛ける10万人規模のデモが行われた。(9/1)
【ネタニヤフ首相「フィラデルフィ回廊からの撤退はない」】(Y,P,H)
ネタニヤフ首相は2日夜に記者会見を行い、休戦・人質解放交渉で争点となっているフィラデルフィ回廊からイスラエル軍が撤退することはないと明言した。ネタニヤフ氏は、フィラデルフィ回廊から国防軍が撤退すれば地下トンネルを通して武器供給が再開し、ハマスが再軍備化を進めイスラエルの安全保障を脅かすとし、ハマスにとっての『ライフライン』である同回廊からの撤退は不可能だとの、自身のスタンスを説明した。
また3日前の閣議で駐屯継続に対し唯一反対したガラント防衛相を批判、ハマス内での書類に「ガラントに心理的プレッシャーを掛ける」との言葉があったと指摘し、ガラント氏が結果的にハマスを助けていると示唆した。フィラデルフィ回廊への無期限の駐留を主張するような内容だが、その反面イスラエルはフィラデルフィ回廊を含むガザ全域からの撤退を、休戦の第2段階で行うことを了承している。
交渉に明るい高官は翌3日に、「休戦期間の第2段階で、フィラデルフィ回廊から撤退することをイスラエルは了承している」と、前日の会見とは矛盾する内容の発言。(9/2-3)
【ネタニヤフ首相、ガザ内の人道支援の配布を国防軍に指示か】(Y,P)
大手民放局のニュース番組は3日、ネタニヤフ首相が国防軍に対してガザ地区内での人道支援物資の配布を、国連や国際組織に代わって行うための準備をするよう命じた、とのニュースを報じた。報道によるとハレビ参謀総長は、(配布に関わることで攻撃の対象ともなり得るため)国防軍にとっては不要なリスクであることから、首相の案に対しては反対しているもよう。
防衛関係者によると同様のアイデアは過去にも出ており、現在再検討されているとしながらも、「兵士たちが、小麦粉の袋を配ることによって負傷するようなことがあってはならない」と、参謀総長と同様の見解をメディアに伝えている。報道した記者は「人道支援の配布を担い、そのためにフィラデルフィ回廊に残るとなれば、その先にあるのは(西岸地区のような)軍による占領統治では」との見解を示している。(9/3)
【今週末にも新たな折衷案を発表か】(Y,P)
ハマスはいかなる新しい休戦案に対して拒否する姿勢を示し、ネタニヤフ首相はフィラデルフィ回廊での駐屯に関して妥協する様子を見せず、膠着状態となっている休戦・人質解放交渉のなか、アメリカをはじめ仲介国は今週末にも新たな折衷案を発表する予定。今回の案は前回のようなバイデン大統領単独によるものではなく、米・カタール・エジプトによる共同発表になる可能性もある。
発表を控えてアメリカはネタニヤフ氏に対して、同回廊に対してより柔軟な姿勢を取るように強く働き掛けている。また同時に米政府内では(米国系イスラエル人を含む)人質6人をハマスが射殺した事実が衝撃をもって受け止められており、「ハマスは休戦を望んでいないのでは」との声も上がり、ある高官は「現状で休戦交渉において最大の障害となっているのはシンワルだ」と語り、ハマスを批判している。
このように仲介国の尽力もあり新しい折衷案が近く発表されるが見通しは明るくなく、暗礁に乗り上げていると言っていい状態。(9/5)