【交戦7日目:ハメネイも隠れた大規模な地下壕を空爆、ヒズボラからの攻撃は激化】(Y,P,H)
6日もイランはテルアビブなど中央部を中心に午前・夜と5回のミサイル攻撃を実施。全て迎撃されたが破片がテルアビブ周辺の複数の建物に落下し、小規模な物的被害が報告されている。また警報時のシェルター移動の際に数人が負傷した。
イランからの攻撃は減少する一方、ヒズボラによるミサイルや無人機による攻撃はこの日も増加。ヒズボラの活動が禁止されているレバノン国境地帯から迫撃砲弾が国防軍に向けて発射され配備されていた兵士8人が負傷、うち5人が重傷を負った。この中には極右スモトリッチ財務相の息子も含まれている。
これに対しイスラエル軍はベイルート南部のヒズボラ本拠であるダヒヤへの空爆を前日から継続。避難警告からゴーストタウンとなっている同地区内でヒズボラ関連施設が入る10階以上の高層ビルや行政部の指令部、無人攻撃機の倉庫などを標的とした空爆が実施された。またレバノン南部のサイダではハマスの数億ドル規模の資金を集めていた経済的拠点とされる施設も攻撃され、3人が死亡したとされている。
イラン本土に対しても空軍は午前4時と午後3時の2回大規模な空爆を実施。テヘランでは革命防衛隊の主戦力で反体制派弾圧を行う『バスィージ』部隊の総司令部、軍上層部の拠点や市中心部にある大規模な地下壕施設が標的となった。
この地下壕は先週ハメネイ最高指導者が死亡した場所で、イスラエルは8200部隊や9900部隊によりここを継続的に監視、内部構造の詳細なマッピングを行っていた。この日の空爆は軍上層部が身を隠しているとの情報を受けての空爆のよう。
政府高官によると来週からの「第二段階」では、(反体制派の行動を促す)現政権の象徴的施設や核関連施設の周辺インフラ、ミサイル関連施設などへと継続的な攻撃を行う方針。
またイスラエルはアゼルバイジャンやサウジアラビアなど周辺国が米イ主導の対イラン連合に加わることを強く望んでいる。しかし現時点では周辺国によるイラン攻撃やイラン現体制内からの分裂・体制崩壊を掲げる大きなうねりなどといった兆候が予想に反し見られていないと分析されている。
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【交戦8日目:亀裂の予兆か―大統領の謝罪後、イランが各国を攻撃】(Y,P,H)
7日のイランからのミサイル攻撃は約12回と前日の倍となった。テルアビブやその周辺はもちろんエルサレムでも2日ぶりにサイレンが鳴ったが、ほぼ全ての弾道ミサイルが迎撃されており、シェルターへの移動による軽傷者を除き、ミサイルや迎撃破片による負傷者や大きな被害は報告されていない。
一方空軍はアメリカと共にこの日もイランへの空爆を実施。数十機の戦闘機がテヘラン、シラズ、イスファハーンなど複数の都市で革命防衛隊の防空システム司令部やミサイルの発射台や倉庫、地下に隠されているミサイル製造工場などを攻撃している。またテヘラン空港では国外活動を主導している革命防衛隊のコッズ部隊が兵器・現金の密輸のため使用していたとされる旅客機16機と戦闘機を攻撃し、破壊したもよう。
また米軍は超音速爆撃機B-1をイギリスに、そして3隻目の空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」を中東へと派遣するなど、戦力集結を継続。特に空母に関してイスラエルでは大きく取り上げられ、戦闘長期化への備えに加え、イランがホルムズ海峡を封鎖してエネルギー危機を引き起こそうとしていることへの対抗策とみられている。またイランの代理勢力でありながら未参戦のイエメン・フーシ派を牽制する狙いもあるとみられている。
そしてイランは中東各国への攻撃を継続。ドバイ空港にはイランから発射された無人攻撃機がターミナルに着弾し一時機能停止し、サウジ、クウェート、バーレーンも標的に。
これについてはイラン・ペゼシュキアン大統領が国営テレビでメッセージを発信。その中で前日のトランプ大統領による「無条件降伏」の要求を一蹴、そして攻撃を受けている周辺各国に対して言及し、体制の連係ミスによるものだと謝罪した。「他国への攻撃は行わないと軍部に通知した」とし、さらなる攻撃はないと述べた。
しかしその後もUAE、カタール、バーレーンへの攻撃は継続。外務省は「米軍への防衛行為であり国際法に則ったもの」と説明、隣国を標的としたものではないと主張している。しかしイラン高官からは「米軍基地がある限り平和を享受することはない」と、強硬で攻撃的な発言も聞かれている。
こうした政府・軍・政治指導者の間で一貫性を欠く言動について、イスラエルメディアはイラン体制内部にようやく現れ始めた亀裂であり、体制の弱体化の兆候である可能性があると報じている。
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【交戦9日目:イランのミサイルがテルアビブに着弾、UAEはイラン攻撃か】(Y,P,H)
この日もイランによるイスラエルへのミサイル攻撃が約10回あり、多くは迎撃されたが昼にはクラスター爆弾を搭載した弾道ミサイルが防空システムを突破、16か所に着弾した。テルアビブ市民1人が重傷し、その他中央部の市民4人も軽傷。市街地内の着弾地点には小さなクレーターができ、駐車してあった乗用車が吹き飛ばされ生垣の上に乗り上げるなどの被害が確認され、近隣のアパートでは居間部分がほぼ全壊するなどの物的被害も報告されている。
またレバノン国境部では緩衝地帯内の前線基地で戦車が故障して立ち往生し、戦闘工兵部隊のブルドーザーが救援に向かったところにヒズボラが迫撃砲を発射。ブルドーザーの燃料タンクに直撃したことによる爆発・火災で兵士2人が死亡した。犠牲者の1人はヘルモン山麓に住むドゥルーズ派の38歳の予備役兵で現場にいた士官1人も軽傷を負っている。
空軍はこの日イスファハーン空港に配備されていたF-14戦闘機やテヘランにある監視衛星を統制する宇宙司令部、地下壕状に建設された兵器庫、バスィージ部隊の基地など合わせて約400の拠点へと空爆を実施した。
またテヘランでは7日深夜に30か所の石油貯蔵施設を攻撃し、大規模火災が発生。軍は燃料がイラン軍や革命防衛隊に使用されていたと攻撃理由について説明しており、エネルギー関連施設を直接空爆するのは今回が初めてになる。火災による黒煙は翌朝まで続き、日中には黒い雨がテヘラン市内で降ったことが分かっている。
また湾岸諸国でも戦闘に新展開が。UAEはこの日イラン国内の海水淡水化施設を攻撃、これは中東諸国が明確にイランへと報復攻撃した初の例と報道されている。またUAE外務省は攻撃ヘリコプターが無人攻撃機を撃墜する映像を公開、イランに対して警告を発した。
一方サウジアラビア中部ではイラン攻撃に関連するとみられる事件で外国籍の2人が死亡したと政府が発表している。このような事態を受けてイスラエルは湾岸諸国に対し防空分野での軍事支援を提案している。民間防衛軍のノウハウを通じて防空協力を進めることで、対イラン包囲網を形成する狙いがあるとみられている。
(3/9)
【交戦10日目:クラスター弾により2人が死亡、レバノン緩衝地帯を拡大か】(Y,P,H)
この日もイランによるミサイル攻撃がありテルアビブなどを中心に広い範囲で約10回サイレンが作動した。昼の中央部に対する攻撃では弾道ミサイルに搭載されたクラスター弾が東西約15kmの6か所に着弾し、建設現場では作業員2人が死亡、歩行者1人が重傷を負った。
また午後にはイラン・ヒズボラによる中央部に対する同時ミサイル攻撃があり、複数の地点で被害が発生し女性1人が軽傷。また別のミサイルでも中央部で負傷者が発生している。ヒズボラは引き続き北部に対して数十回の攻撃を実施。そのうちの1発はユダ低地にまで届き、衛星通信所が破壊されている。
一方イスラエル軍もイランおよびレバノンへの攻撃を継続。空軍はイスファハーンにある治安維持部隊の司令部やバスィージ部隊の基地、革命防衛隊の複数の司令部を空爆したほか、コッズ部隊の輸送ネットワークや弾道ミサイル発射台なども攻撃対象となった。
またレバノンではベイルート周辺を中心にヒズボラの武器庫や司令部など数十か所を空爆。さらに南レバノンでは第7機甲旅団が地上作戦を開始し、緩衝地帯を越えて国境部に戻って来たヒズボラを掃討している。この事態を受けてイスラエルはアメリカに緩衝地帯の拡大に関して働きかけている。
トランプ大統領はイランでモジタバが最高指導者に選出されたことについて「満足しておらず、イラン人は大きな過ちを犯した」と警告。また将来的なイラン石油の利権問題については「話すには時期尚早だ」と述べるにとどまったが、明確な否定は行わなかった。
国内では戦時下での教育再開についての議論も進んでいる。政府は11日からミサイル攻撃の危険度に応じて地域を色分けする制度を導入し、危険度の低い地域から学校の再開を決定した。ただし民間防衛軍・教育省・自治体の調整は難航しており、実際の授業再開は来週以降になる可能性が高いと報道されている。
(3/9)
【交戦11日目:戦争終結か続行か?政権交代には1年との声も…】(Y,P,H)
この日もイランとヒズボラによる攻撃は続いた。イランからは主にテルアビブなど中央部に、ヒズボラからは北部に向けてミサイルが発射され、広範囲で約10回のサイレンが鳴った。イランとヒズボラによる同時攻撃も確認され、100万人以上の市民が複数回シェルターへと避難。しかし着弾による負傷や大規模な物的被害は報告されていない。
一方イスラエル軍もイランおよびレバノンへの攻撃を継続した。イランではテヘランやタブリーズを中心に空爆が行われ、革命防衛隊やその特殊部隊の司令部、ミサイル攻撃の指令室、治安維持関連施設、バスィージ部隊の基地や革命防衛隊付属大学の地下にある弾道ミサイル開発施設が標的となった。レバノンでは南部およびベイルート・ダヒヤ地区で多くのヒズボラ拠点が空爆され、組織の資金源となる施設のほか、南レバノン部隊の司令官も排除されたと報じられている。
こうした交戦が続く一方、イスラエルメディアの関心は戦争の目的と終結の見通しへと移りつつある。その引き金はトランプ大統領の発言の揺れにある。
トランプ氏は前夜、イランがホルムズ海峡(石油ルート)に損害を与えればより激しい空爆を行うと警告する一方、戦闘は「当初の予定よりも早く進んでおり、もうすぐ終わる」と発言。しかしヘグセス戦争長官は「これからの24時間でこれまでにないほど集中的な空爆を行う」と述べており、戦争の終結が近いのか攻撃が続くのかについて不透明な状況となっている。記者からどちらの発言が正しいのか問われたトランプ氏は「どちらとも言えるだろう」と回答。
イスラエルメディアはこれらの発言を戦争反対・支持派の双方を意識した「カメレオン的なメッセージ」ではないかと分析。またトランプ氏が掲げる戦争終結の条件である「中東・米への脅威となる兵器開発能力をイランが失うこと」が核兵器のみを指すのか、イスラエルを脅かす弾道ミサイルも含むのかが明確ではなく、両国間に温度差があるのでは、とも指摘している。
イスラエル政府内でも米側の相反する発言の意図を測りかねている状況だが、ある閣僚は「イラン現体制の崩壊には約1年を要するだろう」と発言するなど、現体制崩壊がこの戦争中に実現する可能性は低いとの認識が広がっているもよう。
(3/10)
【交戦12日目:夜から大規模なヒズボラ攻撃、戦争の今後はトランプ次第】(Y,P,H)
この日もイラン・ヒズボラによるイスラエルへの攻撃が継続。特にヒズボラは夜8時前から日付を越えて北部を中心とした大規模な攻撃を実施、ロケット弾・無人攻撃機あわせて220発が発射された。
大半は迎撃されたがロケット弾2発が迎撃を突破し着弾、2人が軽傷を負った。また1発は中央部まで到達し住宅に着弾、怪我人は出なかったが全壊に近い大きな被害が見られている。国防軍は大規模攻撃の情報を事前に把握していたものの住民への警告をしていなかったと、翌朝に認めている。
国防軍もイランとレバノンへの攻撃を継続。イランでは革命防衛隊の拠点や核兵器開発に用いられる爆薬の研究・実験施設など数十か所が空爆の標的となった。またレバノンではベイルート・ダヒヤ地区でヒズボラが軍事拠点として使用していた複数の高層住宅への空爆が実施されている。
またこの日は父に代わり最高指導者に就任したモジタバ・ハメネイの負傷状態に関する報道が。それによると父が死亡した先制攻撃により自身も足を負傷したほか顔にも怪我を負っており、キプロス駐在のイラン大使は「演説できる状態ではない」と事実を認めている。モジタバは8日に最高指導者に就任したが、これまでテレビ演説はもちろん文章による公式声明も出していない。
また戦争の見通しについてはイスラエルとアメリカの間の温度差を指摘する報道も。ネタニヤフ首相はある会談で戦争は「数日ではなく数週間続く」との見通しを示し、来月上旬の過ぎ越しの祭りまでに弾道ミサイル能力の大半を削ぎ、国内を「非常時の通常生活体制」へ移行することが目標になるとした。ただ戦闘が1か月以上続く可能性も否定していない。
一方ホワイトハウスでは戦争の早期終結を模索する声が強まっており、イスラエルが戦闘継続を望んでいることに懸念する声も表面化している。8日に空軍が石油施設を攻撃した際には米がイスラエルを警告し、エネルギー危機を起こすような攻撃を自重するよう伝えられているとのこと。しかしイスラエル政府高官は意見の相違があったとしても米が休戦に踏み切ればイスラエルも従うだろうとし、戦争の行方はトランプ大統領次第との見方を示している。
(3/11-12)
【交戦13日目:モジタバが文書での声明発表、ネタニヤフ首相も初めて会見】(Y,P,H)
11日夜から始まったヒズボラによるロケット弾攻撃は12日朝まで続き、北部の広い地域で数時間にわたり断続的にサイレンが鳴り続けた。多数のロケット弾が同時に発射され、夜空が一瞬明るくなる場面も見られている。またイランからのミサイル攻撃も続き、テルアビブやエルサレムでも数回にわたりサイレンが作動。
またイスラエル国防軍報道官は夜の会見で、ヒズボラによる大規模攻撃に関して事前に通知しなかった判断について言及し、「不要なパニックを避け、敵への情報漏えいを防ぐため」と説明した上で「私たちは学び改善を続ける」と述べ、住民への十分な警告ができなかったことを認めた。
イスラエル軍はレバノンおよびイランへの攻撃を継続。ヒズボラのミサイル発射台20基以上やベイルート・ダヒヤ地区の高層住宅に設けられた拠点など数十か所を空爆したほか、レバノンで活動するイラン革命防衛隊コッズ部隊の司令官を排除した。さらにアラビア語担当の軍報道官はリタニ川より北のザハラニ川以南の地域に対して避難勧告を発令。軍や政府内部では緩衝地帯を越えたより南レバノンの広範囲での駐屯が必要だとの声も出ている。
イランではテヘラン近郊にあり核兵器開発に関わっているとされる特殊軍事複合施設も標的となった。衛星画像では空爆後に大きな穴が確認されており、バンカー貫通弾が使用された可能性が高い。
政治面でも重要な動きがあった。父アリ・ハメネイの後を継ぎ最高指導者となったモジタバはこの日初めて国営テレビを通じて声明を発表。映像・音声はなく文章をアナウンサーが読み上げる形式で「殉教者の血の報復を放棄することはない」と述べ徹底抗戦の姿勢を示し、ホルムズ海峡の封鎖継続を強調した。また湾岸諸国には友好を強調する一方「米軍基地への攻撃は継続しなければならない」と述べ、中東からの米軍排除を訴えた。
同じ日、ネタニヤフ首相も開戦直後以降初めて国内向けの記者会見を開いた。首相はイラン国民に対し自由のために立ち上がるよう呼びかけつつも、「体制崩壊の条件は整えつつあるが、国民が政権交代を実行するかは分からない」と述べ、これまでより慎重な姿勢を示した。またモジタバについては「革命防衛隊の操り人形」と批判、ヒズボラに対しては「レバノン政府が武装解除を行わないなら、我々が行う」と警告した。
さらに自身の恩赦問題に関する質問ではトランプ大統領がイスラエル司法制度を批判していることについて「両国の大統領に敬意を持っている」と中立性を見せるものの、トランプ氏のヘルツォグ大統領に対する度重なる批判に理解を示した。その上で「ばかげたサーカスは今すぐ終わらせ、私が『偉大な仕事』を行う時間を与えなければならない」と裁判の早期終結の必要性を訴えた。
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