【交戦35日目:米戦闘機がイランにより撃墜、ヒズボラの武装解除は不可能か】(Y,P,H)
3日もイランからの弾道ミサイル攻撃が北部および中央部で計6回確認された。北部では79歳の男性が爆風で飛来した石に当たって軽傷を負ったほか、各地で物的被害が発生している。さらに午後11時前後には、ヒズボラによるロケット弾攻撃が北部に対して2回行われた。
この日、最もサイレンが多く鳴ったのはイラン・ヒズボラによる攻撃を受けた北部の主要都市ハイファとその周辺。
イスラエルはこの日もイランおよびヒズボラへの攻撃を継続したが、軍事面で最大の注目を集めたのは、イランによる米空軍F-15E戦闘機の撃墜。これまで米軍はF-15を複数機失っているもののクウェートによる誤射によるもので、イランによる撃墜が確認されたのは初めてとなる。
乗員2人は脱出しイラン国内に降下、イラン側はテレビなどを通じて報奨金付きで身柄確保と引き渡しを呼び掛けた。米軍は直ちに救出作戦を実施し操縦士は救出されたが、もう1人のナビゲーターの所在は不明となっている。またこの日にはA-10攻撃機の撃墜も報じられている。
しかしイスラエル国内で最も大きく報じられたのは、ヒズボラの武装解除をめぐる発言について。軍高官は同日朝、「武装解除はレバノン全域の占領なしには不可能であり、現実的ではない」と発言し波紋を呼び、これに対してカッツ防衛相は「軍事的および政治的手段を通じてヒズボラを武装解除することが最重要目標であり、方針は不変」と強調している。
軍報道官も長期目標としての武装解除へのコミットを再表明したが、両者とも武装解除の今戦争での実現については明言を避けており、軍事力だけでは達成困難との認識がにじむ形に。このように明確な青写真がない状態での軍や官僚による発言は、特に北部住民の間で不安と混乱を招いている。
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【交戦36日目:軍総司令部付近にイランのミサイル着弾、トランプ大統領は再び最後通牒】(Y,P,H)
4日もイランから中央部・北部およびエルサレム周辺を中心に計9回の弾道ミサイル攻撃が行われ、夜にはフーシ派からの弾道ミサイルが中央部に飛来した。中には事前警告なしに着弾するケースも確認されている。
正午から午後にかけては、クラスター弾を搭載した弾道ミサイル攻撃があり、テルアビブ中心部の駐車場や学校付近に着弾。数時間後には軍の報道規制が一部解除されたことから、着弾地点が軍総司令部の近くであったと報道された。一連のミサイル攻撃による人的被害は軽傷者数人だが、住宅や車両などに大きな物的被害が発生している。
イスラエル空軍はこの日イラン南西部の石油化学施設や、革命防衛隊のミサイル発射台・防空システム・軍事産業関連施設などに対する空爆を継続して実施。またレバノン戦線でも、南部での地上作戦に加え、リタニ川の橋やベイルートへの空爆を行っている。
こうした中、未明に南レバノンで実施された作戦で特殊部隊「オズ旅団」の21歳の兵士が誤射により死亡し、もう1人が重傷を負う事故が発生した。ナバティエ地域でヒズボラに協力していたとされる人物の拘束作戦が行われたところ、住宅に突入した兵士が2人の人影を敵と誤認して発砲してしまったとされている。
また米大手紙は米諜報機関のイラン戦争に関する分析を引用し、イランの弾道ミサイル発射台は空爆で破壊されても数時間以内に修復され再使用されていると報じた。これにより、イランの現状のミサイル戦力の把握が困難となると同時に攻撃と修復の「いたちごっこ」になっていると指摘されている。
大局的にはホルムズ海峡の封鎖解除をめぐり、トランプ大統領がSNSで声明を発表。イランに与えていた猶予期間に言及した上で、「時間は迫っている。地獄が降りかかるまで48時間だ」と最後通牒を発した。このトーンは米イ間の交渉がこれまで停滞し続けていることを示すものであり、米政府はイスラエル側に対し停戦交渉が行き詰まっている現状を伝えたと、イスラエルメディアは報じている。これを受けイスラエルはさらなる戦闘の長期化に備えた準備を進めている。
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【交戦37日目:ハイファにミサイル着弾で4人が死亡、ヒズボラ武装解除は長期的目標】(Y,P,H)
5日はイランの弾道ミサイル攻撃が計7回確認され、北部に3回、南部に4回飛来した一方、テルアビブを含む中央部への攻撃は見られなかった。午後6時ごろには、北部ハイファの住宅地に着弾し、集合住宅が倒壊。82歳の男性が重傷し、さらに生後10か月の男児を含む3人が負傷した。
また建物の下敷きとなり行方不明となっていた4人の捜索が約18時間にわたり行われたが、翌朝に全員の死亡が確認された。4人は自宅にシェルターがないため階段に避難していたが、建物全体が崩壊したことで瓦礫の下敷きとなったと報じられている。さらに北部のアラブ人集落でも、ヒズボラのロケット弾により6人が負傷した。
イスラエルはこの日もイランおよびヒズボラへの攻撃を継続。テヘランでは革命防衛隊の資金源となっている石油取引の責任者を排除したほか、ベイルートへの空爆と南レバノンでの地上作戦を並行して実施。南レバノンの学校からはロケット弾や発射装置、訓練修了証などが発見され、民間施設が軍事拠点として利用されていた実態が明らかになっている。
一方、北部ではヒズボラの攻撃が続く中、住民の不満が高まっている。ロケット弾が頻発する地域では集団避難を求める住民と自治体との間で衝突が発生するケースも散見。政府は北部のため約30億円規模の特別予算を計上しているが、大規模避難の実施には十分な予算ではないので実現性は極めて低い。
また軍高官は「ヒズボラは現在のペースで数か月間ロケット弾攻撃を継続できる」と指摘しており、住民の間では政府の戦略の欠如に対する批判が強まっている。これに合わせてザミール参謀総長もヒズボラ武装解除は最終目標だが、今作戦の目的ではないと発言。このように軍は政治的枠組みの必要性を強調し続けており、政府による長期的戦略が待たれている。
また3日にイラン南西部で撃墜された米軍F-15戦闘機の乗員が、同軍特殊部隊による数百人規模の救出作戦により保護されたことが大きく報道されている。乗員は2日間にわたり行方不明となっており、イラン側は報奨金を提示して情報提供を呼びかけていた。救出作戦にはCIAに加えイスラエルも情報面で関与し、制空権の確保など間接的な支援を行ったとされる。
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【交戦38 日目:空軍が革命防衛隊上層部を排除、イランは米国案を拒否し独自案を提示】(Y,P,H)
6日もイランからの弾道ミサイル攻撃は中央部を中心に計9回確認され、このうち7回が中央部に集中した。クラスター弾による攻撃では、8つの町にわたり約50キロの範囲で28か所の着弾が確認され、テルアビブを含む広範囲で被害が発生。
これらの攻撃により、シェルターへ向かう途中や道路上で少なくとも4人が重傷、2人が軽傷を負ったほか、集合住宅の一部損壊や車両火災など、各地で物的被害が報告されている。
イスラエルはこの日もイランへの空爆を継続し、テヘランでは革命防衛隊の諜報部門トップで影響力があるとされるナジド・ハデミを潜伏先で排除したほか、国外作戦を担うコッズ部隊の精鋭「840部隊」の司令官も別の精密攻撃で排除したと発表した。さらに南部の大規模石油化学施設やテヘラン内の空軍基地に対する空爆も行い、数十の戦闘機・ヘリコプターを破壊している。
大局的には米イ間の駆け引きが続いている。トランプ大統領は夜の記者会見で、猶予期限(中東時間8日未明)までにホルムズ海峡の封鎖解除と核開発の断念が行われなければ、「橋などの交通インフラやエネルギー施設を破壊し、再利用不能にする計画がある」と警告した。
その一方で、イラン側から提示された休戦案については「意義のある進展だ」とも述べ、停戦の可能性にも言及している。しかし、この「進展」とされたイラン案は実際には米国案を拒否したもので、恒久的停戦や制裁全面解除、ホルムズ海峡の管理権および通行料徴収、米軍の中東からの完全撤退などを含むとされる独自の10項目案となっている。
このように双方の立場の隔たりは依然として大きい。イスラエルは現時点での停戦には否定的で米軍との連携によるさらなる大規模攻撃に備えた態勢を整えており、最終判断は米政府の決定に委ねられている。
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【交戦39 日目:交戦激化の可能性が高いとの報道も、深夜には休戦へと急展開】(Y,P,H)
4月7日、イランによる弾道ミサイル攻撃は中央部および南部を中心に計9回確認された。午前と午後に中央部を標的とした攻撃は、これまでよりも規模が大きかったとみられる。夜までの時点で、ミサイルの着弾や破片の落下により3人が軽傷を負い、各地で物的被害が報告されている。
過ぎ越しの祭り最終日の祝日がこの日の夜に始まることから、民間防衛軍は大規模攻撃を想定し厳戒態勢を敷いている。
イスラエル空軍はこの日もイランへの空爆を継続。イランメディアはテヘランや宗教都市ゴムでの被害を報じ、その中でテヘランのユダヤ人共同体のシナゴグが空爆により全壊したと伝えている。これについてイスラエル軍はシナゴグ付近に潜伏していた革命防衛隊・イラン軍の統合司令部に属する高官を標的とした攻撃であったことを認め、シナゴグ損壊に遺憾の意を示した。
また反体制派系メディアはテヘラン近郊にある高度機密施設「パルチン軍事施設」に対して大規模な空爆が行われたとも。さらに米空軍も、石油輸出の要衝であるカーグ島の数十の拠点を攻撃した。
大局的には、ホルムズ海峡封鎖をめぐる猶予期限が迫る中、トランプ大統領は「一つの文明全体が今夜死を迎える」とイランに対する警告のトーンをさらに強めている。期限直前まで外交交渉は続けられているものの、イスラエル高官は「合意成立の可能性は極めて低い」との見方を示しており、イスラエルメディアも交戦激化の可能性が高いと報じている。
しかし日付が変わる頃には、速報で交渉前進の新展開とトランプ氏による2週間の休戦宣言が報じられ始めた。
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【急転直下、2週間の休戦決定―ネタニヤフ首相は勝利宣言も…】(Y,P,H)
イラン交戦から40日目となる8日未明にトランプ大統領が自身のSNSを更新し、イランがホルムズ海峡を開けることに同意したうえで「2週間、イランへの攻撃・空爆を延期することに応じる」と事実上の休戦締結を発表した。
早ければ10日にもパキスタンにてイランが提示した10項目からなる停戦案をたたき台とした、米イ間の交渉が始まることになる。しかし同案でイランはウラン濃縮の継続を求めているのに対し、米側は濃縮の完全停止と濃縮ウランの国外搬出を要求しているなど、双方の隔たりは大きい。
この休戦に関しては開戦直後にネタニヤフ首相が、1. 核の脅威の排除、2. 弾道ミサイルの脅威の排除、3. (政権交代を含む)イラン人が自身の国の命運に関して自決するための条件作り、を戦争目的として掲げていたことから、結果的にはどれも明確に達成できていない中で米主導の休戦を受け入れることとなった。
休戦発表から約20時間後にネタニヤフ氏はビデオ声明を出し、イスラエルは想像以上の成果を達成したと発言し、「イランは現在史上最も弱い一方、イスラエルは史上最も強い状態。これが今回の戦争の結論だ」と成果を強調したが、イスラエルメディアは懐疑的に報道している。
またラピード野党議長や今年の総選挙では対ネタニヤフ筆頭格とされるベネット前首相らもそれぞれ声明を発表。どの戦争目標も達成されなかったと指摘したうえで、「イスラエルを中から分裂させる政府が外の敵イランを倒せるはずはない」とネタニヤフ氏の戦争運営を厳しく批判した。
またレバノン戦線に関しては、イラン・パキスタンはヒズボラも休戦に含まれていると主張する一方、イスラエル・アメリカは含まれていないと主張。そのためイスラエル空軍はイランとの休戦が成立したこの日、ベイルートと南レバノンを中心に約100のヒズボラ拠点を標的に大規模な空爆を実施している。
これに対してヒズボラは8日以降もイスラエルに対してロケット弾による攻撃を継続し、イランは休戦違反だとし自らも休戦破棄をほのめかしている。
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【休戦2日目:米の要請を受け、イスラエル・レバノン間の休戦交渉開始か】(Y,P,H)
前日のイスラエル空軍によるレバノンでの大規模空爆を受け、EUを含む国際社会から批判の声が上がっている。これを受けトランプ大統領は、ネタニヤフ首相に対しレバノンへの攻撃規模の縮小と停戦交渉の開始を要請した。
ネタニヤフ首相はこれに応じ、レバノンとの直接交渉を速やかに開始するよう指示。交渉はキプロスまたは欧州の主要都市で行われる見通しで、イスラエルおよびレバノンの在米大使と在レバノン米大使を含む外交官レベルの三者協議となる予定となっている。
議題は停戦とヒズボラの武装解除とされているが、レバノン政府の統治能力に対する疑問が浮き彫りとなる調査結果も出ている。それによると、イランとの戦争開始以降ヒズボラからのロケット弾や無人攻撃機による攻撃は6500件に上り、そのうちの半数がリタニ川以南という本来レバノン政府が武装解除を完了しているはずの地域からのもの。このように停戦合意の履行が不十分である実態が改めて示されており、レバノン軍だけではヒズボラの武装解除は非現実的となっている。
この日は上記のトランプ氏の要請を受け、イスラエル軍は公式には認めていないものの、レバノンでの作戦規模を前日より縮小。またヒズボラからの攻撃も北部国境地帯で計74回のサイレンが鳴るなど続いており、最北端の町キリヤット・シュモナではロケット弾が10回飛来している。
大局的には、米イラン間の休戦交渉をめぐり、イスラエルだけでなく湾岸諸国も強い関心と警戒をもって注視している。特にイスラエルと国交を持つUAEは合意内容の透明性を求める声明を発表し、イランの核兵器や弾道ミサイル開発、さらにはヒズボラなど代理勢力への支援の監視に加え、ホルムズ海峡の無条件開放を交渉に含めるよう米国に働きかけている。
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