ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【週末にヒズボラによる攻撃が拡大、国防軍はリタニ川の北へ進軍】(Y,P,H)
29・30日の週末、ヒズボラによるロケット弾・無人攻撃機攻撃が激化し、サイレンは計56回鳴った。攻撃範囲は国境地帯だけでなくツファットにも拡大。キリヤット・シュモナでは住宅地への着弾があり、ナハリヤの海岸部にもロケット弾が落下するなど緊張が高まった。
これと前後して国防軍はレバノン南部からヒズボラを排除するため、リタニ川以北での地上作戦を本格化させている。
ゴラニ旅団や第7機甲旅団などを中心とする部隊はリタニ川周辺のヒズボラ戦闘員を排除した後、工兵部隊が設置した仮設橋を利用して川を渡河。戦車や装甲車も北上し、現在は戦略的要衝であるボーフォート城跡周辺まで進出しており、ヒズボラとの銃撃戦が報じられている。
こうした軍事行動の裏で、イスラエルとレバノンの間で交渉も続いている。週末にはペンタゴンで両軍代表団による実務協議が行われ、来週には駐米大使同士の対話も予定されている。
レバノン側は南レバノンでのヒズボラ非武装化を進めるためイスラエル軍の撤退を求めているが、一方でレバノン政府高官はイスラエルメディアに対し、「レバノン軍は現時点でヒズボラに軍事的に対抗できない。交渉を前進させるためにはヒズボラの弱体化が不可欠だ」と説明。
さらに「もしイスラエルの軍事作戦が停止されれば、余力を得たヒズボラはイスラエルとの対話へ舵を切ったベイルートの指導層との対立を激化させ、『決着を付けようとする』だろう」と述べ、政府内ではイスラエルによる軍事作戦継続を必要とする声も出ていることを明かした。
(5/29-30)

 

【国防軍が26年ぶりにボーフォート城跡を制圧も、ドローンによる犠牲は止まらず】(Y,P,H)
ゴラニ旅団、ギブアティ旅団、第7機甲旅団などによる合同部隊が31日、リタニ川近くの戦略的要衝ボーフォート城跡を制圧した。
ボーフォートは十字軍時代に築かれた城塞で、その見晴らしの良さから1982~2000年のイスラエル軍による南レバノン駐留時には、イスラエル北部を見渡せる重要拠点として「安全ベルト」の一角を担っていた。26年ぶりの制圧についてネタニヤフ首相は「歴史的な偉業だ」と強調している。
一方で専門家らは、ボーフォート制圧には象徴的な意味や戦術的価値はあるものの、アメリカによりヒズボラへの攻撃が制限されている現状ではその戦略的意義は限定的だと分析。また北部軍司令官は「ヒズボラ排除にはベイルート以南の全家屋を一軒ずつ捜索しなければならない」と述べ、軍事力だけでは不可能であり、外交的なヒズボラ抑制が不可欠との認識を示した。
国防軍がリタニ川以北で支配地域を拡大している目的はイスラエル北部をロケット弾や無人攻撃機から守ること。しかし皮肉なことに国防軍の北上に合わせてヒズボラも射程の長いロケット弾の使用を増やしており、ハイファ近郊などより広い地域でサイレンが鳴る事態となっている。
また同じ31日には、ボーフォート近郊の作戦に参加していた21歳のギブアティ旅団兵士が、さらに翌1日には20歳の偵察部隊兵士と30歳の予備役軍医がヒズボラの光ファイバー誘導式無人攻撃機により死亡。国防軍が制圧地域を拡大する一方、その代償も大きくなっており、レバノン戦争時のような泥沼化を危惧する声も上がっている。
(5/31-6/1)

 

【米仲介でイスラエル・レバノンが休戦延長もヒズボラは即座に拒否】(Y,P,H)
イスラエル時間の3日深夜、米国務省でアメリカの仲介のもと、イスラエルとレバノンの駐米大使による協議が行われ、両国が休戦延長と南レバノンでの「セキュリティーゾーン」設置で合意したと発表された。
合意ではヒズボラが攻撃を停止し、リタニ川以南から撤退することが前提条件となる。それが履行された場合、現在国防軍が展開している地域にはレバノン正規軍が進駐し、アメリカの支援を受けながらセキュリティーゾーン内でヒズボラ掃討作戦を行うという内容。
発表では、この合意が両国間のさらなる安全保障協力や和平に向けた第一歩であることが強調される一方、両国関係は政府同士によって決定されるべきであり、ヒズボラやイランなど第三者が介入すべきではないとの考えも示された。ネタニヤフ首相や閣僚らは支持層からの反発を意識してかこの合意について公のコメントを避けているが、複数の高官や関係者はボーフォートをはじめとする既に制圧した戦略拠点から国防軍が撤退することはないとの見方を示している。
また今回の合意はヒズボラの武装解除とそれを実現するためにレバノン政府や正規軍がヒズボラとの対立も辞さない姿勢を示せるかどうかにかかっていると指摘されており、その実現性には疑問の声も少なくない。
その懸念は現実のものとなり、翌4日にはヒズボラ指導者ナイム・カセムが武装解除や撤退を拒否し、「レバノン政府はヒズボラの武装解除ではなく、まずイスラエル軍の撤退を要求すべきだ」と述べ、事実上この合意を破棄。その直後には国境地帯、とりわけ沿岸部に向けてロケット弾や無人攻撃機による攻撃を実施した。また対戦車ミサイルによる攻撃で第7機甲旅団の21歳の兵士が死亡している。
この合意に対してイスラエル国内ではヒズボラが攻撃を続けるなかでの休戦に反対の声も多い。一方で、今後ヒズボラの活動はより明確な休戦違反となるため、組織を国内外で孤立させやすくなるとの見方もある。また、レバノン政府や正規軍がヒズボラを非武装化できないことが明確になれば、国防軍による今後の軍事作戦に対する国際的な正当性を得やすくなるとの評価も出ている。
ただし、こうした主張は「ヒズボラが武装解除する可能性はなく、この休戦が機能することはない」という認識を前提としている。実際、イスラエルの安全保障関係者やメディアの論調を総合するとこの合意が本格的な休戦や恒久的な解決へ発展するとはほとんど期待されていない。
(6/4)

◯ 内政

【夫婦の無理心中との見立てが一転アラブ系少年を殺人容疑で逮捕】(Y,P,H)
22日に夫婦が銃撃され死亡しているのが見つかった事件は夫による無理心中とみられていたが、捜査の結果、中央部在住のアラブ系少年(17)がナショナリズムに基づく動機からの殺人の疑いで逮捕されたことが明らかになった。
報道規制解除により明らかになった情報によると、事件当初、警察は夫が所持していた拳銃が現場からなくなっていたことから、発砲後に何者かが持ち去った可能性を考えていた。しかしその後の捜査で夫の手から発砲の痕跡が検出されず、自宅の金庫から拳銃が発見されたことから、警察は早い段階で殺人事件に切り替え捜査。
その後、複数のアラブ系市民への事情聴取を進めるなかで、容疑者の少年による民族主義的な犯行との疑いが強まり、逮捕に踏み切ったという。
遺族は今回の逮捕を受け、「14歳の息子を残して無理心中するとは思えず、当初から事件だと確信していた。胸のつかえが下りた」と語る一方、悲しみは今も癒えていないと複雑な胸中を明かしている。
しかし翌月4日には取り調べから新たな事実の報道が。それによると少年による犯行はテロではなく、3人に共通する趣味だった遺跡で発見された古代コインをめぐるトラブルの末の殺人である可能性が急浮上している。
(5/28-29,6/4)

 

【「死んでも軍には行かない」超正統派デモで交通網が一時まひ】(Y,P,H)
戦争開始から2年半以上が経過し、国防軍内では兵士の消耗や人員不足から軍の持続能力を懸念する声も上がるなか、1日、兵役に反対する超正統派による大規模デモが行われた。
デモを主導したのは特に徴兵反対の立場を取る過激な超正統派の一派である。超正統派に対する兵役免除(法的には徴兵延期・猶予)を認めていた制度はすでに失効しており、現在は多くの徴兵対象者が違法な形で兵役逃れをしている状態。召集令状を繰り返し無視した約5万人には逮捕状が出されているものの、実際に逮捕される事例はほとんどなかった。
しかしここ数日で数人が(別の事案がきっかけで)逮捕されたことから、超正統派社会では反発が強まりこの日のデモはそれを受けてのものになる。デモは比較的小規模だったがエルサレムの玄関口や中央部にある国内有数の交差点、さらには鉄道線路上でも無許可の抗議活動を実施。その結果、数時間にわたり各地で交通網が大きく混乱した。また警察幹部の自宅前でも抗議が行われたほか、警察との衝突や兵士への暴行も発生し、負傷者も出ている。
(6/1)

 

【正統派の有力ラビたち、男女混合の戦車部隊に抗議声明】(Y)
ユダヤ教正統派の主要ラビたちは2日夜に緊急会合を開き、国防軍の戦闘部隊を女性にも開放するよう求めた最高裁判断への抗議声明を発表した。また正統派の若者たちに対し、この決定に従わないよう呼び掛けている。
イスラエルでは超正統派やアラブ人などを除き男女ともに兵役義務があり、近年は兵器や装備の軽量化、人員不足、男女平等意識の高まりなどを背景に戦闘部隊への入隊条件から性別を取り除く動きが進んでいる。これまでも国境警備など守備任務を主に担う戦車部隊では女性兵が配備されていたが、今年に入ってからは第7機甲旅団など敵地での作戦に従事する機甲部隊でも女性兵士を受け入れる試みが進められており、正統派指導者らが強く反発していた。
会合後に発表された声明では最高裁の判断を「越権行為」だと批判。「この判決は兵士の命を危険にさらし、イスラエルの公共生活を傷付け、国家的危機をもたらす」と非難した。また戦車部隊内での男女混合勤務は律法で禁じられていると主張し、「安息日や食物規定への違反に準ずる」と指摘。そして多くの宗教的兵士が女性の存在を理由に部隊での奉仕を拒否する可能性があると警告し、正統派の若者たちに最高裁と軍の決定に従わないよう呼び掛けた。
(6/3)

◯ 国際情勢

【ハイテク産業と駐在外交官が交流】(Y,P,H)
イスラエルのハイテク・生命科学産業のる業界団体『イスラエル先端技術産業協会』はテルアビブで国内のベンチャーキャピタルや投資会社と駐在する各国大使や大使館の経済担当官との交流・情報交換を目的とした初の戦略会合を開催した。
この会合は安全保障・経済・外交面で複雑な状況が続くなかでも、イスラエルのハイテク産業が持つ創造性や回復力を国際社会に見てもらいたいとの考えで企画されたもの。オーストリア、インド、シンガポール、中国、韓国などの外交官に加え、日本の新居特命全権大使も出席した。イスラエル側からは外務省高官のほか、国内有数のハイテク投資会社であるヴィオラ・ベンチャーズや自然言語処理分野で注目を集めるAI21 Labsの創業者らが参加。約100人が出席し、交流と相互理解を深めた。
戦争や予備役招集の影響が続くなかでも、イスラエルのハイテク産業は高い回復力を示している。2024年にはスタートアップ企業への投資が回復し、2025年の資金調達額は約156億ドルと前年を大きく上回るなど、世界有数のイノベーション拠点としての地位を維持している。
(6/1)

 

【アルキア航空が東京線に参入、テルアビブ-東京の運賃値下がり期待】(Y)
イスラエル第3の航空会社アルキア航空は2日、今年10月25日からテルアビブ-東京線に就航すると発表した。アルキアにとってアジア路線はバンコク、ハノイに続く3路線目となり、近年のイスラエル人の日本旅行ブームを受けた決定とみられる。
運航は週2便で、テルアビブ発は日曜と水曜、東京発は月曜と水曜を予定している。同路線は2023年の就航開始からエルアル航空による独占状態だったが、今後はイスラエル国内航空会社同士による競争路線となる。大手メディアの調査によると同じ日程で比較した場合、アルキアの往復運賃はエルアルより最大1200ドル(約19万円)安いケースもあるという。そのため、価格競争によって日本旅行がより身近になることへの期待が高まっている。
この発表はイスラエル国内でも大きく報じられており、公共放送は夜のニュース番組の冒頭ヘッドライン(本編前の主要ニュース紹介)で「人気路線への参入」と取り上げたほか、大手紙も「イスラエル人お気に入りの旅行先への参入」と報じるなど、日本路線への関心の高さがうかがえる。
(6/2)

 

【レバノン問題で米イスラエル間の亀裂拡大か、トランプ氏はネタニヤフ氏に激怒と報道】(Y,P,H)
1日以降、レバノン戦線をめぐるトランプ大統領とネタニヤフ首相の意見の相違や両者の緊張関係についての報道が相次いでいる。
発端となったのは1日の出来事だった。イスラエルが南レバノンでの軍事作戦を拡大するなか、イランはアメリカとの休戦交渉を停止。その再開条件として、国防軍による軍事作戦の停止と南レバノンからの撤退を求めた。これはヒズボラ・イスラエル間の停戦問題を米イラン交渉に組み込み、イスラエルの軍事行動を制約する狙いがあるとみられている。
一方その数時間前には、ネタニヤフ首相がヒズボラの拠点であるベイルート南部ダヒヤ地区への空爆を警告し、国防軍も住民に避難勧告を発表していた。イランとの外交的合意を重視するトランプ氏は直ちに介入し、ネタニヤフ氏と電話会談を実施。その後ヒズボラ側とも接触し、ロケット弾攻撃の停止を求めたという。
そして自身のSNSでヒズボラが攻撃停止に同意したためイスラエルによるベイルート空爆は実施されず、同地へ向かっていた地上部隊も引き返したと発表した。この発言はイスラエル国内で波紋を呼び、野党からは「イスラエルの主権を失った」との批判も上がった。
その後、ネタニヤフ氏との電話会談の内容がリークされ、報道の焦点は両首脳のやり取りへと移った。米高官によると、ネタニヤフ氏が「ヒズボラの攻撃が続く限り、イスラエルにはベイルートを攻撃する権利がある」と主張し続けたことに対し、トランプ氏は激怒。「お前は狂っている」と罵倒した他、「俺がいなければ、お前は監獄に入っている」と発言したという。
この報道はイスラエルでも大きく取り上げられた。当初ネタニヤフ氏側は否定していたものの、3日にトランプ氏自身が米紙の取材でイスラエルによるレバノンでの軍事作戦がイランとの包括的な外交努力を危険にさらしていると考えており、強い苛立ちを感じていたことを認めた。一方で「ネタニヤフ氏との関係は良好で緊密に連携している」とも強調している。
また同日、ネタニヤフ氏も別の米紙の取材でこれらの発言の真偽を問われたが、「詳細については話さない」と述べ、明確な否定は行わなかった。ネタニヤフ氏は両者の不一致について「戦術的なものに過ぎない」と説明しているが、今回の騒動は従来から存在していた米イスラエル間の戦略的相違を改めて浮き彫りにした。
トランプ政権にとって最優先事項はイランとの外交的な着地点を見いだすことであり、ヒズボラ問題はその一部に過ぎない。一方イスラエルにとっては北部への攻撃やヒズボラの再軍備は安全保障に直結する問題である。そのため今後、イランが交渉のたびにヒズボラ問題を持ち出せば、これまで比較的自由に認められてきたイスラエルの対ヒズボラ軍事作戦に制約が加わるのではないかとの懸念も出ている。
またトランプ氏が「ヒズボラも攻撃停止に同意した」と発言した後も、ロケット弾や無人攻撃機による攻撃は続いており、イスラエル国内では米とネタニヤフ政権の対応に対する不満も高まっている。
(6/1-3)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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