ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【過激入植者、近隣パレスチナ住民に埋葬場所の移動を強要か】(Y,P,H)
先月、22年ぶりに再建され再入植が進む西岸地区北部の入植地近郊でパレスチナ住民との埋葬をめぐるトラブルが発生した。
隣接するパレスチナ人の村で住民の葬儀が8日に行われ、国防軍などから必要な認可を受けたうえで故人が埋葬された。しかしその様子を見た入植地の住民たちが反発し、工具を手に墓地へ押しかけて墓を掘り返そうとしたため、喪に服していたパレスチナ住民との衝突に発展した。
この事態を受けて国防軍が現場へ急行し、入植者たちから工具を没収。一時は沈静化したように見られたが、その後パレスチナ住民側は親族の遺体を元の墓から移し、入植地から数百メートル離れた場所へ再埋葬した。
SNS上で拡散されている映像では、墓地へ向かうパレスチナ住民を兵士たちが護衛する後方を入植者の若者たちが付いて行く様子も確認されている。そのため、住民側が脅迫や将来的な墓の破壊行為を恐れ、埋葬場所の移動を余儀なくされた可能性が高いのではとされている。
国防軍は「公共秩序と人間の尊厳を損なうあらゆる行為を非難する。この事案については調査を進めており、適切な措置を講じる」とコメントしている。
(5/9)

 

【ネタニヤフ首相、米TVで「濃縮ウラン排除まで戦争は終わらない」】(Y,P,H)
ネタニヤフ首相がアメリカの長寿TV番組に出演し、イラン戦争や10/7、その責任問題などについて長時間のインタビューに応じた。
1カ月半続いたイランとの戦争については「大きな戦果」があったと強調する一方で、「イランには取り除かなければならない濃縮ウランや濃縮施設が残っており、(戦争は)まだ終わっていない」と発言した。また、濃縮ウランをどのように国外へ持ち出すのかとの質問には米イ共同による軍事作戦などについて明言を避けつつ、「合意が最善の道だ」と語ったうえで、「入って行って持ち出す」とも発言し、軍事的手段の可能性を示唆した。
一方、依然として明確な形で責任を認めていない10/7について、「全員が何らかの責任を負っている――首相からその下に至るまで」と発言した。これは「全員に責任がある」という形で責任を拡散させるような語り方だと批判も出ており、国の最終的意思決定者として政治責任を引き受ける姿勢は見られなかった。
辞任した軍・諜報機関トップらについても、「彼らが取った責任とは何か?それは明白ではない」と批判。さらに10/7以前の失敗より、その後イスラエルが自身の指揮下で何を成し遂げたかに注目すべきだと主張した。
ネタニヤフ首相はイスラエル主要メディアのインタビューには10年近くほとんど応じておらず、海外メディアでの発言をイスラエルメディアが報じる、いびつな構図が続いている。
(5/10-11)

 

【ヒズボラの無人攻撃機による被害続く、47歳の予備役兵が死亡】(Y,P,H)
10日、ヒズボラは複数の無人攻撃機をイスラエル北部国境地帯へ発射し、そのうち1機が軍用輸送車の近くに着弾した。
この攻撃により、車両を運転していた予備役兵の47歳男性が死亡した。男性は予備役の義務招集の対象年齢を超えていたが、「北部市民を守りたい」との思いから運転手として従軍していた。妻と高校生の子供、さらに生後8カ月の子供を残しての戦死となり、12日に葬儀が行われた。
また12日にも無人攻撃機の飛来があり、国境地帯では2時間で5回サイレンが鳴る事態となった。空軍による迎撃例もあったが、1機は着弾し兵士2人が負傷。有線型無人攻撃機による被害は拡大している一方、軍も有効な対策を見出せていない。
そんななか国防軍はリタニ川以南だけでなく一部では以北地域でもヒズボラ掃討作戦を継続。越境攻撃に備えて建設された地下トンネルなどを破壊し、約15人のテロリストを排除している。このようにイスラエル側はロケット弾・無人攻撃機発射を防ぐため、限定的な地上作戦を続けている。
14日にはワシントンでイスラエル・レバノン高官による恒久的休戦に向けた協議が行われたが、その数時間前にもヒズボラの無人攻撃機が国境近くの市街地に着弾し、重傷者1人を含む市民3人が負傷した。
またこの日の協議についてアラブメディアは「楽観的な雰囲気ではなく、大きな進展の兆候も見られなかった」と報道。その背景として、ヒズボラを軍事的に抑制できないレバノン政府にはイスラエルに対し安全保障面で提示できる材料が乏しいことがあると伝えられている。
(5/11-12,14)

 

【10/7の報告書「性的暴力は組織的テロ行為だった」】(Y,P,H)
10/7のハマスの犯罪に関する市民委員会が2年にわたり収集した証言や資料・証拠品などを基に約250ページの報告書を発表し、テロリストの組織的な性的暴力の実態が改めて明らかになった。
報告書は被害者だけでなく、病理医や救助隊、遺体鑑定士など現場に関わった人々の証言・記録も含めた内容となっている。分析では単独または集団での強姦、殺害前後の性的暴力や屈辱行為、脱衣強要、家族の前での性的暴行など、13のパターンを確認。また、苦痛や屈辱を増幅させるためSNSで蛮行を拡散するなど様々な手段が用いられたと結論付けている。
さらに10/7や拉致時だけでなく、監禁中にも性的暴力や屈辱行為が他の人質の前で行われたとの証言もあり、男性人質への性的加害事例も記録されている。
公開版は集まった資料の一部に過ぎず、死者の尊厳や生存者への配慮、司法的観点に加え、公表できないほど残虐・暴力的な内容であることなどから、非公開となった証言や事例も多いという。委員会は「否定論者に否定の余地を与えないレベルでの証拠収集が必要だった」と報告書作成の意義を説明しており、将来的な裁判資料としても使用される予定。
(5/12)

◯ 内政

【モサド長官任命めぐり、ネタニヤフ首相「国防の権限は私のみ」】(Y,P,H)
ネタニヤフ首相が陸軍のゴフマン司令官を新モサド長官へ任命したことを受け、市民団体などが任命取り消しを最高裁へ請願している問題でネタニヤフ氏側が裁判所へ書面で回答した。
そこでは「国家安全保障をナビゲートする法的・民主的権限は首相のみに委ねられている」と述べ、自身による任命の正当性を主張。また専門家委員会による否定的見解に対して、「安全保障や戦略的観点を欠いている」と批判した。
ゴフマン氏任命をめぐっては、諜報機関での経験不足や側近だったネタニヤフ氏との近さによる「モサドの政治化」への懸念に加え、過去に未成年者を違法に軍事作戦へ関与させたなど倫理的問題からも反対の声が各方面から上がっている。実際に現モサド長官やザミール参謀総長は否定的立場を示している。
一方で今回最も議論を呼んでいるのは、ネタニヤフ氏が「安全保障に関する権限は首相のみにある」と主張した点だ。この論理を適用するなら、10月7日の歴史的失敗についても首相本人がまず責任を負うべきだとなり、それに対して批判の声が上がっている。
軍・諜報機関トップは刷新されているなか政権側は10/7以前と変わっておらず、イスラエルメディアは今回の主張を皮肉交じりに報じている。
(5/8)

 

【稀有な与野党協力、10/7テロリストの特別法廷法案が可決】(Y,P,H)
国会は11日夜、10/7の虐殺を実行したハマス・ヌフバ部隊を含むテロリストらを裁く特別裁判に関する法案の第2・第3読会を行い、賛成93・反対0の全会一致で可決した。これにより400人以上に及ぶ、10/7に殺人・強姦などを行ったテロリストに対する裁判が近く正式に開廷されることとなる。
この法律によると、エルサレムに特別軍事法廷が設置され、ベエリやノバ音楽祭会場など、虐殺が発生した場所ごとに裁判が行われる予定。証拠資料として、現場から採取された法医学的証拠、取り調べ記録、テロリストのボディカメラ映像に加え、ガザ地区で国防軍が押収した資料などが用いられ、3人の裁判官によって判決が下される。
この法案で特筆される点の1つは殺人だけでなく組織的な強姦行為についても死刑判決を可能な点。これはルワンダなどにおける組織的強姦が民族浄化やジェノサイドなど「人道に対する罪」と認定されてきた国際法上の考えを背景としている。また同裁判により死刑判決を受けた者や死刑対象の罪で起訴された者は今後のテロ組織との人質・囚人交換が行われる場合でも釈放できないことも明文化されている。
同法案は与野党議員による共同提案であり、司法改革をめぐって激しく対立するレビン法相とミアラ検事総長も専門的観点から法整備に関与した。与野党がそろって賛成票を投じるなど、国内分裂が深まる近年のイスラエル政界では極めて珍しい一致となり、メディアは「与野党間での珍しい共同作業」と報じている。
(5/12)

 

【国会解散が早期化か 焦点はやはり超正統派の兵役免除】(Y,P,H)
ネタニヤフ首相が超正統派の兵役免除法案成立に向けた動きを進めていないことを受け、超正統派政党が連立離脱と国会早期解散をちらつかせ、圧力を強めている。背景には兵役免除に反対する与党内の声や右派の支持者離れへの恐れがあるとみられている。
そんななか12日に超正統派の間で影響力を持つラビが「ネタニヤフへの信頼を失った。国会の即解散へ動くべきだ」と発言。超正統派にとって兵役免除は最重要課題であり、有力議員からも「兵役免除が進まなければ、国会で行うことはない」との声が上がった。
これを受け同日、野党は来週の議題として国会解散法案を提出。翌13日夜には、与党側も解散法案を提出し、総選挙の主導権争いが始まっている。与党案では総選挙日が明記されておらず、成立後に国会委員会が決定する形。与党側は有利なタイミングで選挙を行いたい思惑とみられている。
メディアではイラン戦争をめぐる軍事・外交成果のため時間を稼ぎたいとの見方がある一方、10/7から3年となる10月の選挙実施は自身の責任論に直結しかねず、避けたいとの分析も出ており、与党側が望む選挙時期をめぐる報道は錯綜している。
(5/12-14)

◯ 国際情勢

【イランが米案を拒否、「交渉決裂」報道も休戦延長か】(Y,P,H) 
イランは10日、ウラン濃縮の長期間停止(報道によると20年)や濃縮ウランの譲渡、核関連施設への厳格な使用制限などを盛り込んだアメリカ側の新たな休戦案にパキスタンを通じて回答を行った。
イラン側の回答は対案の形を取っているものの、数時間後にトランプ大統領は自身のSNSで、「(イランの回答は)好きではないし、とても受け入れられるものではない!」と投稿し、拒否する姿勢を鮮明にした。これにイラン側も体制系メディアを通じ、「トランプの反応は何も影響しない。彼が満足ではないのはとても良いこと」と反論しており、双方による舌戦が続いている。
その後、回答内容が徐々に報じられ、イラン側は一定の濃度制限や査察受け入れには応じる姿勢を示す一方、自国内でのウラン濃縮活動や主要核施設の維持について譲歩しない立場であることが明らかになった。また、今後アメリカがイラン攻撃や経済制裁を再開しない保証も求めており、特にウラン濃縮問題は米側が受け入れ困難な内容となっている。
これを受け、イスラエルメディアは「交渉決裂は決定的」と報じる一方、米イ双方とも戦闘再開を望んでいない点は一致していると分析。そのため、トランプ氏が訪中を予定している14日までには、何らかの形で休戦延長が発表されるのではないかとの見方も出ている。
(5/10-11)

 

【UAE・サウジ、イランへ報復攻撃していたことが判明】(Y,P,H)
アメリカの複数メディアは3月末と4月初めにイランから攻撃を受けていたUAE・サウジアラビアが報復攻撃を行っていたと報じた。
3月末にはサウジ空軍が標的場所は報道されていないが複数回の空爆を実施し、その後は外交的調整で緊張関係は緩和されたという。以前からより反イラン色を強く示していたUAEも4月初めにイランへ報復攻撃を実施。ラバン島の石油精製施設が標的となり、大規模火災によって機能停止したと伝えられている。イランはその直後にUAE・クウェートへ反撃を実施。
アメリカはUAEの攻撃を把握しており、水面下では歓迎していたと言われている。イスラエルはこれまで、サウジやUAEなど湾岸諸国にイラン攻撃への直接関与を求めていたが、各国は静観姿勢を取っているとされていた。しかし実際には軍事行動を行っていたことが判明した形であり、イスラエルメディアは湾岸諸国の対イラン政策に変化が見られると、一定の評価を示している。
(5/11-12)

 

【バルサ優勝パレードで、ラミン・ヤマル選手がパレスチナ旗を振る】(Y,P,H)
10日にスペイン・サッカーのラ・リーガ連覇を決めたバルセロナが11日に本拠地バルセロナで優勝パレードを行った。
このパレードには前日の試合こそ欠場したものの優勝に大きく貢献した世界的スター選手ラミン・ヤマルも参加。沿道には巨大なパレスチナ旗を掲げたサポーターもおり、ヤマルがその旗を受け取り振る様子が大きく取り上げられた。
この行為はイスラエルやユダヤ人のバルササポーターから反発を呼び、14日にクラブ側は「一部サポーターに不快感や失望を与えたことは理解している」とコメント。そのうえでクラブとしての政治的メッセージではなく、その場の雰囲気の中で起きた行動だったと釈明した。
しかしこれに対して日頃から親パレスチナ的立場を示しているスペインのサンチェス首相が反応。「数百万人のスペイン人が共有するパレスチナへの連帯感をラミンは表現した。彼を誇りに思うもう1つの理由だ」と自身のSNSに投稿し、パレスチナ連帯への支持を改めて示した。
この一件を受け、イスラエルのSNS上ではバルサファンたちがヤマルのユニフォームを捨てる動画や投稿が拡散されるなど、余波が広がっている。
(5/11,14)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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