ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【ヒズボラが休戦違反を継続 イスラエルは大規模報復、イランは海峡封鎖で圧力】(Y,P,H)
19~20日の週末、イスラエルとヒズボラの間では休戦合意が発効したものの、その前後に双方の攻撃が一時的に激化した。
発端となったのは18日深夜、南レバノンのボーフォート城近くに設けられた「安全ベルト」で発生した攻撃。ヒズボラの攻撃が機甲旅団の戦車に命中し、中佐に相当する旅団司令官を含む4人の兵士が戦死。さらに数時間後には無人攻撃機が駐留部隊付近に着弾し、重傷者1人を含む5人が負傷した。米イラン間の休戦延長合意後もこのようなヒズボラによる攻撃が続き、司令官級を含む犠牲者が出たことから、国防軍は報復として南レバノンのヒズボラ拠点約100か所への空爆を実施した。
こうした戦闘が、南レバノンのヒズボラ拠点ナバティエを見下ろすアリ・タヘル丘陵周辺で続く中、19日昼にはアメリカが同日午後4時からのイスラエル・ヒズボラ間の休戦合意を発表した。しかし休戦発効後もヒズボラによる攻撃は継続。イスラエル側によると、19日夜から20日朝にかけて50機以上の無人攻撃機が駐留部隊に向けて発射された。そのうちの1機は諜報任務も担う特殊部隊「マグラン部隊」の兵士らの近くに着弾し、22歳の兵士が死亡した。
これを受けて国防軍はさらなる報復攻撃を実施。19日から20日にかけてヒズボラ拠点計300か所を攻撃し、約100人のテロリストを排除、数十人を拘束したと発表した(ここには19日午後4時以前の戦闘も含まれている)。一方、ヒズボラは111人の死亡を、レバノンメディアは30人の死亡を報じているが、双方の数字には大きな開きがある。また死亡者の内訳についても詳細は明らかにされておらず、戦闘員と民間人の比率は分かっていない。
こうした合意後の衝突もヒズボラによる攻撃を発端としているのだが、イランはイスラエルによる報復攻撃のみを「休戦違反」だと主張し、圧力措置として20日午後にホルムズ海峡の再封鎖を宣言した。また「今夜にもイスラエルへ弾道ミサイル攻撃を行う準備がある」と警告し、緊張が高まった。報道によると、世界経済へ影響を与える海峡の封鎖宣言を受け米政府は、イラン側に「イスラエルはこれ以上大規模空爆を行わない」と伝達し、イスラエル側にも報復攻撃の停止を求めたとみられている。
その数時間後、イスラエル政府は国防軍にヒズボラ攻撃の停止を命令した。イスラエル高官は「ヒズボラからの攻撃があれば、我々も力強く対応する。この原則は変わらない」と述べている。しかし今回の一連の動きは、イランがヒズボラ戦線を対米交渉やホルムズ海峡問題と結び付けることに成功したことも示している。今後はイスラエルがヒズボラへの報復攻撃を行うたびに、イランがホルムズ海峡封鎖という形で対抗圧力を加える構図が生まれる可能性があり、イスラエルにとって新たな戦略的制約となりつつある。
(6/19-20)
 
【日本を愛する元人質、性的暴力被害を証言 国連を批判】(Y,P)
19日の「紛争における性的暴力根絶のための国際デー」を前に、イスラエル大統領府がノバ音楽祭で拉致され約700日以上人質となっていた、ガイ・ギルボア=ダラルさんへの英語でのインタビュー映像を公開した。この背景には、先月国連がハマスによる人質に対する性的暴力は証明できないとの姿勢を示していたこともある。
ギルボア=ダラルさんは、「性的暴力の被害者を励ますためにも、自分には声を上げる使命があると感じている」と語ったうえで、「本来なら私たち被害者は守られるべき存在だ。しかし私たちの証言は信じてもらえない。国連は信用できない」と厳しく批判した。またインタビューでは、拘束中に目隠しをされた状態で服を脱がされ、身体の様々な場所を触られたほか、首や背中にキスをされたと証言。その体験をミハル・ヘルツォグ大統領夫人に対して語っている。
ギルボア=ダラルさんは日本文化への関心でも知られ、拉致当日も着物風の衣装でノバ音楽祭に参加し、ガザへ。拘束期間中には家族が来日し人質解放を訴える活動を行ったこともあり、本人も近く日本訪問という夢を実現したいと考えているという。
(6/18-19)
 
【シンベト新長官、エイラットでの「10/7型攻撃」の可能性を警戒か】(Y,P,H)
現地主要メディアは22日、シンベト(国内治安機関)のズィニ新長官が非公開の会合で行った発言について一斉に報じた。報道によるとズィニ氏は、エイラットが南部最大都市ベエルシェバから約240キロ離れていることに加え、エジプトとヨルダンに挟まれ、陸路だけでなくエイラット湾を通じた海上からの侵入も可能であることなどを挙げ、「10月7日のような越境テロ攻撃を受けやすい条件にある」との趣旨の発言を行ったという。
これに対しシンベトは、「エイラットやその周辺に対する具体的な脅威や警戒情報が存在するわけではない」とコメント。有識者からも、実際に攻撃計画が確認されているわけではなく、一般的な地理的条件から導かれた評価に近いとの見方が示されている。
しかしその一方で、約2週間前にはヨルダン側から小型艇が高速でエイラット方面へ侵入する事案が発生した。この越境行為はパトロール中の海軍艦艇によって阻止されたが、その後の調査で侵入してきたのは無人水上艇だったことが判明している。治安当局は、この事案がテロ組織によるイスラエル側の警戒態勢や海上配備状況を探る目的だった可能性もあるとみており、今週にはエイラット湾周辺で国防軍による大規模演習が実施される予定となっている。
(6/22)
 
【イスラエル・レバノン協議 南レバノン撤退を巡り平行線】(Y,P,H)
23日から3日間にわたり、アメリカ国務省の仲介でイスラエルとレバノンの協議が行われたが、最大の問題である南レバノンに関しては大きな進展がないまま終了した。
最大の争点となったのは、イスラエル軍の南レバノンからの撤退時期と方法だ。アメリカは、イスラエル軍が設けた「安全ベルト」をレバノン軍へ順次引き渡していき、ヒズボラのいない南レバノンを実現する試験的な枠組みを提示している。イスラエルは、ヒズボラの武装解除が完了した地域から段階的に撤退する考えを示し、ヒズボラの武装解除前の全面撤退には断固拒否する姿勢を維持している。
ネタニヤフ首相やカッツ防衛相も今週、「アメリカから圧力があっても南レバノンからは撤退しない」と繰り返し強調。一方レバノン側は、自国内からのイスラエル軍撤退が最重要事項だと考えており、両国ともヒズボラ排除の必要性では一致しているものの、両者の間には優先順位において大きな差が見られる。双方はそれぞれ引き渡し計画を記した地図を提出したものの、引き渡す地域や時期を巡る隔たりは大きく、関係者によると今回の協議は「非常に緊張したもので、これまで4回の協議の中でも最も厳しい内容だった」という。
背景には、アメリカへの不信感もある。イスラエルでは、米イラン間の覚書にレバノン問題が盛り込まれたことで、対ヒズボラ作戦が制約されるようになったとの不満が強まっている。一方レバノン側でも、自国に関する事項が事前説明もなく米イラン合意に組み込まれたことへの反発があるという。それでも双方は交渉継続では一致しており、仲介役を務めるルビオ国務長官は、「南レバノンの引き渡しに向けて前進している」との認識を示している。
(6/23-25)

◯ 内政

【兵役逃れの若者逮捕に抗議 超正統派が全国で低速走行デモ】(Y,P,H)
24日に国内最大級の超正統派宗派が中心となり、兵役逃れで拘束されている超正統派の若者たちの即時釈放と、超正統派への兵役免除継続を求める大規模な抗議活動が行われた。数千人が参加し、エルサレムやブネイブラクなど全国19都市で車列を組んで軍刑務所へ向けて低速走行を実施。主要幹線道路では約5時間にわたり深刻な交通渋滞が発生し、国内の交通網が麻痺した。
エルサレムでは超正統派政党の党首が車列を先導し、ブネイブラクでは市長も参加するなど、ここ最近の抗議活動の中でも最大規模となった。またエルサレム郊外では渋滞中に妊娠中の女性が交通事故に遭い救急搬送されたほか、中央部ではデモ参加者の超正統派男性がゴムホースをバス乗客に向かって振り回す場面も見られた。さらに各地では、デモ隊と兵役の平等を求める世俗派との衝突も発生した。
デモ主催者は、「超正統派の声に耳が傾けられなければ、さらなる『サプライズ』を考えている」と述べ、今後さらに大規模な抗議活動を行う可能性を示唆している。
(6/24)

◯ 国際情勢

【ヨーロッパで続く反ユダヤ的事例:独では暴行、伊では首長に脅迫状】(Y,P)
21日午後、独ベルリンで家族と歩いていた48歳の正統派ユダヤ人男性に対し、31歳の男が暴行を加える反ユダヤ主義的事件が発生した。証言によると、男はキッパを着用していた宗教的なユダヤ人一家を追い回しながら反ユダヤ的な言葉を浴びせ、その後、男性と2人の子どもの顔に唾を吐きかけたうえ、男性の顔を殴るなどの暴行を加えたという。通行人が介入したことで事態は収束し、容疑者はその場で現行犯逮捕された。
一部報道によると、被害者は超正統派のラビであり、ユダヤ教の食事規定を監督する立場の人物だったとのこと。また容疑者の身元は公表されていないが、アラブ系だったとも報じられている。

また同週末には、イタリア北部の町ヴァラッロで、市長に対して「Fuck Israel」と書かれた脅迫状と実弾が送り付けられる事件も発生した。過疎化に苦しむ同町では2023年以降、主にイスラエル人を対象とした移住プロジェクトを進めており、現在までに約70世帯が移住している。市長はこれを地域活性化につながっていると評価しているが、これに反発する「反シオニズム運動」を名乗る団体が、「これ以上ナチス・シオニストの移住を許さない。実際に発砲する前の最後の警告だ」と記した手紙と実弾を送り付けたという。この団体の詳細は明らかになっておらず、イタリア当局は差出人および組織の特定に向けて捜査を続けている。
(6/21-22)
 
【豪反ユダヤ事件、ビデオチャット映像は証拠採用されず】(Y,P,H)
昨年2月にオーストラリアへ移住したアラブ系の男女2人が、ビデオチャットでイスラエル人インフルエンサーに対し反ユダヤ的・殺害を示唆する発言を行った事件の裁判で、シドニー地方裁判所は23日、被害者側が録画したチャット映像を証拠として採用しないと判断した。裁判所は、ニューサウスウェールズ州では同意なく会話を録音・撮影することが原則禁止されていると指摘し、映像の証拠価値が違法な取得方法を上回らなかったと判断した。2人は当時シドニー市内の病院に勤務していたが、チャット上で相手がイスラエル人だと知ると、「お前は殺され地獄へ行く」や「病院に来るイスラエル人患者は治療せず殺してやる」などと発言。この様子は相手側によって録画されSNSで公開されると世界的な反響を呼び、2人は2年間の職務停止処分を受けたほか、脅迫罪やヘイトクライム容疑で起訴された。今回の判断は映像の証拠能力に関するものであり、裁判自体は今後も続けられ、判決は8月にも言い渡される予定となっている。
(6/23)

◯ 文化

【人気ドラマ『ファウダ』、10月7日描く回に作者が異例の配慮】(Y)
Netflixでも配信され世界的な人気を集めているイスラエルのドラマシリーズ『ファウダ -報復の連鎖-』の最終シーズンが、現在イスラエル国内で放映されている。その中で10月7日の虐殺事件を扱った回について、作者が「視聴する気になれない人は見なくてもよい」と異例の呼び掛けを行っている。問題となっているのはシーズン5の第7話と第8話で、10月7日の虐殺に関して描かれている。
イスラエルでは今なおトラウマを抱える人々が多いことから、「メインストーリーの理解には影響しないため、見たくない人は飛ばしても構わない」と説明した。
『ファウダ』は、イスラエルの対テロ潜入部隊に所属するドロンらを主人公とし、テロリスト側と特殊部隊側の双方が愛する者を失いながら報復の連鎖に巻き込まれていく姿を描く、人気シリーズ。2022年のシーズン4以降、新作の制作は長らく途絶えていたが、今回の最終シーズンでは10月7日の遺族たちがドロンらと共に家族を殺害したテロリストの特定を進め、復讐を試みる姿が描かれている。
作者はこのシーズンについて、「深い畏れ(原文では『神聖な畏れ』)を抱きながら執筆と撮影を行った」と語っており、イスラエルに今なお癒えない傷を残している出来事を映像化することへの葛藤を明かしている。
(6/21)
 
【W杯のイラン代表:ロッカールームのメモに、国歌斉唱時のイラン人からのブーイング】(Y)
16日のニュージーランド戦に続き、21日のベルギー戦でも引き分けたイラン代表について、イスラエル大手メディアはピッチ外での様子を伝えている。
まずはベルギー戦後に、イラン代表がロッカールームに残したメモ。「私たちはLAにプライドとともに乗り込み、名誉をもって競技を行い、尊厳と共に後にする。平和・リスペクト・友情が全ての国々で勝利するように」と記されていたが、その中央には「ミナブ168」との言葉も添えられていた。これは2月の米軍空爆で死亡したとされる女子児童168人を指し、現在では現体制により反米的メッセージの象徴として、プロパガンダ的に使われているものになる。イラン代表も今大会でこれをスローガンとして掲げており、イスラエルメディアは「政治を超えたスポーツ」という美談ではなく、政権によるスポーツの政治利用と分析している。
またイスラエルでは、ここまでの2試合が約70万人のイラン系住民が暮らすロサンゼルスで開催されたことにも注目。現体制を逃れて移住した人々も多いことから、スタジアムでは革命前のパーレビ王朝時代の国旗を掲げるイラン系サポーターの姿が目立った。また国歌斉唱時にはブーイングや背を向ける抗議行動も見られ、現体制に反対するイラン系住民とロサンゼルス在住のイスラエル人が、それぞれの国旗を持って仲良く観戦する様子も報じられている。ちなみにイスラエルではイラン代表の試合も生中継されており、放送内では選手たちへの賛辞も惜しまれていない。こうした報道からは、イスラエル社会の中で「対立しているのはイラン国民ではなく現体制である」という認識が一定程度共有されている様子もうかがえる。
(6/22)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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