【パレスチナ人の生後7カ月の乳児が銃撃で死亡、国防軍が兵士の取り調べ開始】(Y,P,H)
5日夕方西岸地区ヘブロンで生後7カ月のパレスチナ人の乳児が国防軍の発砲を受けて死亡する事件が発生した。
軍によると当時現場周辺では軍事作戦が行われており緊張が高まっていたなか、乗用車が部隊に向かって速度を上げて接近したため、兵士の1人が身の危険を感じて発砲したという。しかしその後の調査で死傷したのは一般市民だったことが判明。軍は遺憾の意を表明するとともに本格的な調査を開始した。
パレスチナの報道によると、車にはベツレヘムの大学講師の男性と妻、2人の子供と男性の母親が乗っていた。母親の証言では発砲は近距離から行われたもので、運転していた男性は危害を加える意思がないことを示すため車を停止し両手を上げていたという。しかし発砲は続き、そのうちの1発が男性の手をかすめた後、後部座席にいた妻と乳児に命中したと主張している。
また兵士たちが発砲後に車内を確認せず現場を離れたことや救急への通報も行われなかったことに疑問を呈している。これに対し軍は現場にいた部隊の規模では周辺住民による暴動などに対応できず、安全上の理由から撤退したと説明。
しかしその後、関与した部隊の行動や発砲した兵士が置かれていた状況、他の兵士も同様に危険を感じていたかなどについて初期調査が実施された。その結果を受け、7日には発砲した兵士への正式な取り調べが開始されると決定した。
(6/6-7)
【中央内陸部で連続銃撃テロ、50代の予備役兵が死亡、5人が重軽傷】(Y,P,H)
7日午前、中央部の西岸地区との境界線付近にあるユダヤ系とアラブ系の自治体が混在する地域で、地元在住の21歳のアラブ系市民による連続銃撃テロが発生し、1人が死亡、5人が負傷した。
テロリストは盗難車に乗り、約7km離れた交差点の休憩施設に侵入。ガソリンスタンドとその周囲にいた市民に発砲し、男性2人にそれぞれ重傷と軽傷を負わせた。その後逃走し、約4km離れたユダヤ系自治体の道路上で男女2人を銃撃して軽傷を負わせた。
さらに隣接する別の自治体へ向かう国道上で男性2人を銃撃。町の防衛任務に就いていた55歳の予備役兵が致命傷を負い、その後死亡が確認された。男性は妻と3人の娘を残して亡くなり、地元自治体は追悼声明の中で救助に向かう途中で銃撃を受けたとしている。
その後、治安部隊による追跡作戦が行われ、銃撃戦の末にテロリストは排除された。捜査の結果、容疑者には銃器や薬物に関する前科があったことが判明。また警察は協力者1人を逮捕するとともに銃器と盗難車の入手経路や関係者についての捜査を現在続けている。
(6/7)
【後にイランとの交戦の引き金に、空軍がダヒヤ地区を空爆】(Y,P,H)
米仲介による休戦合意成立後、国防軍は7日、ヒズボラの本拠地であるベイルート・ダヒヤ地区への空爆を実施した。休戦成立後では初の首都空爆となる。
この攻撃は、同日ヒズボラが北部国境地帯にロケット弾攻撃を行ったという休戦違反を受けて実施されたもので、イスラエル側は事前にアメリカへ通知していた。レバノンメディアは甚大な被害が出たと伝えているが、標的となったのはヒズボラ高官ではなく、同組織の司令部として使用されていたアパートの一室。また空爆当時、その部屋にはテロリストはおらず無人だったと報じられている。
先週、ネタニヤフ首相とカッツ国防相は「北部自治体への攻撃に対してはダヒヤ地区への空爆で対応する」と明言していた。イスラエルメディアは今回の攻撃について、この方針が単なる威嚇ではないことを示し、ヒズボラへの牽制を目的とした象徴的な作戦だったと伝えている。
これを受け、イラン側は「シオニズム政権に痛みを伴う報復を行うため、今夜は占領地の空を見ておくがよい」と警告。実際、この日の夜にはイランからの弾道ミサイル攻撃が行われた。
(6/7)
【約1日のイランとの交戦―イスラエルの戦略に大きな損失か】(Y,P,H)
7日日中にイスラエルへの攻撃を示唆していたイランが同日夜、弾道ミサイル約10発を発射し、北部空軍基地で被害が確認された。
この攻撃を受けてイスラエルは大規模な報復攻撃を実施しようとしたが、深夜にトランプ大統領とネタニヤフ首相が電話会談。イランとの休戦交渉継続のためトランプ氏は空爆に反対した一方、ネタニヤフ氏は報復攻撃を主張し、両者の意見は平行線をたどった。最終的には、限定的かつ象徴的な攻撃に留めることで折り合いが付き、国防軍は翌8日未明、イラン国内の防空システムやミサイル関連施設など9カ所への空爆を実施した。
翌日もイランやフーシ派によるミサイル攻撃が続いたが、午後にはトランプ氏の呼びかけを受けてイランが「イスラエルがレバノンへの攻撃を停止するならば、イランも攻撃を停止する」と発表。トランプ政権による圧力を受けてイスラエルも攻撃停止に同意し、1日弱で交戦は収束した。
今回についてイスラエルメディアは「方程式の戦争」だったと分析している。イスラエルは「ヒズボラの北部への攻撃→ダヒヤ地区への空爆」という抑止のための方程式をヒズボラに提示しようとした。ところがイランがミサイル攻撃により、「レバノンへの空爆→イランからイスラエルへのミサイル攻撃」という新たな方程式を示したことになる。そして米の圧力のもと、事実上この方程式を受け入れた形に。
その結果、今後ヒズボラが北部を攻撃した場合、イスラエルは単に報復攻撃だけを考えれば良い状況ではなくなった。報復攻撃がイランからの攻撃を招く可能性に加え、イランとの休戦維持を重視する米から軍事行動の自制も求められる可能性も高まったためだ。対ヒズボラ作戦を比較的自由に行えていた従来の環境からは大きな変化となる。
ある分析はトランプ氏の要請によりイスラエルが十分な報復攻撃を行わずに交戦を終えたことは異例であり、危険な前例となったと指摘。またイランが上記の新たな「方程式」を提示し、レバノン戦線とイラン戦線を結び付けることに成功した点についても厳しく批判した。
この背景にはイスラエル安全保障の基本原則がある。国土も人口も小さいイスラエルは複数の戦線で同時に全面戦争を行うのを避け、一つの戦線に戦力を集中させ対処してきた。中東戦争から現在まで、「戦線の分離」は軍事戦略の根幹とされている。
そのため今回、イスラエルがヒズボラへの抑止を強化しようとした結果、逆にレバノン・イランの戦線が結び付いたことは安全保障という大局的な視点からは大きな後退となる。
(6/7-8)