ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【イランの脅威続く、暗殺計画と核関連施設再建に警戒】(Y,P,H)
10・11日も米イラン情勢を巡りイスラエルに関係する報道が相次いだ。10日に米メディアはイランがトランプ大統領暗殺を計画しているとの情報をイスラエルの諜報機関が入手し、米政府へ伝えていたと報じた。
これは2024年に続く暗殺計画とされ、米情報機関も別ルートから同じ情報を把握していたことから、計画の信憑性を裏付ける材料と受け止められている。この情報を受け、トランプ氏はカタールから提供された新型機ではなく、防御性能がより高い旧型の大統領専用機「エアフォースワン」でNATOから帰国したよう。
翌11日にはハッカビー駐イスラエル米大使もイスラエルから情報提供があったことを認めている。一方、米政府内には「イスラエルが対イラン政策への影響力行使を狙ったのではないか」との見方もあるが、イスラエル側は安全保障上の連携に政治的意図はないと否定している。
同じく10日、CNNはテヘラン近郊のパルチン軍事施設の最新衛星画像を公開した。パルチンは核兵器開発に必要な高性能爆薬の研究施設とみられており、2024年と今回の戦争でイスラエル軍の空爆を受けた。衛星画像では空爆で生じた損傷を修復するだけでなく、コンクリート資材や重機を使った施設強化も確認され、米シンクタンクは「再構築が進められている可能性が高い」と分析している。
同様の動きはナタンツ近郊の山中地下核関連施設でも確認されている。IAEAはこの施設について繰り返し査察や説明を求めているが、イランは応じていない。
米イラン間の覚書ではイランが核開発計画の現状維持を約束していると指摘しており、パルチンでの再建は覚書違反に当たる可能性があると、この情報を受けて専門家は分析している。このようにイスラエルではイランの動きを諜報面でアメリカと共有すると同時に、核関連施設の再建が進めば、将来的に再び軍事作戦を迫られる可能性が高まるとの見方が広がっている。
(7/10-11)

 

【NYT「モサド、アフマディネジャド氏をイラン指導者に擁立計画」】(Y,P,H)
米ニューヨーク・タイムズ紙は13日、モサドが主導していたとされるアフマディネジャド元大統領をイラン新政権の指導者として擁立する計画に関する新たな詳細を報じた。
2024年に同氏はハンガリー・ブダペストで開かれた気候変動シンポジウムに出席したが、実際にはモサドのバルネア長官(当時)との極秘会談を実現するための場だったという。大学長がハンガリー政府から協力を要請されたと証言しており、翌年のイラン戦争開戦数日前にも両者は再びブダペストで接触したとされる。
外遊には革命防衛隊の監視役が同行していたが、会談は2度とも実現したとNYTは伝えている。この計画は米政府とも共有されており、モサドが接触を続けるためにイスラエルはここ数年、同氏の外遊費用なども支援していたという。
さらに今年2月28日のイラン戦争開戦時にはイスラエルがアフマディネジャド氏を国内の隠れ家へ移送する秘密作戦を実施。自宅への空爆は本人ではなく監視部隊を狙ったものでその混乱に乗じてモサド工作員が同氏を保護したという。イスラエルはクルド勢力の侵攻や国内デモの拡大に合わせ、同氏を新指導者として擁立する構想だったが、情勢は想定通りに進まず、計画は実現せず。時期や理由は明らかになっていないが、その後同氏は隠れ家を離れた。その後の安否や所在は先週ハメネイ師の葬儀に公の場へ姿を現すまで分かっていなかった。
翌14日、アフマディネジャド氏側はこれら一連の報道を全面的に否定している。
(7/13)

◯ 内政

【超正統派優遇の2法案が相次ぎ可決、兵役逃れの逮捕も一時凍結】(Y,P,H)
与党は13、14日の2日間、超正統派の要求を受け入れる形で2つの重要法案の第2・第3読会を実施した。
13日に賛成63、反対52で成立したのは「基本法:トーラー学習」。この法律は兵役や勤労などの義務を免除され、ユダヤ教の学習に専念する超正統派の存在が国家に大きく寄与しており、国の最重要事項の一つであると憲法に準ずる基本法へ明記するもの。
この背景には超正統派の兵役免除問題がある。最高裁はこれまで、超正統派の兵役免除は基本法に定められた平等原則に反すると判断してきた。しかし今回、トーラー学習が基本法によって自由や平等と同じ憲法的価値として位置付けられたことで、超正統派の兵役免除を支える強力な法的根拠が整った。
翌14日には、超正統派にとって最重要課題である兵役免除に直結する法案の採決が行われた。兵役免除を実質的に認めていた法制度が失効し、徴兵義務が生じている超正統派の兵役逃れの逮捕・勾留を一時的に凍結する法案である。野党は国防の義務は平等に負うべきとの立場から反対の立場を明確にしており、決議時には「恥だ」とのヤジが上がるなか、賛成58、反対54で可決された。
これにより、兵役逃れをしている超正統派の若い男性は少なくとも11月末までは逮捕・勾留されないこととなる。ここ2カ月ほどは兵役逃れによる逮捕が散発的に発生し、そのたびに超正統派による大規模デモで交通網が一時麻痺する事態となっていた。超正統派側は今回の逮捕凍結にとどまらず、兵役免除制度が再び法制化されるまで、デモや政治的圧力を続ける姿勢を示している。
両法案とも与党支持者の多くが反対しているため、超正統派以外の与党議員から法成立を歓迎するコメントはほとんど出ていない。またネタニヤフ首相もいずれの法案成立時にも投票には参加していない。こうした対応からは与党内にも法案や自らの支持層に対する後ろめたさがうかがえる。
(7/13-14)

 

【国会閉幕、司法改革・兵役延長などの法案が相次ぎ成立】(Y,P,H)
第25期国会は16日に閉幕したが、週前半の超正統派の優遇法案に続き、最後の2日間も賛否の分かれる法案が相次いで成立した。15日には、ネタニヤフ首相とレビン法相が4年間進めてきた司法改革の一環として、検事総長の権限を抑制する法案が賛成多数で可決された。
表向きは検事総長の「役割の再定義」だが、政府の政策への法的見解は助言にとどまり拘束力を持たないことを明確化。検事総長が政府の決定に反対した場合、政府は別の弁護人を選任でき、検事総長は審理に参加することもできなくなる。また更迭要件も緩和されるなど、政府への司法側のチェック機能を弱める内容となっている。
この法案はネタニヤフ首相が超正統派と交わした取引の一つとされ、週前半に超正統派に関する法案が成立した見返りに、超正統派各党も賛成に回ったことで可決された。
翌16日には男性の義務兵役を30カ月へ短縮せず、現行の32カ月を今後5年間維持する修正法案が可決された。2020年の法改正で予定されていた兵役短縮は10/7以降続く戦争で10万人規模の予備役が常時招集されていることや超正統派の兵役問題が未解決であることから3度目の延期となった。一方、国防軍は現在でも兵力不足が続いており、2015年まで採用されていた36カ月へ戻さなければ根本的な解決にはならないとの立場を示している。
今国会は超正統派兵役免除を支える法整備が進む一方で、現役兵の負担は維持・拡大され、「国防の平等な負担」の問題が深刻化した形で閉幕した。
(7/15-16)

◯ 国際情勢

【イスラエル政界「最大の友」リンゼー・グラハム氏死去】(Y,P,H)
米共和党の重鎮リンゼー・グラハム上院議員が11日に71歳で死去した。トランプ大統領に近い存在として知られ、イスラエルやウクライナへの支援を一貫して訴え、今回のイラン戦争でも政権打倒を含む強硬論を展開するなど、グラハム氏はイスラエルの安全保障観に極めて近い立場を取ってきた。
そのためイスラエルではネタニヤフ首相ら与党だけでなく、ラピード野党議長やベネット元首相ら野党指導者からも「イスラエルは最大の友を失った」といった追悼の言葉が相次いだ。
グラハム氏はイスラエルの安全保障をアメリカの中東政策における最重要課題の一つと位置付け、首相や大統領に加え、国防首脳ともたびたび会談を重ねてきた。2023年10月以降、アメリカ国内でイスラエル支持が低下するなかでも連帯を示すためイスラエルを訪問し、人質家族とも面会。
訪問のたびに「イスラエルにはテロ組織を壊滅させる権利だけでなく、義務がある」と述べ、ハマスやヒズボラ、そしてそれらを支援するイランの脅威を排除することが中東の安定には不可欠だと訴え続けてきた。
共和党内でも代表的な親イスラエル派を失ったことで、イスラエルでは今後、共和党内でイスラエル支持が弱まるのではないかとの懸念も広がっている。
(7/12)

 

【豪医療機関で反ユダヤ差別が常態化、有力紙が実態を調査】(Y)
オーストラリアの有力紙が医療従事者への取材を行った結果、国内の医療機関で反ユダヤ的な差別が日常的に起きている実態が明らかになった。
静脈注射で意図的に何度も針を刺したり、分娩前後の妊婦に鎮痛剤を投与しなかったり、ホロコーストや10/7を否定する発言を繰り返すスタッフの存在などが報告された。こうした状況は現地ユダヤ人社会では周知の問題となっており、多くのユダヤ人は差別を恐れて自身の素性を明かさないようにしている。
複数の証言ではこうした行為はイスラム教徒の看護師によるケースが目立ち、病院の規定回数を超える穿刺や帝王切開後の女性が鎮痛剤も処置も受けられず出血したまま放置されていた例も報告されている。
また、ユダヤ人の医療従事者や医学生も同僚や学友から暴言やいじめ、疎外を受けた経験があると回答した。しかし、将来への影響を恐れ、大学や病院へ訴えることなく泣き寝入りしているという。
オーストラリアでは昨年2月、シドニーの病院勤務の看護師がビデオチャットでイスラエル人に反ユダヤ的暴言を浴びせた事件が大きな問題となった。今回の調査はその事件が例外ではなく、医療現場に反ユダヤ的風潮が広く存在する可能性を示すものとして受け止められている。
(7/12)

 

【米イラン空爆再開で給油機受け入れに摩擦、米軍がイスラエルへ抗議】(Y,P,H)
アメリカがイランへの空爆を再開する中、交通省は14日ベングリオン国際空港での米軍給油機の受け入れについて合意済みの1日20機を超える運用は認めない方針を発表した。夏の旅行シーズン中に米軍機の利用が増えれば、約5万人に影響が及ぶとの懸念によるものだが、米軍はイスラエル軍へ抗議している。
現在、ベングリオン空港には33機の米軍給油機が待機している。停戦後は空軍基地へ移すことで両国は合意していたが、アメリカが先週からイラン空爆を再開したため、利便性の高い同空港を引き続き使用。
民間空港であることから交通省は受け入れ制限を表明したが、これにアメリカ中央軍はイスラエル軍へ直接抗議。軍関係者は「アメリカ側は激しく怒っている」と明かしている。別の軍関係者は、「平時なら交通省の判断は理解できるが、米軍給油機は対イラン作戦に不可欠であり、必要な環境を提供すべき」と理解を示している。
翌15日、交通省は来週火曜日までに待機機数を20機まで減らし、それ以上は空軍基地を使用すると発表し、「ベングリオン空港を巡る問題は収束した」とコメントした。一方、防衛省は交通省の発表は最終決定ではないとし、最終判断はネタニヤフ首相が下すとしている。
(7/14-15)

 

【英国国教会、親パレスチナ神学文書への関与を決議】(Y,P)
英国国教会は13日の教会総会でパレスチナ人クリスチャン指導者らが執筆した「ジェノサイド時代における信仰」など、政治的主張が極めて強い神学文書について、「パレスチナ人クリスチャンの生きた経験からの心のこもった表現」と位置付け、教職者・信徒を問わず教会全体でこれらの文書に触れ、関わりを持つことを求める決議を賛成多数で可決した。
これらの文書は2023年以降のイスラエル軍のガザでの軍事作戦を「ジェノサイド」と位置付け、10/7の虐殺についてもハマスの責任には言及せず、イスラエル建国以降の政策やガザ封鎖の結果だと主張している。イスラエルへのボイコットや経済制裁を呼び掛けるほか、クリスチャン・シオニズムを「人種差別・植民地主義・民族的優越主義から生まれたもの」と批判している。
このような内容から審議の際には慎重論も出され、カンタベリー大主教は「耳を傾けることは全てに同意することを意味しない」と説明。神学的拘束力をより伴う「受け取る」との表現を「耳を傾ける」などに修正した上で採決が行われ、司教では全会一致、全体でも圧倒的多数の賛成で決議は可決された。
文書がミサや祭儀で使用される予定は現時点ではなく、主に教職者教育などで活用される見通しだが、「教会の全てのレベルで」との明記があることから信徒向け勉強会などでも扱われる可能性がある。イスラエルのメディアからは英国で反ユダヤ主義を助長・正当化する結果になりかねないとの懸念も示されている。
(7/13-15)

◯ 文化

【安息日に営業する新カフェ、エルサレムの宗教対立の象徴に】(Y,P,H)
ここ2週間ほどエルサレム中心部に先月オープンしたカフェ「カフェ・バスィムタ(路地でのコーヒー)」が街を二分する議論を呼んでいる。
超正統派の居住地区に近く、安息日にも営業していることから、先週は数十人の超正統派が店の前で無許可の抗議活動を実施。来店客の進路をふさぎながら祈りをささげ、「聖なる安息日だ」と叫んだり侮辱的な言葉を浴びせたほか、ガラスをたたいたり屋外のテーブルを倒したりする妨害行為も見られた。これを受け、今週の安息日には数百人の世俗派住民が店を訪れ、抗議に来た一部の超正統派と口論となり、警察が解散を拒否した数人を排除する事態となった。
人口構成の変化に伴い宗教色が強まるエルサレムでは、安息日に営業するカフェやレストランが次々と姿を消し、世俗派が自分たちなりの形で安息日を過ごせる場所が減り続けている。そのため来店客からは「私たちにも自分たちの形で安息日を楽しむ権利がある」「ここに来ることでこの街が『(超正統派だけでなく)皆のエルサレム』であり続けることを示したい」といった声が上がり、このカフェが街のアイデンティティーを巡る議論の象徴となっていることがうかがえる。
超正統派と世俗派の対立構図のなか、このカフェを支持する正統派市民もおり、安息日のためコーヒーは購入できないものの、徒歩で店を訪れてオーナーやスタッフを励まし、オーナーが無料でコーヒーを振る舞う場面も見られた。オーナーのベン=ダビッドさんは「私たちは街全体の対立に巻き込まれたくない。静かなカフェとして営業を続けたい」と語り、圧力に屈しない姿勢を示している。
一方で、オーナーがメシアニック・ジューであり、このカフェが国際的な宣教団体のプロジェクトであることが宗教派メディアで報じられ始めており、今後さらに抗議や妨害が激化する可能性も懸念されている。
(7/11)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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