【カーン主任検察官をICCが解任、イスラエルの逮捕状は維持へ】(Y,P,H)
国際刑事裁判所(ICC)の特別会合が24日に開かれ、賛成82・反対13・棄権15の賛成多数で性的不適切行為を理由に休職していたカリム・カーン主任検察官解任が決定した。カーン氏は自身のもとで働くマレーシア人弁護士へのセクハラ疑惑が浮上していた。本人は一貫して否定していたが、複数の調査は「性的な不適切行為があった」と結論付けていた。
主任検察官の解任には少なくとも63カ国の賛成が必要だったが、あるイスラエル高官は加盟国に解任案支持を働きかけるロビー活動が行われたと明らかにしている。この決定を受け、ダノン・イスラエル国連大使は「カーン氏はイスラエルに政治的な魔女狩りとして逮捕状を請求すれば、世界は自身の性的犯罪を見過ごすと考えていた。しかし彼は間違っていた」と述べ、ICCの決定を歓迎した。
一方でこの解任はネタニヤフ首相とガラント前国防相に発行されている逮捕状の取り消しを意味するものではない。また、有力な後任候補のナザト・カーン次席検察官はイスラエルの他の閣僚や軍首脳にも逮捕状を請求すべきとの立場を示していることから、ICCとイスラエルとの対立は今後も続く可能性が高い。
(7/24)
【NYで連続刺傷事件、ユダヤ人男性も被害】(Y,P)
24日午後、ニューヨーク・マンハッタンで男が「アッラー・アクバル」と叫びながら通行人を襲う刺傷事件が数ブロック続き、ユダヤ人男性を含む2人が負傷した。最初に襲われたのはアジア系とみられる男性で、その後男は周辺にある正統派シナゴグへ向かいながら「イスラム教に正義をアッラー・アクバル」と叫び、キッパを着用していたユダヤ人男性の上半身を刃物で刺した。
犯行の際の発言やユダヤ人を標的としたとみられる行動からヘイトクライムの可能性が指摘されており、27日には51歳ラウル・モラレス容疑者がヘイトクライムや殺人未遂などの罪で起訴された。一方、容疑者はすべての容疑を否認している。また、ニューヨーク市警は容疑者が精神的な問題を抱えていたことを明らかにしたうえで、その精神状態と犯行との関連についても捜査を進めている。
この事件を受け、ニューヨークのユダヤ人コミュニティーでは前日にマムダニ市長がネタニヤフ首相について「ICCの逮捕状に基づく身柄拘束は司法的に不可能」としながらも「ジェノサイドを指揮した戦争犯罪人であり、ニューヨークは歓迎しない」と述べ、抗議デモへの参加を呼びかけるような発言をしていたこととの関連を指摘する声も上がっている。
一部からはこうした反イスラエル的な言動が結果としてニューヨークのユダヤ人に対する敵意や暴力を助長しているとして、マムダニ市長を批判する意見も出ている。なお、ニューヨーク市では今年上半期だけで178件の反ユダヤ主義的事件が確認されており、市内で報告されたヘイトクライム全体の55%を占めている(ユダヤ人は市人口の約10%)。
(7/24,27)
【シリア大統領、イスラエルとの「包括的和平」に言及】(Y,P,H)
シリアのシャラア大統領は26日、アルジャジーラの独占インタビューでイスラエルとの安全保障協定ならびに国交正常化の可能性について言及した。
シャラア大統領は「シリアはイスラエルとの軍事衝突を望んでおらず、それは政策上の優先事項ではない」と強調。そのうえで「私たちはイスラエルとの安全保障上の合意に向けて取り組んでいる。この合意が実現すれば、(67年以降イスラエル領となっている)ゴラン高原の権利を放棄することなく、『包括的な和平』への道が開かれるだろう」と述べた。
一方、トランプ大統領が先月、「シリアの方がイスラエルよりもヒズボラ問題に適切に対処できる」と述べ、シリア軍によるヒズボラの武装解除に期待を示したことについては否定的な考えを示した。
シャラア氏はレバノン政府と情勢安定化に向けた協議を続けているとしたうえで「レバノンの問題は必ずしも軍事的な方法で解決されるものではない」と発言。その一方で「武器の管理や国家の意思決定はレバノン国家だけが担うべきだ」とも述べ、ヒズボラの武装解除には賛成する立場を明確にした。
シリア新政権トップが公の場でイスラエルとの「包括的な和平」に言及したことで今後、安全保障協議がどこまで具体化し、ゴラン高原問題を含めた和平交渉がどこまで進展するのかが注目される。
(7/26)
【ネタニヤフ氏がトランプ大統領と会談―イ米の完璧な共闘を強調も】(Y,P,H)
米共和党の重鎮グラハム上院議員の葬儀のため訪米中のネタニヤフ首相は28日、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。トランプ政権再発足後では7度目の首脳会談となる。
イラン戦争が当初の予想に反して長期化し出口が見えない中、ここ数か月はイ米の温度差も表面化しており、それは会談直前にも見られた。トランプ氏は電話取材でイスラエルが地下核施設「ピックアックス山」におけるイランの核開発準備について説明する予定との話題に「何が起きているかは完全に把握している。ビビに言われる必要はない」と述べ、自身の対イラン政策は会談に左右されないとの考えを示した。この発言はイスラエル国内で「会談前の牽制」と報道された。
そして実際の会談では記者会見や共同声明に加え、ネタニヤフ氏が望んでいたとみられる首脳2人だけの会談も設けられず、バンス副大統領やルビオ国務長官、CIA長官らも同席する安全保障協議の形式となった。両国の戦略的連携を再確認する場となった一方、事前に注目されていたピックアックス山やイスラエルが懸念するトルコへのF35戦闘機売却問題は議題に上らなかったという。
会談後、ネタニヤフ氏は「これまでで最も良い首脳会談の一つだった」と成果を強調し、両国関係の良好さをアピール。しかしホワイトハウスは「前向きで生産的だった」と短い声明を出すにとどまり、温度差がうかがえた。米政府高官はイスラエルの諜報情報は高く評価しつつ、「イランとの再戦闘を避けられない」とするイスラエル側の分析には偏りがあり、同じ情報で外交的解決を希望しているとの結論も導けると指摘している。
イスラエルでは今回の会談について、総選挙を控えるネタニヤフ氏がイ米関係の緊密さを支持層に示せたとの評価がある一方、トランプ政権を外交路線から対イラン強硬路線へ転換させるという目的は達成できなかったとの見方も出ている。また、首脳2人の会談や共同記者会見が行われなかったこともトランプ政権がネタニヤフ氏と一定の距離を保とうとしている表れではないかとの分析も出ている。
(7/28-30)
【トランプ氏ハマスの完全武装解除合意を発表、履行は不透明】(Y,P,H)
トランプ大統領は30日、自身が主導する「ガザ平和評議会」とハマスがガザ地区内で活動する全てのテロ組織の「完全な武装解除」に合意したと発表した。トランプ氏は武装解除が実現すれば、同評議会や国際安定化部隊などと連携してガザを暫定統治するテクノクラート政権を正式に発足させることができるとして「歴史的な合意」と評価している。
しかし発表直後からイスラエルとハマス双方がそれぞれに求められている履行の前提条件を示しており、合意がどこまで現実化するかは不透明な状況となっている。イスラエル側はハマスの非武装化が完了するまでガザ地区から撤退せず、押収した兵器はテロ組織の手に渡らないよう、全てガザ地区外で処理することを求めている。一方ハマスはイスラエル軍が撤退するまで武装解除には応じず、兵器もテクノクラート政権への譲渡という形以外は認めない立場を示している。
平和協議会は武装解除とイスラエル軍の撤退を並行して進める方針だが、双方が相手の先行履行を求めており、交渉が膠着するとの見方も出ている。またハマスに詳しいイスラエル人記者はたとえテクノクラート政権が発足しても、治安部門にハマスメンバーが関与するとみられるため、その組織がハマスから武器を回収するという構図自体が非現実的であり、ハマスが保有する武器を全て引き渡す可能性は極めて低いと分析している。
ガザ市民もハマスの完全な非武装化や政権放棄、イスラエル軍の撤退が実現するとは考えにくいとの見方が大勢を占め、この合意を歓迎する雰囲気はほとんど見られない。また2年半以上に及ぶ戦争でガザの大半が瓦礫と化した現実を前に「最終的に武装解除や政権放棄に応じるならば、なぜもっと早く受け入れずガザにこれほど大きな犠牲を強いたのか」とハマスを批判する声も広がっている。
(7/30-31)