ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【ガザ武装解除合意の詳細判明、イスラエル国内では懐疑論】(Y,P,H)
前日に「ガザ平和評議会」とハマスが発表した合意について、31日に詳細が明らかとなった。しかしイスラエルでは実効性を疑問視する報道が相次いでいる。
今回公表されたのは即時に法的拘束力を持つ協定ではなく、武装解除に向けたロードマップ。イスラエルとハマス双方が正式に承認した後、14日間をかけて履行の順序や詳細な日程、不履行を含めた監視・認証の仕組みなどを策定する。
ロードマップではテクノクラート政権「ガザ行政国家委員会」のみが主権・法執行・安全保障を担い、ハマスやイスラム聖戦などの武装組織は武器を放棄し、兵器製造施設やテロ・トンネルも使用できなくなる。押収した兵器は新政権が保管し、国際安定化部隊などの国際的な枠組みが監視。
また履行は段階的に進められ、一方が合意内容を履行したことが確認された後に相手側が次の合意内容を実施する仕組みとなっている。そのためイスラエルはハマスの武装解除が実際に進んだことが確認されるまで撤退する必要はなく、ハマス側もイスラエルが軍事作戦の停止や人道支援の拡大などを実施しなければ武装解除を行う義務はない。
ハマスはロードマップを大筋で受け入れる姿勢を示している一方、武装解除の条件としてパレスチナ国家樹立へのコミットメントを求めている。しかしこれは「武装解除が実現し、テクノクラート政権の下でガザが安定化した後にパレスチナ国家樹立への外交的道筋をつける」平和評議会の構想と異なっており、イスラエルが受け入れる可能性は極めて低い。
イスラエルは先月26日の閣議でこの合意を了承したと報道されているが、押収した兵器がガザに残れば再びハマスの手に渡す可能性があるため原案に反発し、ガザ外への搬出を求めている。このように両者ともに合意を受け入れているものの条件や要件を提示しており、14日間で交渉が行われることになっているが、難航することは必至。
イスラエルの専門家からは「重火器」の定義や武装解除の認証方法、不履行時の対応など重要な項目が明記されていないことを問題視する声が上がっている。また、押収兵器は国際的な監視下に置かれるが、保管はパレスチナ側が担い、新体制の治安部門にも少なくとも一部のハマス警察官が関与すると見込まれていることから、「ハマスがハマスの武器を押収・管理する出来レースになる公算大」と実効性を疑問視する見方がイスラエル国内では大勢を占めている。
(7/31-8/1)

 

【国防軍が700トンの爆薬でヒズボラ「バドル部隊」の拠点を爆破】(Y,P,H)
南レバノンで活動を続ける国防軍は7月31日深夜、国境から約6キロに位置するボーフォート山稜の地下に築かれた巨大トンネル網を約700トンの爆薬を用いて破壊した。
この施設はイラン・ハメネイ体制の支援を受け、ヒズボラが約20年かけて建設したものでイスラエルへの攻撃を担う「バドル部隊」の司令部として機能。ロケット弾や対戦車ミサイル、無人攻撃機などの発射拠点であり、長期間の活動に必要な居住設備や大量の兵器も確認されている。
爆破に伴う衝撃波で窓ガラスが割れる恐れがあったことから、国境地域の住民には事前に窓を開けるよう呼び掛けられた。
今回の爆破は28日にヒズボラが無人攻撃機で国防軍駐屯地を攻撃したことの報復措置とされる。これまでは偵察目的のドローン飛来が中心だったが、攻撃目的の飛来は重大な停戦違反と位置付けられている。さらに翌8月1日には南レバノンでテロリストの襲撃を受け、イスラエル軍士官1人が負傷した。
現在イスラエルは制圧地域をレバノン軍へ段階的に引き渡し、レバノン軍がヒズボラの排除と国境地帯での主権回復を担うパイロット計画を進めている。しかし今回の一連の事例は「ヒズボラなき南レバノン」の実現には多くの課題が残されており、レバノン軍が解決できるかという疑問を改めて浮き彫りにしている。
(7/31-8/1)

 

【英司会者との対談でハマス高官「市民を殺害したことはない」と主張】(P)
イギリスの著名司会者ピアーズ・モーガン氏のYouTube番組に4日、ハマス高官ガジ・ハマド氏が出演した。
モーガン氏はハマド氏がこれまで10月7日の攻撃を繰り返す意向を公言してきたことを踏まえ、「そのようなハマスをイスラエルが信頼できるのか」と質問。これにハマド氏は「ハマスは解放組織であり、罪は決して犯さない。市民を殺害したことも一度もない」と主張した。
しかしモーガン氏はノバ音楽祭での虐殺やキブツで民家を一軒一軒回って住民を殺害した事例を挙げて反論。するとハマド氏は「何らかの過ちはあったかもしれない」と述べ、当初の主張を事実上修正した。
また、開戦直後にハマスは「すべての民間人の解放を提案したが、イスラエルが拒否した」とも主張した。しかしイスラエルは当初から全人質の解放を要求しており、これを拒否し続けてきたのはハマス側である。
さらに、ガザ平和評議会が提示した武装解除案について問われると困難な状況のため受け入れざるを得なかったとしながらも、「私たちのメンタリティーや目標が変わったわけではないことは保証できる」と発言した。これに対しモーガン氏が「それではイスラエルは消滅すべきだと考えているのか」と問いただすと、ハマド氏は明確な肯定・否定は避けつつも、「彼らは問題ばかりを生み出している。なぜ存在すべきなのか。世界はイスラエルの存在を再考すべきだ」と述べ、イスラエルの存在を認めない従来の立場に変化がないことをうかがわせた。
この対談の内容はイスラエルにとっては驚きではないが、イスラエル殲滅という目標を正式に撤廃せず、武力行使を含む「抵抗運動」という理念を維持したまま、ハマスが武装解除を実際に履行するかについては大きな疑問が残る。
(8/4)

 

【南レバノンで兵士2人死亡、報復は外交交渉を優先し限定的に】(Y,P,H)
国境から約6キロに位置する南レバノンの町マジダル・ズンで5日ブービートラップが爆発し、空挺旅団所属の30代の予備役兵2人が死亡した。同町はイスラエルが設ける「安全ベルト」内にあり、国防軍は駐留しながら進めていたテロ拠点や爆発物の除去作戦の最中に爆発が発生した。現在、爆発物がいつ設置されたのか、遠隔操作によるものだったのかなどについて調査が行われている。
イスラエル側は「ヒズボラによる重大な停戦違反」と位置付け、数時間後には近隣のシーア派住民が多くヒズボラの影響力が強いアル・マンスリ村に空爆や無人攻撃機、砲撃による報復攻撃を実施した。攻撃に先立ち、国防軍のアラビア語報道官は民間人被害を避けるため、住民に村から1キロ以上離れるよう避難勧告を出した。
国防軍内部では兵士2人が死亡したことを受け、より大規模な報復を求める声もあったが、政府は攻撃を局地的な規模にとどめた。その背景には現在ローマでアメリカの仲介でイスラエル軍の段階的撤退とレバノン軍による治安維持、ヒズボラの武装解除やテロ拠点の撤去に関する協議が進められていることがある。政府は外交交渉を決裂させないことを優先し、報復の規模を抑えたとみられる。
一方で今回の事例は南レバノンからヒズボラを排除することの難しさと現在の停戦が依然として極めて脆弱な均衡の上に成り立っていることを改めて浮き彫りにした。
(8/5-6)

◯ 内政

【極右閣僚ガザ合意の破棄を要求、「閣議に示された内容と違う」】(Y,P)
ハマスとガザ平和評議会が合意したロードマップの詳細が週末に公表されるとイスラエルでは極右閣僚から合意の破棄を求める声が上がっている。スモトリッチ財務相と同党所属の女性閣僚はネタニヤフ首相に文書を提出し、「閣議で説明された内容と実際の合意内容は本質的に異なっており、閣議決定は誤った情報に基づいて下された」と主張した。
両氏によると、閣議では「ハマスの武装解除が完了した後に国防軍が撤退する」と説明された一方、実際のロードマップでは武装解除と撤退が並行して進められる内容となっている。また、武装解除で押収した兵器についても、閣議ではガザ地区外へ搬出または破壊と説明されたのに対し、実際には多国籍軍の監視下でパレスチナ側が保管・警備を担うことになっているという。
こうした相違点を理由に両氏は「平和評議会の公式文書は閣議で提示された内容とは本質的に異なる」として、ネタニヤフ首相に対し、直ちに閣議を開いて合意を破棄し、「ガザが安全保障上危険な状態となることを防ぐべきだ」と求めている。
一方、ネタニヤフ首相はこの問題について沈黙を保っているが、ガザ平和評議会側は反論。関係者はイスラエルメディアに対し、「合意内容の詳細は数週間前から首相府とその管轄下にある国家安全保障会議も把握していた」と述べ、今回の問題はイスラエル国内の意思決定の問題に過ぎないとの認識を示している。
(8/3-4)

◯ 国際情勢

【トランプ氏土壇場でイラン空爆を延期、イスラエルは「戦略的問題」と懸念】(Y,P,H)
米イラン間での交戦が再開し迎えた先週末、中東各国の米大使館は在留米国民に安全保障上の警戒情報を発令し、アメリカによるイランへの大規模攻撃が秒読み段階に入ったとの緊張がイスラエルを中心とした中東全体で高まった。
複数の米主要メディアは米イスラエル両国がイランのエネルギー施設への共同空爆を準備しており、早ければ週末にも実施される可能性があると報道。トランプ大統領も攻撃を承認しており、最終的な実行命令を待つ段階だとイスラエルでも伝えられていた。イスラエル政府は沈黙を保っていたものの、軍は最高レベルの臨戦態勢に入り、報道されてはいなかったが空軍の作戦準備や予備役兵の増員・配置転換なども進められていたという。
しかし週明けの2日未明、トランプ氏は自身のSNSで「イランや中東諸国から攻撃中止の要請があった」と大規模攻撃の延期を発表。「イスラエルも私と共にこのコミットメントに加わっている」と投稿し、イスラエルもこれに同意していると説明した。ところがイスラエル側はこの決定を事前に知らされておらず、「ネタニヤフ首相やカッツ国防相すらSNSで初めて知った」とも報じられている。
攻撃延期後も政府は沈黙を守っているが、軍上層部からは「トランプ氏の度重なる方針転換は軍を消耗させ、大きな代償を生んでいる」と名指しで同氏を批判する声も出ている。イスラエルの安全保障専門家は「トランプ氏の二転三転する対応自体は驚きではない」と前置きしながらも、イスラエルの了承を得ていないにもかかわらず、「イスラエルも私と共にコミットしている」と世界に向けて発信した点を問題視している。これは事前協議や通知を欠いたというだけでなく、本来イスラエル政府自身が決定・発表すべき外交・安全保障上の方針をトランプ氏がSNSを通じて既成事実のように世界へ発信したことを意味する。
専門家はこのような対応はイスラエルを対等な同盟国ではなく、アメリカの政策に従属する存在として扱っているようにも映りかねず、イスラエルがアメリカの中東政策に対する影響力を大きく失っていることを示す「新たな戦略的問題」だと警鐘を鳴らしている。
(8/1-2)

◯ 文化

【イスラエル代表選手に「イスラエルに死を」チャント、MLSが調査開始】(Y) 
2日、MLSニューイングランド・レボリューション所属のイスラエル代表ドル・トゥルジェマン選手が敵地モントリオール戦でゴールを決めた際、相手サポーターによる反ユダヤ的なチャントの標的となった。
試合では「Free Palestine」や「イスラエルに死を」といったチャントがゴール裏の一部サポーターから断続的に浴びせられていた。そうしたなか、トゥルジェマン選手は前半36分にチーム2点目となるゴールを決めると、チャントを続けていたゴール裏のファンの前で両手を広げたり、耳に手を当てたりするパフォーマンスを披露。
このパフォーマンスは相手サポーターによる過激なチャントへの対抗措置と受け止められており、これに激怒した一部ファンがペットボトルなどを投げ込み、さらにゴールパフォーマンスを止めようとした相手選手との間で揉み合いに発展した。
MLSは「選手に対して反ユダヤ的かつ差別的な言葉が向けられたことを認識しており、両クラブと連携して調査を進めている」との声明を発表。また「メジャーリーグサッカーにヘイトスピーチの居場所はない」と強調している。
(8/2-3)

 

【超正統派向け起業支援が成果、スタートアップの生存率15倍超に】(Y)
ユダヤ教超正統派の起業家によるスタートアップを支援するアクセレータープログラム「BizLabs」の第7期修了イベントがエルサレムで開催された。同プログラムはエルサレム開発当局や超正統派の労働市場への参画を促進する団体などが2019年に開始したもの。
超正統派のスタートアップは初めて資金調達を受けた後1年以内の生存率がわずか6%にとどまっていたことから、メンターや専門家による伴走支援に加え、投資家やベンチャーキャピタル、事業会社とのマッチングを通じて事業の継続・成長を後押ししている。このプログラムに参加したスタートアップの1年後の生存率は93%と参加前の15倍以上に向上。約半数が海外進出を果たし、累計で6200万ドル(約98億円)以上の資金調達に成功するなど大きな成果を上げている。
第7期参加者の一人で2児の母でもあるシラ・カミンスキーさんは複雑な不動産登記書類から必要な情報だけを抽出・簡素化するプラットフォームを開発。「プログラム参加前はアイデアと試作品に過ぎませんでしたが、ガイダンスや人とのつながりを得たことで実際のビジネスへと発展させることができました」と振り返った。
兵役問題にも見られるようにイスラエルでは超正統派の社会参画が大きな課題となっている。超正統派男性の就業率は近年上昇しているものの、依然として約54%にとどまっており、このような就業・起業支援プログラムに期待が寄せられている。
(8/6)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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