【ガザ武装解除合意の詳細判明、イスラエル国内では懐疑論】(Y,P,H)
前日に「ガザ平和評議会」とハマスが発表した合意について、31日に詳細が明らかとなった。しかしイスラエルでは実効性を疑問視する報道が相次いでいる。
今回公表されたのは即時に法的拘束力を持つ協定ではなく、武装解除に向けたロードマップ。イスラエルとハマス双方が正式に承認した後、14日間をかけて履行の順序や詳細な日程、不履行を含めた監視・認証の仕組みなどを策定する。
ロードマップではテクノクラート政権「ガザ行政国家委員会」のみが主権・法執行・安全保障を担い、ハマスやイスラム聖戦などの武装組織は武器を放棄し、兵器製造施設やテロ・トンネルも使用できなくなる。押収した兵器は新政権が保管し、国際安定化部隊などの国際的な枠組みが監視。
また履行は段階的に進められ、一方が合意内容を履行したことが確認された後に相手側が次の合意内容を実施する仕組みとなっている。そのためイスラエルはハマスの武装解除が実際に進んだことが確認されるまで撤退する必要はなく、ハマス側もイスラエルが軍事作戦の停止や人道支援の拡大などを実施しなければ武装解除を行う義務はない。
ハマスはロードマップを大筋で受け入れる姿勢を示している一方、武装解除の条件としてパレスチナ国家樹立へのコミットメントを求めている。しかしこれは「武装解除が実現し、テクノクラート政権の下でガザが安定化した後にパレスチナ国家樹立への外交的道筋をつける」平和評議会の構想と異なっており、イスラエルが受け入れる可能性は極めて低い。
イスラエルは先月26日の閣議でこの合意を了承したと報道されているが、押収した兵器がガザに残れば再びハマスの手に渡す可能性があるため原案に反発し、ガザ外への搬出を求めている。このように両者ともに合意を受け入れているものの条件や要件を提示しており、14日間で交渉が行われることになっているが、難航することは必至。
イスラエルの専門家からは「重火器」の定義や武装解除の認証方法、不履行時の対応など重要な項目が明記されていないことを問題視する声が上がっている。また、押収兵器は国際的な監視下に置かれるが、保管はパレスチナ側が担い、新体制の治安部門にも少なくとも一部のハマス警察官が関与すると見込まれていることから、「ハマスがハマスの武器を押収・管理する出来レースになる公算大」と実効性を疑問視する見方がイスラエル国内では大勢を占めている。
(7/31-8/1)
【国防軍が700トンの爆薬でヒズボラ「バドル部隊」の拠点を爆破】(Y,P,H)
南レバノンで活動を続ける国防軍は7月31日深夜、国境から約6キロに位置するボーフォート山稜の地下に築かれた巨大トンネル網を約700トンの爆薬を用いて破壊した。
この施設はイラン・ハメネイ体制の支援を受け、ヒズボラが約20年かけて建設したものでイスラエルへの攻撃を担う「バドル部隊」の司令部として機能。ロケット弾や対戦車ミサイル、無人攻撃機などの発射拠点であり、長期間の活動に必要な居住設備や大量の兵器も確認されている。
爆破に伴う衝撃波で窓ガラスが割れる恐れがあったことから、国境地域の住民には事前に窓を開けるよう呼び掛けられた。
今回の爆破は28日にヒズボラが無人攻撃機で国防軍駐屯地を攻撃したことの報復措置とされる。これまでは偵察目的のドローン飛来が中心だったが、攻撃目的の飛来は重大な停戦違反と位置付けられている。さらに翌8月1日には南レバノンでテロリストの襲撃を受け、イスラエル軍士官1人が負傷した。
現在イスラエルは制圧地域をレバノン軍へ段階的に引き渡し、レバノン軍がヒズボラの排除と国境地帯での主権回復を担うパイロット計画を進めている。しかし今回の一連の事例は「ヒズボラなき南レバノン」の実現には多くの課題が残されており、レバノン軍が解決できるかという疑問を改めて浮き彫りにしている。
(7/31-8/1)
【英司会者との対談でハマス高官「市民を殺害したことはない」と主張】(P)
イギリスの著名司会者ピアーズ・モーガン氏のYouTube番組に4日、ハマス高官ガジ・ハマド氏が出演した。
モーガン氏はハマド氏がこれまで10月7日の攻撃を繰り返す意向を公言してきたことを踏まえ、「そのようなハマスをイスラエルが信頼できるのか」と質問。これにハマド氏は「ハマスは解放組織であり、罪は決して犯さない。市民を殺害したことも一度もない」と主張した。
しかしモーガン氏はノバ音楽祭での虐殺やキブツで民家を一軒一軒回って住民を殺害した事例を挙げて反論。するとハマド氏は「何らかの過ちはあったかもしれない」と述べ、当初の主張を事実上修正した。
また、開戦直後にハマスは「すべての民間人の解放を提案したが、イスラエルが拒否した」とも主張した。しかしイスラエルは当初から全人質の解放を要求しており、これを拒否し続けてきたのはハマス側である。
さらに、ガザ平和評議会が提示した武装解除案について問われると困難な状況のため受け入れざるを得なかったとしながらも、「私たちのメンタリティーや目標が変わったわけではないことは保証できる」と発言した。これに対しモーガン氏が「それではイスラエルは消滅すべきだと考えているのか」と問いただすと、ハマド氏は明確な肯定・否定は避けつつも、「彼らは問題ばかりを生み出している。なぜ存在すべきなのか。世界はイスラエルの存在を再考すべきだ」と述べ、イスラエルの存在を認めない従来の立場に変化がないことをうかがわせた。
この対談の内容はイスラエルにとっては驚きではないが、イスラエル殲滅という目標を正式に撤廃せず、武力行使を含む「抵抗運動」という理念を維持したまま、ハマスが武装解除を実際に履行するかについては大きな疑問が残る。
(8/4)
【南レバノンで兵士2人死亡、報復は外交交渉を優先し限定的に】(Y,P,H)
国境から約6キロに位置する南レバノンの町マジダル・ズンで5日ブービートラップが爆発し、空挺旅団所属の30代の予備役兵2人が死亡した。同町はイスラエルが設ける「安全ベルト」内にあり、国防軍は駐留しながら進めていたテロ拠点や爆発物の除去作戦の最中に爆発が発生した。現在、爆発物がいつ設置されたのか、遠隔操作によるものだったのかなどについて調査が行われている。
イスラエル側は「ヒズボラによる重大な停戦違反」と位置付け、数時間後には近隣のシーア派住民が多くヒズボラの影響力が強いアル・マンスリ村に空爆や無人攻撃機、砲撃による報復攻撃を実施した。攻撃に先立ち、国防軍のアラビア語報道官は民間人被害を避けるため、住民に村から1キロ以上離れるよう避難勧告を出した。
国防軍内部では兵士2人が死亡したことを受け、より大規模な報復を求める声もあったが、政府は攻撃を局地的な規模にとどめた。その背景には現在ローマでアメリカの仲介でイスラエル軍の段階的撤退とレバノン軍による治安維持、ヒズボラの武装解除やテロ拠点の撤去に関する協議が進められていることがある。政府は外交交渉を決裂させないことを優先し、報復の規模を抑えたとみられる。
一方で今回の事例は南レバノンからヒズボラを排除することの難しさと現在の停戦が依然として極めて脆弱な均衡の上に成り立っていることを改めて浮き彫りにした。
(8/5-6)