ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【ネタニヤフ氏はロードマップ拒絶も、ガザ内で国防軍は攻撃から『防御』へ】(Y)
ガザ地区内に駐留する国防軍についてイスラエルの複数の大手メディアが、トランプ大統領主導の15項目のロードマップに沿う形で攻撃的な軍事作戦から防御を重視する態勢へシフトしていると報じた。
複数の兵士や士官によると「黄色ライン」のハマス側で武装したテロリストが確認された場合、これまでは現場の判断で発砲・排除することが可能だったが、現在は参謀本部など軍上層部の許可が必要になったという。ただし、テロリストが黄色ラインを越えた場合や差し迫った危険がある場合には、引き続き現場の判断で発砲できるとしている。このため、通常の大規模な軍事作戦は行われず、駐留する前線基地を守ることが主な任務となり、国防軍の活動が「攻撃」から「防御」へと変化しているという。
イスラエルメディアはネタニヤフ首相が「ハマスの武装解除が行われるまで国防軍はさらなる撤退を行わない」とロードマップに対して強硬な姿勢を示している一方、ガザ現地での国防軍の活動には明確な変化が見られることを指摘。発言上はロードマップを拒絶する姿勢を示しながらも、実際の軍事行動ではその内容に沿った対応を進めているという「矛盾」に注目している。
ただこの報道のあった翌11日から3日連続でイスラエルによるハマスに対する地上そして空軍による攻撃が発生。これらに関しては、参謀本部の許可があったものや「テロ実行という差し迫った危険があたための攻撃」と説明されている。
(8/10)

 

【過激入植者がパレスチナ人住宅を「包囲」、米政府も異例の批判】(Y,P,H)
西岸地区ナブルス近郊のパレスチナ人の村クスラでここ数日間にわたり、ユダヤ人の過激な入植者たちが村のはずれにあるパレスチナ人住宅を包囲する異常事態が続いている。
発端となったのは近隣の違法入植地から数十人の若い過激入植者がこの地域に入り、クスラに隣接する形でテントを設営し、新たな違法入植地を作ろうとしたことだった。テントは3つのパレスチナ人家庭につながる道路を塞ぐように設置されたため、3世帯約10人が事実上、自宅から出入りできない状態となった。
さらに10日には、この地域に配備されている国防軍兵士が入植者たちと共に祈りを捧げる様子を撮影した映像が拡散し、イスラエル国内でも「軍が違法入植やパレスチナ住人の包囲を容認するような行為」と大きな批判を呼んだ。
12日には大規模な部隊が派遣されテントは一時的に撤去されたものの、入植者たちはすぐに再集結し再びテントを設営。さらに道路上に大きな石を置き、パレスチナ人住民だけでなく国防軍や警察管轄の国境警備隊の車両も通行できないよう妨害した。その後も、現場に駆け付けた国防軍・国境警備隊と入植者たちの間で衝突が発生しているほか、入植者側が電気や水道などのライフラインを遮断するなど、嫌がらせ行為を行っているとも報じられている。
こうした状況を受け、国防軍は12日に事態の沈静化を図るため、パレスチナ人住民に一時的な避難を要請した。これは住宅内に部隊を一時配置し、入植者に対処するという戦術上の判断だった。しかし結果として「入植者ではなくパレスチナ人を追い出した」という構図となり、さらなる国際的な批判が。そこで住民は数時間後、国防軍の護衛のもと自宅へ戻ったが、14日朝には再びテントが設営される様子が確認されており、問題は解決していない。
この事態では包囲された住宅の所有者が米国在住のパレスチナ系米国人だったため、米政府も介入。米政府はネタニヤフ首相に対して過激な入植者たちへの非難声明を出すよう要請し、在イスラエル米大使も入植者による行為を「恐ろしいテロ」と異例の強い言葉で批判した。
一方イスラエル側では、ネタニヤフ首相は支持層からの反発を懸念してか、公の場での非難を控えているものの、カッツ防衛相は過激入植者による行為を非難する発言を行っており、イ米関係に影を落としかねない問題に発展している。
(8/10-13)

◯ 内政

【北米のユダヤ人教育者をイスラエルへ、教員不足解消を目指す特別帰還プログラム】(Y,P)
北米からのイスラエル帰還を支援するNPOが教育省・帰還省と共同で北米在住のユダヤ人教育者を対象とした特別な帰還プログラムを実施すると発表した。
イスラエルの教育現場では約20年前から構造的な教員不足が続いており、7割近くの学校が教員不足を抱えているとのデータもある。特に、民間企業への人材流出などを背景に数学・理科・英語の教員不足が深刻で、十分な資格や教育を受けていない人材が教壇に立つケースもあるという。
今回のプログラムはこれらの科目を教えている北米在住のユダヤ人を対象としている。通常、帰還者はイスラエルへの移住を終えてから、教員資格の切り替えやヘブライ語習得、学校とのマッチングなどを始めるが、今回は帰還手続きと並行してこれらの準備を進め、移住直後から教員として働ける状態にすることを目指している。
このNPOは2024年から、北米在住のユダヤ人医師を対象とした同様の帰還支援プログラムも実施しており、2年間で1,000人以上の医師がイスラエルに帰還し、国内の医療現場で働き始めたという。今回の教育者向けプログラムはその成果を教育分野にも広げる試みとなる。同NPOによると、第1期生は来年にもイスラエルへ帰還し、2027年9月に始まる新年度から教壇に立つことを目標としている。
(8/6-7)

 

【ネタニヤフ氏はロードマップを拒否?実際にはイスラエルが履行か】(Y,P,H)
ガザ平和協議会とハマスが合意した15項目のロードマップについて、ネタニヤフ首相が公式の場で初めて言及した。ネタニヤフ氏は「国防軍によるさらなる撤退はハマスの武装解除が行われるまでは実施しない」と述べ、合意内容を否定するとも受け取れる姿勢を示した。
加えてネタニヤフ氏は米側と協議・連携を続けているとしたうえで「意見が一致することもあれば、受け入れられないものもある」と発言。ロードマップに記された「重火器」だけではなく、全ての銃器を含む完全な武装解除が実現しなければ、本当の意味での武装解除とはいえないとの立場を改めて示した。
最大の争点は、武装解除とイスラエル軍撤退の順序だ。ロードマップでは、1ハマスの武装解除、2統治権のテクノクラート政権への移譲、3国防軍の撤退の3段階を段階的かつ並行して進めるとしている。そのため、ネタニヤフ氏の「1が完了するまで3は行わない」という発言は文書の内容だけを見れば、ロードマップとは異なる立場となる。
しかし平和協議会側はイスラエルメディアに対し「声明ではなく、実際の履行のみに集中している」と説明。イスラエル軍は現在、もともと設定されていた「黄色ライン」の手前まで撤退し、ここ数日間は攻撃も行っていないことから、実際の行動としてはロードマップに沿っているとの認識を示している。さらに協議会側はイスラエル軍が現在のラインをさらに越えて撤退するのは、ハマスの武装解除が完了してからになるとの見方を示しており、ネタニヤフ氏の発言とは裏腹に実質的には両者の間に大きな相違はないとの姿勢を取っている。
トランプ政権もこの発言に冷静な反応を見せている。米高官は総選挙を前に劣勢が予想されるネタニヤフ氏には国内支持層に向けた「政治的パフォーマンス」が必要であることを米側も理解しており、米側が要請した内容を実際に履行しているのであれば問題はないとの考えを示した。このことは平和協議会も把握しつつ、合意を順守することにはイスラエルにとって外交的な利益があるとして、「言葉ではなく行動を一致させる方が賢明だ」との指摘も出ている。
つまりネタニヤフ氏の発言だけを見ると、平和協議会との合意を拒絶したかのようにも受け取れるが、米政府・平和協議会側も総選挙を前にしたネタニヤフ氏の国内向けの政治的パフォーマンスであることを理解している。そのため現時点では発言そのものに過剰に反応することなく、実際にイスラエルが合意内容を履行するかを注視する、という冷静な姿勢を保っている。
(8/9-10)

◯ 国際情勢

【サウジ・トルコ・パキスタンが相互防衛協定、イスラエルでは米国の中東離れを懸念】(Y,P,H)
サウジアラビア、トルコ、パキスタンの3か国は7日、メッカで相互防衛協定「メッカ合意」を締結した。詳細は明らかになっていないものの、3か国のいずれかが武力攻撃を受けた場合、それを3か国全体への攻撃とみなす集団防衛条項が中心とみられている。
経済・資源力を持つサウジ、軍事・技術力を持つトルコ、核保有国であるパキスタンというイスラム世界で大きな影響力を持つ3か国による枠組みだけに注目を集めている。この同盟を主導したのはサウジとされており、イランやフーシ派からの攻撃を受けてきた同国が今回のイラン戦争を教訓に、米国一国への軍事的依存を減らして独自の安全保障網を構築しようとしているとの見方がある。
イスラエルでは、この合意を「対イラン」と「米国への依存からの脱却」という2つの側面から分析しつつも、イスラエルにとって間接的に戦略上のマイナスとなる可能性も指摘されている。これまでイスラエルとの国交正常化が期待されていたサウジがイスラエルと明確に敵対するトルコ、パキスタンと軍事的な連携を強めたことは外交上の後退と受け止められている。実際、パキスタンの国防相は合意締結後、イスラエルへの敵対姿勢を明言したうえで他のイスラム諸国にも同合意への参加を呼び掛けている。
さらに、中東における米国の影響力低下がイスラエルの地域的な立場にも直結することに対する懸念がイスラエル国内では広がっている。相次ぐイランとの戦争を通じ、中東諸国では米国の軍事的保護が絶対的ではないとの認識が広がり、独自の安全保障網を構築する動きが強まっている。米国離れが進めば、イスラエルも地域で相対的に影響力を失う可能性がある一方、パレスチナ問題を抱えるイスラエルが非米系の安全保障上の枠組みに参加する可能性は極めて低い。
今回の「メッカ合意」自体はイスラエルを標的とした同盟ではない。しかし、米国を中心としてきた中東の安全保障構造が変化し、イスラム諸国が独自の安全保障枠組みを形成する動きはイスラエルにとっても無視できない戦略的変化となる。イスラエルではこの枠組みが今後どこまで拡大し、地域の勢力図をどう変えるのか、警戒感を持ってその動向を注視している。
(8/7-9)

 

【マニラ空港でイスラエル人と米国人が殴り合い、反ユダヤ発言が発端か】(Y,P)
フィリピンのマニラ国際空港で8日、30代のイスラエル人男性と50代のアメリカ人男性が取っ組み合いのけんかとなり、現地警察に拘束される事件が起きた。
事件は国内線の搭乗口前の待合スペースで発生。イスラエル人男性や目撃者によると、アメリカ人男性がイスラエル人男性に近づき、「赤ん坊殺しのユダヤ人」「ヒトラーは正しかった。ユダヤ人を始末し切るべきだった」などと発言したという。これを受けてイスラエル人男性が手荷物カートを蹴り、アメリカ人男性に殴りかかったことから、双方が殴り合う騒ぎとなった。一方、アメリカ人男性は「個人的な話をしていたところ、突然殴られた」と主張している。
その後、空港警備員と警察が2人を引き離し、双方とも病院へ搬送された。現在も病院にいるが、退院後には公衆に不安や騒ぎを引き起こした疑いで取り調べを受ける予定だという。
(8/8-9)

 

【中東2か国に不穏な動きか、イスラエルが「融和を装った欺瞞作戦」を警戒】(Y,P) 
ここ数か月、イスラエルの大手メディアが中東の2か国の間で不穏な動きが見られていると、軍の報道検閲の範囲内で一斉に報じた。
報道によると、中東のある国が別の国に対し、イスラエルとの融和路線に転じて外交合意を結び、イスラエル政府や軍の情報機関が警戒を解いた隙に交戦に向けた準備を進めるよう助言していたという。イスラエル側もこの動きを察知しており、中東外交や国交正常化をめぐる政策に反映させていたとの報道もある。ただし、軍による報道検閲のため、2か国の国名や実際に助言を受けた国がこの計画を採用したのか、どこまで具体化していたのかについては明らかにされていない。
イスラエルメディアがこの動きを強く警戒する背景には10月7日以前のハマスの戦略との類似性がある。シンワル率いるハマスも10月7日の攻撃に至るまでイスラエルとの直接的な大規模交戦を避けながら、ガザ住民のイスラエルでの就労枠拡大などを通じ、一見すると現実主義的で融和的な政策を進めていた。今回の報道はこうした「表向きは融和、裏では将来の交戦に備える」という戦略がテロ組織だけでなく国家間でも検討されている可能性を示すものとなる。
またエジプト、ヨルダンとの国交正常化以降イスラエルは周辺国との関係改善を一定の安定したものとして捉えてきたため、国家によるこのような動きは大きな驚きを呼んでいる。そのため今後、中東の国が国交正常化を念頭にイスラエルへ接近した場合、それが長期的な戦略転換なのか、それとも将来の交戦を見据えた策略なのかを今まで以上に慎重に見極める必要があるとの声が相次いでいる。
中東では政情や国家間の関係が大きく変化し、昨日までの敵が今日には協力相手になる一方、その逆も起こり得るという不確実性がある。今回の情報はイスラエルが周辺国との融和を進めるうえでの難しさを改めて意識させるものとなった。
(8/10)

 

【17年ぶりにイスラエルとベネズエラが領事協力を再開、関係正常化へ前進】(Y,P,H)
2009年に当時のチャベス政権がイスラエルとの外交関係を断絶したベネズエラが今年1月の米国による軍事介入を経た政権交代を機に、イスラエルとの関係改善へと動いている。
イスラエル外務省は11日、ベネズエラとの領事業務に関する協力を再開することで合意したと発表した。両国は今後、緊急時の対応や災害復旧などについても技術協力を続ける方針で、17年ぶりに両国政府間の外交チャンネルが再開されることになる。
今回の接近には6月末にベネズエラで発生した大地震が一つの転機となった。イスラエルは地震直後、国防軍の民間防衛軍や救援専門家らを派遣し、救助活動や復旧支援に当たっていた。両国の共同声明でも、この人道支援が今回の外交関係の再構築につながったことが強調されている。
今後は、エネルギーやハイテク、技術・イノベーション、貿易などの分野でも協力を拡大する可能性がある。世界有数の石油埋蔵国であるベネズエラと技術・スタートアップ分野に強みを持つイスラエルの関係改善は双方にとって利益にもつながると期待されている。今回の合意は完全な国交正常化ではなく、まずは領事・技術分野から関係を再構築していくことになる。
(8/12)

◯ 文化

【元人質のサギ・デケル=ヘンさんがニルオズで歌声、「死の場所」に音楽戻る】(Y,P,H)
2023年10月7日にキブツ・ニルオズから拉致され、498日間ガザで拘束されていたサギ・デケル=ヘンさんが8月10日にニルオズで開催された音楽祭に出演した。
監禁中、デケル=ヘンさんは歌を口ずさんでおり、それは「最初は鎮静剤、そしてその後は(その日を生き延びるための)武器となった」と振り返っている。この日に披露した楽曲の一部も先の見えないガザの地下トンネルで生まれたものだった。歌には家族や愛、10月7日以前の思い出、そして監禁中に経験した恐怖などが込められており、その中には、ガザにいる間に妻アビタルさんが出産した3人目の娘に捧げた曲もあった。
復興をテーマとしたこの音楽祭は虐殺・拉致があったニルオズで行われ、拉致被害者や家族を亡くした住民を含む約3,000人がデケル=ヘンさんらの歌声に耳を傾けた。会場となった広場は彼をはじめとするキブツ住民が生まれ育った思い出の場所である一方、10月7日以降は住民の遺体が戻るたびに葬儀が行われる場所にもなっていた。そんな死を象徴する場所ともなっていた広場にこの夜は、再び音楽と歌声が響くことに。
デケル=ヘンさんをはじめキブツ住民にとって、この夜は言葉では言い表せない特別な時間となり、イスラエルでも大きな感動とともに報じられた。
(8/11)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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