ー ISRAEL NOW!ー
 
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
(本誌の発行は、原則として毎週土曜です。)
◯ 治安

【国防軍がアリ・タヘル山稜から撤退、遠隔監視で再軍備化を防げるか】(Y)
国防軍はレバノン南部のアリ・タヘル山稜にあるヒズボラの地下施設の破壊完了を受け、同地から撤退し、黄色ラインに沿って部隊を再配置した。部隊は地下施設があった場所から離れたものの山稜を監視できる位置には配備されており、要衝ボーフォート城でも駐留は継続されている。
カッツ防衛相はアリ・タヘルからの撤収が安全ベルトからの撤退を意味するものではないと強調。ヒズボラの武装解除が実現するまで、安全ベルトから撤退することはないと説明した。また国防軍は周辺を監視できる山地を制圧しており、テロリストが再び戻れば攻撃すると警告している。
今回の撤収は全長約5.4キロに及ぶヒズボラの地下インフラを長期作戦によって破壊した後に行われた。イスラエルによれば、この施設は約20年にわたりイランの支援を受けて建設され、ヒズボラが戦闘指揮や対イスラエル作戦の計画に使用されていた。
しかし、この撤退には反論もある。専門家からはインフラを一時的に解体しても、再建を阻止する態勢を整えないまま撤退すれば、再びテロ拠点と化す可能性があるとの警告が出ている。こうしたなかでのアリ・タヘルからの撤収は、現地への直接的な駐留・監視から、監視と空爆による遠隔での軍事的支配への移行を意味する。
疑問の声も上がるなか、この新たな態勢でヒズボラによる再軍備化を防げるかが、今後の焦点となる。
(9/13)

 

【ガザ・ハマスのラファ旅団司令官を排除、10/7関与の士官らを相次いで排除】(Y,P,H)
国防軍はシンベトと協力し、ハマスの幹部を標的とした作戦をガザ内で続けており、15日には無人攻撃機を用いて、ラファ旅団司令官であるナエル・アブ=オベイドを排除した。アブ=オベイドは昨年5月、前任者がムハンマド・シンワル(ヤヒヤ・シンワルの弟)とともに殺害された後、その後任に就いていた。
国防軍によると、アブ=オベイドは国防軍兵士やイスラエル市民に対するテロ計画を進め、さらに休戦の条件である武装解除に違反し続けている自身の旅団を中心にハマス軍部の再軍備化を進めていた。この排除は先週末から続く作戦の一環であり、先週末には10/7にも参加したイスラム聖戦のロケット部隊指揮官が、そして14日にはハマス北部旅団の指揮官が排除されている。
さらに16日には、ハマス・ヌフバ部隊の士官ジハード=サミフ=マフムード・イスマイルも排除されたとの発表があった。国防軍によればイスマイルは10/7の越境攻撃のシンボルともなった防御フェンス近くでの戦車攻撃に参加。戦死した3人の兵士の遺体を含む計4人の拉致に関与し、その後も国防軍に対する攻撃などを行っていた。(9/16)

◯ 内政

【ドキュメンタリー映画『NAZA』―ヴェネツィア受賞と国内の論争】(Y,P,H)
ユヴァル・アブラハムとラヘル・ショールが制作したドキュメンタリー映画『NAZA(「巻き添え被害」の意)』が12日にヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞。世界で称賛を受ける一方、イスラエルでは大きな波紋を呼んでいる。
上映後には約25分間の拍手が続いた本作は、8200部隊を中心とした国防軍諜報部隊に所属していたとされる24人の兵士・兵士経験者による匿名証言を収録。ガザ戦争中の標的選定でAIが広く利用されていたことや民間人死者の規模などを取り上げ、イスラエルが国際法を体系的に無視し、ジェノサイドに当たる行為を行っていると主張している。
イスラエル国内では公開前から批判が噴出。ゾハル文化・スポーツ相は監督2人を「国家への反逆者」と非難し、国籍剥奪のために動くと表明した(法的には実現の可能性は極めて低い)。イスラエル軍も反論しており、軍報道官は適切な議論のために映画全編の公開を制作者側に要求。
14日にはザミール参謀総長が8200部隊司令官らと協議し、映画への対応チーム設置、法的措置の可能性、機密情報流出の調査を指示した。そのうえでザミール氏は映画を「血の中傷(反ユダヤ主義の文脈で使用される悪質な捏造)」と評し、イスラエルと軍の正当性を損なうものだと批判した。
外務省も各国のイスラエル大使館に対応マニュアルを送付。イスラエルはジェノサイドや意図的な民間人殺害を否定し、国際人道法の区別原則や均衡性、民間人被害を抑える努力をしていると説明している。また映画中の「500人の民間人が死亡する可能性を認識して攻撃を承認した」との証言も全面否定し、AIについても作戦判断を補助することはあるが、最終決定は人間が行うとしている。
与党側やネット上では制作者への中傷が多く見られるが、有識者からは事実に基づく冷静な反論と調査を求める声もあがっている。ハマスの地下トンネルや人間の盾を伴う都市部での戦闘は非常に複雑で、民間人の犠牲を伴う攻撃が自動的に国際法違反となるわけではない。
それでも違法行為の可能性に関しては真摯に調査すべきであり、健全な批判への対応は民主国家の成熟度や国防軍の専門性を示すものだという指摘もある。また、イスラエル人が制作した作品だけに海外で信憑性をもって受け止められる可能性があり、制作陣を攻撃・沈黙させるのではなく、事実で反論すべきとの指摘も。
同時に、極右閣僚らによるガザの完全破壊や核兵器使用の容認、「ガザ住民全体はテロリスト」とも取れる発言は映画が主張する「ジェノサイドの意図」の根拠として利用されているとして、こうした発言を控えるべきだとの声も上がっている。
(9/12-15)

◯ 国際情勢

【ドイツでハマスのテロ計画を起訴、イスラエル・ユダヤ人標的に武器を準備】(Y,P,H)
ドイツ連邦検察は11日、ドイツとオーストリアでイスラエル人やユダヤ人らを標的としたテロ攻撃を計画したとして、ハマスのメンバーと疑われる7人を起訴した。
起訴状によると、7人はドイツ国内で武器や弾薬を調達し、その一部をオーストリア・ウィーンに保管していた。ハマス軍事部門は以前から欧州に武器庫を構築しており、10/7から2年となる時期に合わせて欧州でテロを行う計画を25年7月から進めていたとされている。
標的にはイスラエルの代表者やユダヤ人、親イスラエル派の人物などが想定されていたという。そのなかでグループは自動小銃1丁、拳銃13丁、700発以上の弾薬を入手し、その一部はウィーンに運ばれた。またハマス名義で犯行声明を出す動画まで事前に作成されており、連邦検察はこうした事実を具体的なテロ計画の証拠としている。
事件の捜査はドイツだけでなく、オーストリア、英国、デンマーク、キプロスなど欧州各国に及んでいる。これまでに計9人が逮捕され、そのうち今回7人が起訴された。
特に注目されているのが、レバノン生まれの被告の1人がドイツ連邦憲法擁護庁の情報提供者だったことだ。この人物はメンバーらに対して弾薬を提供した疑いが持たれている。同庁は本人が情報提供者だったことを認める一方、テロ計画について同庁からの指示があったことについては否定している。
(9/11)

 

【タイでイスラエル人への風当たり強まる、ユダヤ人共同体にも調査】(Y,P)
この1週間、タイ国内ではイスラエル人の滞在に対する向かい風が明らかに強まっている。両国間の外交危機を意味するものではないが、イスラエル人観光客の行動への批判や法執行強化の要請、さらにイスラエル人・ユダヤ人共同体への調査が相次いでいる。
11日には、プーケットで予定されていたユダヤの新年の夕食会が中止された。ユダヤ教の一派によるハバッド・ハウスで約2,000人のイスラエル人旅行者を対象に予定されていたが、周辺で大規模な親パレスチナデモが行われていたため開催を断念。ハバッドによれば、イスラエルの治安当局からデモが暴力的になる危険性を理由に中止を要請されたという。
背景には、以前からタイで問題視されていたイスラエル人観光客の振る舞いへの反感が先月表面化したことがある。タイのリゾート地でフランス人・タイ人夫婦が経営する動物園をイスラエル人家庭が訪れた際、国籍を理由に入園を拒否され、父親が突き飛ばされるなどの暴行を受けた。
動物園側はイスラエル人の入場を全面禁止し、これに反発した滞在者たちから経営者への襲撃や自宅・動物園への放火を含む脅迫が相次ぎ、裁判沙汰に発展。今月にはバンコクのイスラエル大使館前で約500人が参加する抗議デモも行われ、反イスラエル的な機運が国全体に広がった。
さらに15日には、タイ当局の移転命令を受け、バンコク近郊のユダヤ人墓地から4人の遺体が撤去され、新しい墓地へ移された。この墓地は5年前に購入・登録されたが、ここ数か月は埋葬許可の更新が難航し、最終的に当局が更新を拒否した。タイ側は土地や許可をめぐる問題とする一方、上記の背景を受けた決定ではないかとの声もある。
同日には、プーケット県知事が同県のハバッド・ハウスについても調査を命令。土地所有、建築・営業許可、墓地建設計画などを再精査している。当局は現時点では違法行為は確認されていないとし、ハバッド側も法を順守しているとして調査に協力している。
17日にはアヌティン首相が法律に違反する外国人に対し「死ぬなら自分の国で死ね」と発言。特定の国籍を指したものではなく、外国人による土地の不正保有や違法事業・不法労働などの取り締まり強化を表明したものだが、タイミングからイスラエル人をめぐる一連の問題との関連も指摘されている。
今回の緊張は反ユダヤ主義というより、イスラエル人観光客の迷惑行為が大きな要因とみられる。駐タイ・イスラエル大使も一部観光客の行動に問題があることを認め、タイの法律や文化を尊重するよう訴えている。一方、こうした行為への反感がイスラエル全体への反感や反ユダヤ的主張に結びつくことにも警鐘が鳴らされている。
(9/11-17)

 

【UNRWA教師の自宅に48日間監禁―元人質家族が国連で証言】(Y,P)
10/7にハマスによってニルオズのキブツから拉致されたディツァ・ヘイマンさんの娘、ネタ・ヘイマン=ミナさんが15日、ジュネーブの国連人権理事会で母親がガザで監禁されていた状況について証言した。
当時84歳だったディツァさんは53日間の拘束中、48日間をUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の教師の自宅の屋根裏部屋で過ごし、十分な食料も与えられないなど非人道的な環境に置かれていたという。ネタさんはUNRWAへの資金援助や支援が続いていることを批判し、このような人物がガザの次世代の教育を担うことがあるべき姿なのか、と国連に問いかけた。
また、UN Watchの調査でガザUNRWA労働組合の前会長がハマスのメンバーだったとされていることにも言及し、テロ組織とUNRWAの関係を批判。一方で、ガザに必要な教育、医療、食料安全保障への支援は続けるべきであり、UNRWAに代わる組織を見つける必要があると強調した。
同じタイミングでUN WatchはUNRWAの改革に関する新たな分析を発表。元仏外相が監修した独立調査では50項目の改革勧告が示され、UNRWAはそのうち41項目を完了したと報告している。しかしUN Watchは完全に実施されたと確認できるのは13項目にすぎないと主張。行政・手続き上の変更を「改革完了」として計上しており、監督、組織的責任、政治的中立性などの根本的な問題は残っていると指摘している。
(9/15)

 

【サウジとクウェートがイスラエルと接近の兆しか】(Y,P)
イランとフーシ派をめぐり地域情勢の緊張が高まるなか、湾岸諸国とイスラエルの安全保障面での接近を示す動きが相次いで報じられている。先週ドイツでは米中央軍のクーパー司令官が主導し、イスラエルのザミール参謀総長やサウジアラビア、UAE、バーレーン、クウェート、カタール、ヨルダン、エジプトの軍トップが参加する会議が開かれた。イランやフーシ派への対処について協議され、国交のないアラブ諸国とイスラエルが地域安全保障で接触していることが明らかになった。
またこれと同じタイミングでイスラエルとサウジの安全保障協力が特に深まりつつあるとの報道があった。中東の外交関係者によると、イスラエルは米中央軍を通じてフーシ派に関する機密情報をサウジに提供しているという。イスラエルが直接戦闘に参加するわけではないものの、両国間の安全保障での協力が進んでいる形となる。
イスラエルではアブラハム合意拡大への一歩との見方も出ているが、サウジ側は安全保障上の協力と国交正常化を別問題と位置づけ、パレスチナ問題が正常化の条件だという従来の立場を維持している。さらにイスラエルの駐UAE大使は15日、クウェートが6か月以内にアブラハム合意に加わる可能性について言及した。
具体的な協議内容は明らかになっていないが、元クウェート閣僚はイランによる湾岸諸国攻撃とイスラエルによるイラン攻撃を踏まえ「イランとイスラエルのどちらが湾岸諸国の敵か、もはや疑問の余地はない」と発言。安全保障環境の変化が、イスラエルに対する湾岸諸国の見方にも影響していることを示した。
イランとその代理勢力への警戒を背景に、イスラエルと湾岸諸国の安全保障協力が進む一方、これがサウジやクウェートとの国交正常化に直結するかは、現段階では不透明だ。
(9/15-17)

◯ 文化

【イスラエルのスポーツ界に相次ぐ新年の良い知らせ】(Y,H)
イスラエルがロシュ・ハシャナ(ユダヤの新年)を迎えるなか、イスラエルのアスリートたちが国際大会で相次いで好成績を収めた。
ブダペストで行われた柔道のグランドスラムでは11日、男子60キロ級の決勝が行われ、18歳のイサク・アシュピズ選手が金メダルを獲得した。昨年からシニアの国際大会で活躍し始めたアシュピズは、今年は主要大会であるグランドスラムでも頭角を現し、2月のパリ大会で銅メダル、3月のトビリシ(ジョージア)大会では優勝。若手の有望株として注目を集めていた。
今大会でも順調に勝ち進み、決勝ではフランスのジャン選手のミスを見逃さず、見事な返し技から一本勝ちを収めた。負傷からの復帰戦を優勝で飾ったアシュピズは、「新年を迎える自分と国にとって、大きな贈り物になった」と喜びを語った。この優勝で、世界ランキングも2位に浮上した。
大会最終日の13日には、パリ五輪銀メダリストのラズ・ヘルシュコ選手も女子78キロ超級で金メダルを獲得。決勝でフランスのカンカン選手を破り、3月のトビリシ大会に続く今年2度目のグランドスラム優勝を果たした。28歳のヘルシュコは今年、欧州選手権でも優勝しており、これらの好成績によって世界ランキング1位に返り咲いた。
また、ウインドサーフィンでも大きな快挙があった。英国で開催された世界選手権で、20歳のタマル・シュタインベルグ選手がiQFOiL級で金メダルを獲得。予選では16レース中7レースで勝利して首位で決勝に進み、決勝でも同じイスラエル代表でパリ五輪銀メダリストのシャロン・カントール選手らを抑え、初の世界選手権タイトルを手にした。シュタインベルグはこれで欧州選手権との2冠を達成。また、ダニエラ・ペレグ選手も4位に入り、イスラエル勢が1・2・4位を占める結果となった。
ユダヤの新年と重なったこの週末、イスラエルはお家芸とも言える柔道とウインドサーフィンの国際大会で相次いで好成績を収め、スポーツ界にとって良い年明けとなった。
(9/11-13)


[情報源略号表]
 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]
 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。

 
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