紛争を逃れて日本で暮らす子どもたちと、乗馬体験に行ってきました。
このように書くと、「難民の子どもたちをホースセラピーに連れて行った」と理解される方もいるでしょう。結果的にはそのとおりなのですが、最初からそれを意図したわけではありませんでした。
Yくんが日本に来たのは小学校低学年のとき。日本語はすぐに覚えましたが、勉強は苦手です。できの良い妹と常に比較され、学習意欲はなかなか向上しません。
彼は、出会ったころから、「馬が好き」と言っていました。日本に来る前、馬の世話をしたことがあるそうです。彼の母国では紛争が年々激しくなり、来日直前は隣国に避難していたので、いつの記憶なのかはっきりしません。それでも、彼の中では鮮烈な思い出になっているようです。馬は、帰れない母国への郷愁と、幼いながらも自分が働いて役に立ったという自己効力感を呼び覚ますのかもしれません。馬の世話をすることで、周りの大人たちが褒めてくれたのでしょうか。
日本で暮らす外国ルーツの子どもたちは、どちらかといえば褒められるよりも、もっと勉強・日本語を頑張れという励まし(?)にさらされることのほうが多いように感じます。難民の子どもたちすべてが高等教育に進むことを希望しているわけではなく、中学を出たら働いて人々の役に立ちたいと思っていた子どもたちもいます。彼らの母国ではそれも普通の生き方だからです。先進国に移住すると、そのようなメンタルモデルも修正を迫られます。
Yくんはもう中学生。進路を考えなければいけない年齢に差し掛かっています。私たちは最初、高校選択の助けにもなり、本人も興味を持てることをと考え、ドローンなど最新テクノロジーに触れる機会を提供しました。広い意味での職業体験です。それなりに関心を示したものの、会場に向かう途中の駅で、馬のポスターを見たときの反応と目の輝きは、まったく別次元のものでした。そこで私たちは、ただ単純に、馬に接する機会を提供したいと思いました。
乗馬体験の企画について彼に話したところ、想像したとおり妹たちも「行きたい!」と声を上げました。もうひとり、Yくんと同様の背景を持つ青年も誘い、4人を連れて行くことにしました。
当日、行きの道中から3きょうだいは興奮気味。対照的に、少し年上の青年は至ってクールです。
が、実際に馬を目の当たりにすると、彼らの表情は見る見る変わりました。これは、私たちが一番驚いたことです。表情も言葉も生き生きとして、かつてないほど積極的です。これまでに見たことのない一面が引き出されました。短い時間でしたが馬に乗り、厩舎の方にいろいろと教えてもらい、ポニーに餌をあげることもできました。帰るときには、「また来る!」、「ここで働きたい!」、「いくらあれば会員になれる?」など、質問攻めに会いました。
馬、おそるべし。できることなら、定期的に、もっと多くの子どもたちを連れていきたいものです。