多言語環境にある子どもの育ち
多言語環境によって生じる移住者の悩み
「もう3歳になるのに、言葉がでてこなくて...」
「私が母語で話しかけても、子どもたちの返事はいつでも日本語。時々わからない言葉があって...」
 
これらは、移住者のご家族、とりわけお母さんたちからよく聞く言葉です。あらたまっての相談ではなくとも、ふとした会話の中で、尽きない不安や戸惑いとして寄せられます。
 
難民や移住者の家族、移住者コミュニティの女性たちとの関りを続ける中で、2世や1.5世(幼少期に親と一緒に来日した子ども)と呼ばれる多くの子どもたちにも数多く出会ってきました。そういった子どもたちの多くは、日本の保育園や幼稚園に通い、そして日本の小学校、中学校へと進学していきます。
一見、「日本人」の子どもたちと同じように日本語を使い、学んでいる彼ら/彼女らですが、家庭内では両親の出身地域の「母語」を使用していることがよくあります。家庭内の言語と社会生活を営む中で慣れ親しんでいく言語が異なる、という環境が、移住者の子どもたちにとっては当たり前なのです。

 

子どもが暮らす場所で、子どもにとって最適な環境をつくる
このような多言語の環境で育つ子どもたちの中には、言葉の習得に遅れが見られる場合があります。どうやら言葉は理解しているようだけれど、母語も日本語も出てこない、文章にならない、そんな子どもたちを多くみてきました。そして、その言葉の獲得の遅れが、発達の遅れとして捉えられてしまうことがよくあります。
 
これは、日本だけの話ではありません。
例えば、第二次世界大戦後、その経済復興のために多くの外国人労働者を受け入れたドイツ。その後定住したトルコ系移民の子どもたちは、1990年代頃まで、特別支援学校への入学を勧められることが良くありました。家庭内ではトルコ語だけを使用していたため、ドイツ語の理解が追いついていないことから、発達に遅れがあるとみなされたからです。しかし、特別支援学校に入学し、ドイツ語での社会生活を始めてみると、実際には発達の遅れはないことが判明する子どもたちが数多くいたと言われています。
 
現在ドイツでは、このようなミスマッチを防ぐため、就学前からドイツ語に触れる機会を促進する取り組みが、母語の保障と合わせて行われています。
多様化する社会で、子どもたちを支えていくために
「お母さん、がんばって日本語で話してあげなきゃだめですよ!」と言われ、母語を封印し、つたない日本語だけで、自信なさげに子どもとコミュニケーションを取るお母さん。
「勉強が追いついていないから、もっと家庭で見てあげないと!」と学校の先生に言われ、そうは言われても私たちでは見てあげられない、と悔しささえも滲ませながら困ったと訴えるご両親。
 
このようなご家族を支え、子どもたちの健やかな育ちを見守るために、支援者はどのような関わりを持つことができるのでしょうか。幼稚園や保育園、学校の先生と同じように、私たちも手探りです。それでも、ご家族がどのように考え、感じているのか、状況を正しく理解できているか、そして母国ではどのように捉えられているのかに留意しながら、専門家との連携を図ってきました。
8月〜9月にかけて開催するオンラインセミナー テーマ②では、多文化・多言語環境に生きる子どもたちの言語獲得と心の育ちについて、専門家よりお話を伺います。
子どもたちは、多様化する日本社会を映す鏡です。まだまだ社会の中では認知されていないこれらの課題について、お話を伺える貴重な機会ですので、ご関心のある方は是非ご参加ください。
 

(プロジェクトコーディネーター 近藤)

外国につながる子どものソーシャルワーク
「Children Across Borders(CAB)」を設立しました

今年7月、ISSJの一部門としてChildren Across BordersCAB)を設立しました。CABでは日本国内のリソースだけでは解決しない様々な問題について、子どもの最善の利益を図るために、ソーシャルワーカーが弁護士などの専門家と連携し、個別の背景に応じた支援を行います。

 

これまで、ISSJは「無国籍」状態にある子どもたちの支援を行っていましたが、社会的養護の子どもの支援者向けセミナーや、パンフレット配布など情報発信をしていくなかで「そもそも無国籍の子どもを支援するための情報がない」「どうやって国籍の有無を確認すればいいのかわからない」など、多くの疑問が寄せられてきました。

また、外国につながる子どもの福祉に関する相談も、二ヶ国以上が関わるケースが増えています。社会的養護下にある外国籍の子どもにとって「日本で暮らす以外の選択肢があるか?」「外国に住む親族を調べることができるのか?」など、児童相談所や関係機関からも相談が寄せられています。

 

こうした疑問や相談に対し、CABは多角的な支援を行う一部門として、国籍取得支援、ISSネットワークを活用した調査や家庭訪問、養子縁組のための家庭調査など、外国につながる子どもの支援を行っていきます。

 

子どもの国籍や支援方法に関して、何かしらの課題があることには気づいているものの、どうすればいいかわからないという方や当事者に対し、「情報がないこと」=「支援方法がない」ということではなく、共に支援するための手立てを見つけていくことを目指しています。

 

実際の支援事例などは、CABのウェブサイトをご覧ください。https://cab.issj.org/

 

(CABソーシャルワーカー 榎本)

お知らせ
クラウドファンディング実施中!
「アフガニスタン元留学生と家族の命を守りたい」
クラウドファンディング
タリバン制圧が続くアフガニスタンとその隣国には、日本への退避を待つ、日本で暮らした経験のあるアフガニスタン人とその家族がいます。
 
日本での恩師である教員らによって結成された本プロジェクトの事務局を、移民・難民の定住支援の経験を持つISSJが担当しています。クラファン開始から約2週間で目標金額300万円に達し、より多くの家族の命と尊厳を守るためネクストゴールに挑戦中です。ご支援と拡散のご協力をお願いします。

クラウドファンディングのサイトはこちら。
オンラインセミナー申し込み受付中
「多文化・多言語環境にある子どもの育ちを考える」
テーマ2のお申込みを受付中です。講義では、主に幼児期(0~6歳)の子どもに焦点をあてて、お話しいただきます。
 
8月20日(土)
「外国にルーツのある子ども・家族支援の実際」
講師:南野奈津子氏(東洋大学教授) 
 
9月19日(月・祝)
「多文化・多言語環境にある子どものことば・発達・関わり方」
理論編講師:奥村安寿子氏
(東京大学 大学院総合文化研究科 特任研究員) 
実践編講師:東谷知佐子氏
(NPO法人 HATI JAPAN 代表理事 公認心理師、臨床心理士)
 
お申込みや詳細はこちら。
2022年度チャリティ映画会中止のお知らせ
チャリティ映画会&バザーですが、昨今の感染症拡大の状況を鑑み、開催を中止することにいたしました。次回の開催予定については、あらためてお知らせをいたします。
 
活動報告
外国につながる家族と子どもの相談支援者向けオンラインセミナー
テーマ1「難民の定住支援」を開催
難民の定住支援をテーマに、専門家や当事者を講師として、全3講義「難民支援とソーシャルワーク」「難民の適応障害とうつ」「難民の子どもの学習と課題」を実施しました。ウクライナ避難民をはじめとする難民受け入れを行っている自治体や関係団体、実際に支援をしている方々など、約40名にご参加いただきました。
 
本オンラインセミナーは4つのテーマで開催しており、次は8月20日にテーマ2の講義1を実施します。
 
詳しくはこちら
特別講演「比較家族史学会 第70回 春季研究大会」
常務理事の石川が、6月18日に開催された「比較家族史学会 第70回 春季研究大会」で「ISSJの実践と国際家族」をテーマに特別講演を行いました。

本研究大会のプログラムはこちら。
 
ソーシャルワーカーの視点
映画「ベイビーブローカー」を観て

話題作「ベイビーブローカー」は、子どもの命をめぐって人々の思いが捻じれ、交差しながら、しだいに紡がれていく、心温まるだけでなく、苦しさをも伴うロードムービーでした。

 

ある出来事を介して出会った人たちが、それぞれの過去に触れ、そして、互いを許していく展開に涙したのは、わたしだけでないはずです。しかし、現実社会においては、子の命を取り巻く事件や事故は、社会からの辛辣な批判と共に、自己責任という便利な言葉に集約され、片付けられてしまいがちのように思います。

 

世の中の自己責任の根底には、社会の仕組みのもろさや、わたしたちの不寛容さがあるのだと改めて突きつけられた気がします。

 

(ソーシャルワーカー 武田)

スタッフ紹介(大場亜衣

米国ボストンの大学院(専攻:臨床ソーシャルワーク)を卒業した年に結婚、その翌年にISSJに入職し、20年が過ぎました。今では健康体の息子たち2人も、幼い頃はしょっちゅう体調を崩し、小学校を卒業するまでに6回も入院しました。わが子を見舞いながら、仕事を続けることはしんどくて、何度となく退職を考えました。が、そのたびに柔軟な働き方を提案し、応援してくれた先輩、同僚の皆さんには感謝しかありません。

 

ISSJの進取の気風は、事業の取り組みだけではなく、各々のライフステージに合わせた働き方にも表れているように思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。ISSJメルマガに関するご質問・ご意見がございましたら、issj@issj.orgまで、お気軽にお問合せください。
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