【〝怒濤〟の1か月半】
10月から11月初旬は〝怒濤〟という言葉がぴったりな1カ月半でした。
ヴァフタン・カヒッゼ(ジョージア)指揮による甲府市交響楽団との「ヴァイオリン協奏曲」(ブラームス)初挑戦をはじめ、室内楽やデュオ、ドッペルコンチェルトなど実に24公演。体力的にも精神的にもハードな秋は、同時に実りの多い時間となりました。
音楽の奥深さも感じました。大きなホールで弾くこともあれば、アットホームなサロンが会場となることも。楽器の調子、残響、集まって頂いたお客さんの反応、共演者からのレスポンスは、その時その時で違います。2日連続で同じ曲目、会場、共演者でも、湧いてくるインスピレーションは様々。そんな新しい発見と刺激を得られたのも、多くの演奏機会を頂けたからだと感謝しています。
ブラームスのコンチェルトは、まるで交響曲のようでオーケストラとの絡みが多い作品でした。リハーサルは本番前日の1回だけでしたが、オーケストラも私も集中を高めて臨み、指揮者との一体感を得られました。
第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位に入賞したピアニスト、川口成彦さんとのコンサートでは、古楽からのアプローチでモーツァルトやクララ・シューマン、ロベルト・シューマンを披露。モーツァルトは古楽ならではの装飾音符を加えて、お互いの呼吸を探りながらの語り合いに。遊び心に溢れた一期一会の演奏は、非常に新鮮でした。
小学校でのアウトリーチも数多く経験できました。子どもたちはとにかく反応が素直。例えば、ブラームスの「ハンガリー舞曲」にはジプシー音楽の特徴、酒場で演奏するハンガリー民謡チャルダッシュのリズムや緩急が取り入れられているから、酔っ払った人を想像しながら聴いてねと伝えます。すると、酔っぱらいがハッと目を覚ますようなメロディで会場からは笑いが。「アルプス一万尺」にはテンポや強弱に合わせて手拍子で応じてくれました。山梨県の学校で演奏を終えた時のこと。ある先生から「発達障害を抱える生徒が静かに聴き入り、日ごろは素行が悪い子が積極的に手を挙げて質問していた」と驚き混じりで喜びの言葉を頂きました。音楽の持つ力を感じる瞬間でした。
11月後半はミュンヘンにて5公演。12月は、8日にパリ在住の鈴木隆太郎さん(Pf)と「せんがわ劇場」(東京都調布市)にて「サンデー・マティネ・コンサート」。21日には尾崎未空さん(Pf)尾池亜美さん(Vn)安達真理さん(Va)伊東裕さん(Vc)とブラームスのクインテットをメーンにしたコンサート(渋谷)を予定しています。クインテットは早くも完売となりましたが、年明けの1月19日には東京藝大で同期の長尾春花さん(Vn)とバッハの「2台のヴァイオリンのためのコンチェルト」、ヴィヴァルディの「四季」をTGS(Tokyo Geidai Strings)と「蕨市文化ホールくるる」にてご披露します。
皆様とまたお会いできますことを楽しみにしております。