【冬の足音】
落ち葉で黄色に染まった散歩道。思わず足を止めたくなるクリスマスマーケットの出店。
日々厳しさを増す寒さの中でイルミネーションはきらめき、グリューヴァイン(ホットワイン)の香りがどこからともなく漂ってきます。
秋が深まり、冬の足音が聞こえてきた11月後半は、ミュンヘンで5つの公演機会を頂きました。
オーストリアの作曲家だけでプログラムを組んだリサイタルでは、シューベルトの「華麗なるロンド」を初披露。
さらにモーツァルトとシューベルトのソナタ、クライスラーの小品と盛りだくさんでお届けしました。
シューベルトのソナタは10月に日本でも演奏しましたが、異なる共演者とまた一味違うアプローチになり、新たな世界が広がったように感じました。
クライスラーはサロン向けのユーモアたっぷりな作品で、音楽を通して聴き手とダイレクトにキャッチボールをしている感覚に溢れます。
客席との距離はぐっと近づき、最後はたくさんの温かい拍手。表現が確かに伝わったと、実感を得ることができました。
その他の4公演は、老人ホームなどコンサート会場には足を運びにくい方々に音楽を届けました。
特に印象的だったのは、アルコール中毒者の施設での演奏。
男性ばかりの会場に入ると、目の前には長髪のいかつい人や全身入れ墨で強面の人が並び、何とも重苦しい雰囲気です。
触れる機会があまり多くないかもしれないクラシック音楽。
それでも、1時間のプログラムが進むにつれて張り詰めていた緊張と硬さのあった表情が少しずつ柔らかくなり、中には目に涙を浮かべて拍手を送ってくれる人も。
直接、言葉を交わすことはなくても、心の交流を可能にする音楽の力を改めて感じました。
日本でも同様の活動ができたら…。これまで抱いていた思いも、一層深まりました。
12月21日には尾崎未空さん(Pf)伊藤亜美さん(Vn)安達真理さん(Va)伊東裕さん(Vc)とブラームスのクインテットをメーンにしたコンサート(渋谷)を予定。
こちらは完売となりましたが、22日に大阪府茨木市で、23日に神戸市で、いずれもミュンヘン在住のピアニスト、柏本佳央理さんとフランクのソナタをメーンに据えたリサイタルをご用意しています。
1月19日には東京藝大で同期の長尾春花さん(Vn)とバッハの「2台のヴァイオリンのためのコンチェルト」、ヴィヴァルディの「四季」をTGS(Tokyo Geidai Strings)と「蕨市文化ホールくるる」にて。
華やかなニューイヤーコンサートで皆様をお迎えします。
2019年は日本、欧州で多くの演奏機会に恵まれ、新たなレパートリーにも積極的に挑戦した充実の1年でした。
コンサートにお運びいただいた方々、沢山の応援をくださった皆さまに、心より感謝しております。
年明けには、いよいよ後援会が始動。様々な特典をご用意して入会をお待ちしております。
どうぞ楽しいクリスマスと良いお年をお迎えください。