【ブラームスの住んだトゥーン】
いよいよ東京も梅雨明けですね!暑い日が続きますが、ヨーロッパも今夏は強烈な熱波に襲われています。日本と違って、冷房が完備されていない家がほとんど。空気が乾燥していて朝晩は気温が下がるものの、日中の暑さ対策は死活問題です。
7月11日は、中学生以来となる銀座・王子ホールでの演奏でした。同年代の素晴らしい共演者達と様々な編成でお届けした「フランス室内楽の夕べ」。ルクーやフランク、イザイの作品からのみならず、ホールの豊かで美しい響きにもインスパイアされ、リハーサルから音や演奏がどんどん変化していく、刺激的で濃密な時間でした。
本番ではお客様が集中して耳を傾けてくださっているのがステージ上に伝わり、お腹の底から湧き上がる音楽に身を任せながらのコンサートとなりました。
あるお客様から「時間が止まり、異世界に引き込まれたような感覚になった」との感想をいただきました。私もかつて聴きに行ったコンサートで同じ感覚を体感した記憶が残っています。「こんな音楽の魔法を使えるようになりたい」と幼心に誓ったことを思い出し、感慨深いものがありました。
先週は、長年訪れたかった場所、トゥーンに行ってきました。
スイスの首都ベルンと、リゾート地で有名なインターラーケンの間にあり、アルプスの名峰を望む湖畔の小さな町です。ブラームスはここで夏を過ごした3年の間に、数々の名曲を生み出しました。
今月3日、渋谷・美竹清花さろんで演奏するヴァイオリンソナタ第三番も、ここトゥーンで書かれた作品です。
トゥーン湖から流れ出るエメラルドグリーンのアーレ川。そのほとりにある、ブラームスが住んだ家の跡地という公園に、しばらくの間佇みました。波のように寄せては返す、それでいて穏やかな水面のきらめきを眺めながら、二人の友人の訃報に触れて作曲されたヴァイオリンソナタや、19世紀を生きたブラームスの胸中に想いを巡らせました。
トゥーンの隣にあるインターラーケンは、メンデルスゾーンが滞在してスケッチなどをしながら大自然と向き合った場所。町の名前は「湖の間」を意味するラテン語に由来するとされています。短い川がトゥーン湖とブリエンツ湖をつないでいますが、二つの湖の水色が一味違う、自然の奥深さに目を奪われました。
コンサートの前半はメンデルスゾーンのソナタとモーツァルト。後半はブラームスのソナタと合わせて、彼が心から信頼を寄せたクララ・シューマン(今年生誕200周年)の3つのロマンスをお聞きいただきます。
お盆の時期には山梨県で2つのコンサート。
11日は河口湖オルゴールの森美術館で演奏します。今年3月にパリで初共演し、意気投合したチェリスト、グレイ理沙さんとデュオ。
15日の清里の森音楽堂でのリサイタルは、先日偶然成田空港で鉢合わせするほど息ぴったり(?)なピアニストの小林侑奈さんとの共演です。
そして31日は横浜・本門佛立宗妙深寺で正住真智子さんとデュオコンサートです。
皆様にお会いできるのを楽しみにしております。