【恩師との再会】
ミュンヘンから電車で約2時間。冷たい雨が石畳を濡らすザルツブルクを2月中旬に訪れました。
2014年から2年間、モーツァルテウム大学に通った懐かしの場所。
久しぶりに眺める景色、街の匂いは当時と変わらず、薄れていた記憶も鮮明に蘇ります。
ただ、オーストリアでの思い出は楽しいものばかりではありません。
雨の多い気候、よそ者を必ずしも温かく迎えてくれない文化。コンクールが続く日々も必死でした。
あれから約5年。
多忙な中、時間をつくってくれた恩師ピエール・アモイヤルとの再会も、初めは緊張でぎこちなかったかもしれません。
それでも、かつての失敗談や互いの近況を話し合ううちに自然と笑みが浮かんできました。
苦しさを味わった時間も無駄ではなかった―。
夜の車窓から見慣れた街の灯りが遠ざかる時、郷愁に似た不思議な思いが芽生えていました。
ミュンヘンでは2人のピアニストと共演を重ねました。
柏本佳央理さんとは、モーツァルトやベートーベンなどの作品に加えて、芥川龍之介の三男として知られる芥川也寸志の「ヴァイオリンとピアノのためのバラッタ」を披露。
会場が変われば、音の響きも、それを感じ取って紡ぎ出す演奏も変わります。
印象的だったのはチャペルでのコンサート。
石造りの建物は日本ではあまり経験することのない音のリフレクションと長い残響を生み、同じ楽曲でも一味違う時間になりました。
尾崎未空さんとはモーツァルトやグリーグのソナタ、サラサーテの「カルメン幻想曲」などボリュームのあるプログラムをお届けしました。
英語でトークを挟みながら約2時間。
演奏後はミュンヘンでお世話になっている方々から温かい拍手と言葉を頂き、今後への励みになりました。
2月末には黒岩航紀さん(Pf)とディナーコンサートで初共演しました。
藝高、藝大の後輩である黒岩さんとは昨年、NHK-FM「リサイタル・パッシオ」の収録スタジオで偶然再会し、今回の機会が実現。
10月に放送された「リサイタル・パッシオ」での齊藤一也さん(Pf)とのデュオは好評を頂き、3月15日(日)午後8時20分~55分、3月20日(金)午前9時20分~55分と2回にわたって再放送されます。
クライスラー、ルクー、サン=サーンスに、司会の金子三勇士さんとのトークと聴き所満載。
是非お楽しみください。
新型コロナウイルス感染拡大の影響でキャンセルになった3月の「ミュンヘントリオサロンコンサート」2公演は、来年に延期して実施されることが決まりました。
今月は18日(水)赤坂にて、バンクーバー冬季オリンピック代表の小塚崇彦さん、ピアニストの松岡優明さんと「フィギュアスケートとクラシック音楽の夕べ」を企画。
22日(日) の「サンデーブランチクラシック」(渋谷)は、片山柊さん(Pf)と2度目の共演になります。
24日(火)は西麻布の霞町音楽堂にて、前半はメンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第6番」をメーンに、後半はピアノとのデュオをお楽しみ頂きます。
4月12日(日)には赤坂ストラドホールにて「ストラディヴァリウス」「グァルネリ」「アマティ」の三大銘器を一度にお聴き頂ける特別コンサートを予定。
落ち着かない日々が続いていますが、ひとときの安らぎをお届けできれば幸いです。