【新たな挑戦】
テレワークにオンライン飲み会、スマホやクレジットカードの非接触型決済。
終息が見えない新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活に様々な変化をもたらしています。
コンサートの中止や延期が続く音楽家にとっても、それは同じ。
先日、人生で初めてリモートでピアノとのデュオを収録し、ツイッターで公開しました。(https://twitter.com/MaiSuzuki_vn/status/1261322111584366592)
「おうちでパデレフスキ」の企画で弾いたのは、ヴァイオリンソナタの第一楽章。
若くして妻と死別し、音楽への献身を決意したイグナツィ・パデレフスキの作品です。
政界に進出してポーランドの初代首相を務めたことでも知られる彼のメロディは、悲しみや苦しみを乗り越えようとするエネルギーに溢れています。
まるで自分を奮い立たせるような音楽に、コロナ禍で窮屈な時間が続く現状も重ね合わせました。
ホールやサロンでの演奏では、共演者と阿吽の呼吸で音を紡ぎながら、駆け引きも楽しんでアンサンブルを展開していきます。
しかし、オーストリアに拠点を置くピアニストとの初めての挑戦では、既に収録されたピアノパートにヴァイオリンを合わせました。
これが想像以上に至難の業。
合わせて弾く練習を繰り返し、収録も何度か撮り直して何とか完成することができました。
後援会のメンバー向けには、日ごろからのご支援へ感謝の気持ちを込めて動画を配信させて頂きました。
いつも演奏させて頂いているコンチェルティーナ銀座では、音楽家支援プロジェクトとして昨年7月の王子ホールでのコンサート動画が販売開始となりました。(http://www.konzertina.jp/index.html)
収益はコンサート中止が続く出演者に還元して下さいます。
5月19日時点で84名もの方からご支援を賜ったそうで、活動の場を失った音楽家として心からご厚意に御礼申し上げます。
4歳から始まったヴァイオリン人生で、初めて自分で時間の使い方を選べる日々を送っています。
小学生の頃から練習、コンサート、コンクールに追われ、受験勉強など学業と音楽の両立にも苦心。いかに時間を削り出すかを考えてきました。
常に次のゴールが設定された状態で休みなく駆け抜けてきた自分にとって、突然目標を失った戸惑いは拭えません。
ただ、ヴァイオリンよりも先に興味を持ったチェロを弾いてみたり、小中学校で学んだフランス語に再び取り組んでみたり、これまで息つく暇のなかった毎日に変化が生まれているのも事実です。
音楽を通して感じていた人との繋がりはウイルスの影響を受けていますが、安否を案じる電話を頂戴したり、メッセージを頂いたりと皆様の温かい心に触れています。
ヴァイオリニストになりたいと思った原点は、自分の奏でる音楽が周りに笑顔をもたらす喜び。
そして音楽の魅力は、喜びや感動だけでなく、悲しみや苦しみも許容する懐の深さにあります。
音楽は「不急」ではあっても「不要」ではないはず。
だからこそ、人の心に寄り添える音楽を奏でていきたい。
改めてそう感じています。