ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.49

【平和

 

ヨーロッパでの生活では、紛争や戦争は、日本で生活している時よりも身近にありました。

同世代のクロアチア人やセルビア人は紛争を経験しています。クロアチアでコンサートに出演した翌日、共演したセルビア人と共に郊外の街を歩きました。終戦から27年が経つ今でも、爆撃を受けた建物がそのまま残っていました。演奏会では、クロアチア人とセルビア人が入り混じり分け隔てなく一つのステージを作り上げましたが、一度街にでると、彼のセルビア訛りのクロアチア語に反応した市民から差別を受けることは日常茶飯事だそうです。当時の出来事や亡くなった家族、友人たちの話、そして現在も続く苦しみの話をしてくれた友人の、深い悲しみを湛えた目は今でも忘れられません。

旧ソ連出身の友人からは、ソ連が崩壊したために着の身着の儘、寒さに震えながら一家で亡命し、食べるものも無い、辛い子供時代の記憶を話聞いたこともあります。

ウクライナ人の友人は、ロシアとの間にいつ何が起こるかわからないからと、他国の国籍を取得する準備をしていました。

私がザルツブルクに住んでいた2015年、シリアから沢山の難民がドイツを目指して移動しましたが、ザルツブルクはその通過点にありました。日常の風景が一変し、駅の周りは路上で寝泊まりする人々で埋め尽くされ、ドイツへ向かう電車は段ボール箱を抱えた人々で満員になっていました。

直接触れた戦争や紛争の空気は、肌に突き刺さり、胸が締め付けられました。

戦争という暴力の行使は、どんな理由があっても許されるものではありません。それが終わってからも長い間、街や人々の心、人間関係に深い爪痕を残します。

ロシア人、ウクライナ人のクラスメイトや音楽仲間達の顔を思い出しながら、人々が憎しみ合うことなく、平和と安全が一日も早く訪れることを心から祈るばかりです。

今月最初のコンサートは、珍しい編成でのプライベート公演でした。主催者からのリクエストにお応えして、箏、テノール、ヴァイオリン、ピアノによるアンサンブルでしたが、この編成のために書かれたオリジナル曲はありませんでした。ですが、そのことがかえってプログラムに無限の可能性を与えてくれ、メンバーで意見を出し合いながら、選曲、編曲をして作り上げてゆきました。この本番では、いつもとは一味違う達成感がありました。

6日は汐留ホールにて、ピアニストの福原彰美さんとブラームスのソナタ第1番「雨の歌」とフランクのソナタを組み合わせたリサイタルでした。ロマン派のヴァイオリンソナタは特にピアノの役割が大きく、何度も演奏した事がある曲でも、共演者によって演奏や解釈が大きく変化します。

特にブラームスを得意とする福原さんとの共演は、しっとりとした雰囲気でありながら時に情熱的で、新しい世界を広げてくれました。

今後、第2番と第3番のソナタも共演予定なので、今から楽しみです。

19日は芸大の同級生のメンバーによる弦楽合奏「東京芸大ストリングス」とヴィヴァルディの『四季』」より「春」のソロを共演し、その他のプログラム(モーツァルトとチャイコフスキー)ではコンサートミストレスを務めました。

会場の旧奏楽堂がある上野は、私が高校、大学と7年間通った地です。駅や上野公園の周りはどんどん開発が進み、行くたびに変化に驚きます。共に学んだ仲間たちとの共演も同じように、彼らの変化や成熟を音楽を通して感じ、久しぶりの再会を楽しみながらも刺激多き本番でした。

21日は、産声を上げたばかりの新作の室内楽、大変な難曲を2曲演奏しました。佐原詩音さんの尺八クインテット「透明な空気、不透明の記憶」はリズムや拍子が非常に複雑でしたが、メリハリのある2つのテーマが織りなすストーリーはとてもわかりやすく、練習を重ねるたびに佐原さんの世界観に引き込まれました。

久保哲朗さんの弦楽四重奏「Shadows Study」は、シンプルなリズムながら複雑な音列の演奏が難かしく苦戦しましたが、全員の音が合わさると立体的な響きが生まれ、動きのある3Dの物体と、それを追う2Dの影が表現されるようでした。

 

この久保さんの作品は、ヴァイオリンコンチェルトとして改作されたヴァージョンで、3月15日にソロを演奏します。こちらは、他にもさまざまな楽器による新作コンチェルトが全部で4作品初演される公演。それぞれの作曲家によるユニークな世界観をどうぞお楽しみに!

 

他にも、3月もさまざまなコンサートが予定されています。

埼玉と横浜で、ミュンヘンで共に学んだ尾崎未空さんとデュオリサイタル。6日の埼玉の公演ではスラブとドイツの名曲に焦点を当てたプログラムを、12日の横浜の公演では、ベートーヴェンとブラームスのソナタをメインにお届けします。ミュンヘンの風を感じていただけますように。

 

20日は、日本舞踊とバレエとの共演。2020年に東京都のコロナ関連芸術支援事業「アートにエールを!東京プロジェクト」で創作した「文化の架け橋」のメンバーで、和洋コラボレーションの舞台です。「文化の架け橋」の映像作品ははこちらからご覧いただけます。

 

翌21日は、渋谷・美竹清花さろんにて同級生で長年アンサンブルを重ねてきた實川風さんとデュオリサイタル。CD「Mai favorite」で録音したプーランクのソナタに加えて、ドビュッシーとラヴェルのソナタを演奏します。フランス印象派の音楽に是非浸りにいらしてください!

 

会場でみなさまにお会いできますのを楽しみにしております。

鈴木舞・尾崎未空 デュオコンサート 〜ドイツとスラブの名曲〜
2022年3月6日(日)14時開演

ギャラリーカフェラルゴ (JR埼京線南与野駅)地図

共演:尾崎未空(ピアノ)

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第一番「雨の歌」

ショパン:バラード第一番
ショパン/ミルシュタイン:ノクターン 遺作、他

詳細はこちら

ご予約、お問い合わせ

Tel: 048-749-1721/Mail: cafe-largo@dream.jp

鈴木舞・尾崎未空 デュオリサイタル ~ミュンヘンからの調べ~

2022年3月12日(土) 16:30 開演

音楽サロンAria(横浜市)地図
共演:尾崎未空(ピアノ)
ベートーヴェン: 
ヴァイオリン・ソナタ 第3番、他

詳細、チケットはこちら

Hyper CUBE
2022年3月15日(火)19時開演
台東区生涯学習センター ミレニアムホール 地図
共演:新田ユリ(指揮)
久保哲朗作曲:ヴァイオリン・コンチェルト
お問い合わせ先:que315710@gmail.com
文化の架け橋
2022年3月20日(日)
港区文化交流館 地図
共演:尾上博美(日本舞踊)、岡田晃明(バレエ)
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2022年3月21日(祝月)
美竹清花さろん(渋谷)地図
共演:實川風(ピアノ)
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 
プーランク:ヴァイオリン・ソナタ
三越カルチャーサロン ランチコンサート
2022年5月27日 11:45~
Q.E.D.CLUB(中目黒)地図
共演:齊藤一也(ピアノ)
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第五番「春」、他
お問い合わせ先:03-3274-8595
お問い合わせはこのメールにご返信ください。

2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
詳細はこちらからご覧ください。

https://maiviolin.com/fanclub/

鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中!
マイ・フェイバリット ”Mai favorite”
ピアノ:實川風、山田和樹

大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。

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