電話やインターネットのない時代、手紙は遠くにいる人とつながりの持てる唯一のツールでした。届くまでの時差のことも考えると、殺風景な部屋の窓辺で手紙を読む女性の姿に、私は孤独の表現を感じとっていました。
修復を経たこの作品には、愛の象徴であるキューピットがとても大きく描かれていて、手紙とキューピットどちらがモティーフなのか惑わされてしまうほどその存在感は大きなものでした。
このキューピットには、「正直で誠実な愛だけが嘘や偽善に打ち勝つことができる」という意味が込められているそうです。つまり、孤独とは正反対の、歓びと自信に満ちた絵だということが分かったのです。
音楽でも、19世紀から20世紀前半までは、バロックや古典の作品を時代の趣味に合わせた解釈を書き加えた楽譜で演奏するのが当たり前でした。しかし20世紀後半からは作曲者のオリジナルに基づいた原典版の使用が広まり、作曲家の意図に近づき、それを表現しようとするようになりました。フェルメールを観賞しながらふとそんなことに思いを巡らせました。