【神秘の地、マチュピチュ】

クスコ交響楽団とのコンサートの翌日は、音楽の余韻が心に残るクスコの街を後にし、神秘の地、マチュピチュに足を伸ばしました。

お昼前にホテルを出発し、大自然の景色を楽しみながらの電車とバスの旅。車窓は次第にアンデスの雄大な山々へと移り変わり、トータル７時間程かけてマチュピチュ村に到着しました。

そこで一泊し、翌朝更にバスに揺られること30分。ようやく遺跡の入り口に辿り着きます。

入場ゲートを越えると、時の流れを忘れてしまうような光景が拡がっていました。雄大な遺跡目の当たりにした私は、息を呑む美しさに心奪われました。時を超えた遺跡を歩くとインカ帝国の息吹が感じられ、遠い過去と現代が交差するタイムカプセルにいるかのような、深い印象を受けました。

古代インカ帝国の遺跡マチュピチュは、ペルーのアンデス山脈に抱かれる雲上の都市です。ユネスコ世界遺産に名を連ねるこの古代都市の石造りの構造物は、その創造技術が現代にもなお解明されぬまま、多くの旅人たちの好奇心をかき立ててきました。

アンデス山脈は、かつての海底が隆起して誕生した地で、周囲には標高6000mを誇る雪山と、麓には深い緑のジャングルが広がります。標高約2450mの尾根に位置するマチュピチュは、ジャングルから上がってくる高温多湿の空気と、雪山から吹き込む風が混ざり合い生み出される雲と多雨の気候により、アマゾン川に注ぐ豊かな水源を作り出しており、独自の植物を育む地となっています。

ジャングルの一年の平均気温は30度を超え、標高3500mのクスコは8度でありながら、その中間に位置するマチュピチュは温暖な17度の平均気温を保っているのです。

ここマチュピチュが世界中からの旅人たちに愛される観光地となった歴史は、意外にも日本人の手によって築かれたものでした。野内与吉さんという人物が、ここに湧き出る温泉に魅せられ、初めて鉄道と宿泊施設の基盤を整え、当地に村をつくり、マチュピチュ村の初代村長となりました。

切り出した石を積み上げて作られた建造物には、当時は茅葺き屋根がかけられていたそうです。

神殿は特に緻密に建てられており、隅から隅まで、どの石も四角く完璧に切り取られ、石の隙間には針一本も通らないと言われるほど巧みに積み上げられています。

電気のない時代に彼らがどうやってこれらの重い石を運び、それぞれの石を完璧に整形して隙間なく積み上げることができたのか、その技術は現代においても解明されていません。

また、それらはただ単に積み重なっているのではなく、内部には強度を高めるための工夫が凝らされています。石を精確に切り出し、互いにかみ合わせるように配置することで建造物は地震に強い構造を持ち、何世紀にもわたってその姿を保ち続けているのです。

インカの文化では日本の神道と同じく、多神教でした。その中の太陽を司るヴィラコチャをこの古代遺跡では祀っており、街全体が日時計の構造になっています。多くの女性のミイラが見つかったことから、ここでは選ばれし巫女たちが暮らし、儀式がとりおこなわれていたと言われています。

独特な気候による冷たい風や温かい空気を肌に感じながら遺跡の奥へ進んでいくと、重厚感のある大きな花崗岩が祀られていました。この岩には強いエネルギーの波動があると信じられていたそうです。他の観光客に倣って手を当てると、当時の人々のこの土地への情熱が伝わってくるようでした。

次回も引き続き南米の旅をお伝えします。

今月は、11月上旬にドイツ・ミュンヘンでの4公演を経て、三ヶ月間に20公演にわたる海外ツアーを終えました。日本に帰国し、息つく暇もなく国内での演奏活動を再開しています。ミュンヘンでのコンサートの様子は追ってお伝えしていきます。

帰国後国内最初のコンサートは、滋賀県のわたむきホールにてインリーチ。齊藤一也さん、グレイ理沙さんとのトリオで、日野町の小学校高学年500人に向け楽器紹介やクイズを交えて演奏をお届けしました。ベーゼンドルファーのインペリアルという特別なグランドピアノがあり、豊かな残響を持つ贅沢なホールです。元気一杯の子供達は各々に反応を返してくれて、私たちも元気をもらいました。

次は企業の歴史に新たなる章を刻むお祝いのイベントにて、飯森範親さん指揮、パシフィックフィルハーモニア東京と共演しました。会場には1000人を超える社員様たちが詰めかけ、華やかな会に相応しい名曲を演奏しました。オーケストラの皆さんも和気藹々と、しかし緊張感を纏いながら非常に良い雰囲気で、とても楽しい共演でした。

今月最後の演奏はご自宅に招かれて、チェリストのグレイ理沙さんとのデュオでホームコンサートでした。しばらく会話が難しかった、音楽が大好きなおばあさまへのご家族からのプレゼント。プログラムの中盤におばあさまははっきりとした意識を取り戻し、涙を流しながら力強い声で、「素晴らしいね・・・」と何度も声をかけてくれました。久しぶりにお話しされてご家族の皆様も感極まった様子で、私までもらい泣きしてしまいました。音楽の力を届けることができたと実感した経験、私にとっても忘れ難い一日となりました。

来月も国内で多くのコンサートが予定されています。

2日は表参道の非公開の能舞台にて、後援会主催のコンサートです。公演の前後の交流お食事会は満席となっておりますが、会員でない方もコンサートは歓迎致しますので、ぜひお申し込みください。

関西での公演もあります。5日の兵庫県での杉田恵理さんとヴァイオリンとヴィオラのデュオでは、クリスマスらしいプログラムをお届けします。7日は大阪で、小林侑奈さんとリサイタルを行います。ブラームスがメインの美しいプログラムです。お近くの方はぜひお運びください。

9日は大東文化大学大東文化会館にて、ピアニストの宇根美沙恵さんと名曲コンサートを行います。入場無料ですのでぜひお越しください。

10日は、東京タワーの麓、御成門でワンちゃんと聴けるコンサート第4回。ピアニストの則行みおさんと、今回はクリスマスらしい癒しあり、情熱ありのプログラムを演奏します。小さなお子様にもお越し頂けますのでご家族でぜひお越しください。

17日は、美味しいイタリア料理とお楽しみ頂けるコンサート。則行みおさんのピアノと共に名曲の数々をお楽しみください。

27日には、横浜の音楽サロンAriaにて、尾崎未空さんとオールフレンチプログラムをお届けします。ロマンチックなフォーレのソナタをメインに添えた華やかなプログラムです。

更に、南米で共にツアーをしたピアニスト、ダノール・キンテロスさんが来日し、ギタリストのアレクシス・バジェホさんとのトリオで、南米の音楽を3公演、16日・名古屋、18日・赤坂、19日・池袋にてお届けします。

会場でお会いでいますのを楽しみにしております。