ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.61

【子供たちに音楽を〜文化を大切にする社会へ

ヨーロッパに住んで驚いたことの一つは、クラシック音楽が人々に広く浸透していることでした。

私が演奏家だと伝えると「クラシックには全く詳しくない」などと言いつつ、多くの人が有名なシンフォニーの主要な部分を知っていて、歌ってくれたりしました。

欧州では、まるで家族で食事にでも行くような気軽さで、コンサートへ出掛けます。

日常的に教会や個人宅でもコンサートが開かれ、音楽に触れる機会がとにかく多いのです。

クラシック音楽は元々ヨーロッパの音楽だから、と思われるかもしれませんが、果たして日本人は、日本の古典音楽をどれだけ知っているでしょうか。

文化的なものへの関心の高さは、幼少期にどれほど芸術に触れる機会を持てるかが大きなポイントのように思います。

欧州では国によって美術館は大学生以下が入場無料であったり、通常2万円程のコンサートの座席も学生以下であれば1000円程度でチケットを購入することが出来ます。

そのためか週末の昼公演では子供連れが非常に多く、若い年齢層が質の高い芸術に触れられるハードルの低さに驚いたものです。

さらには子供や大学生のための公演が無料で行われることもあります。その内容は決して子供向けのものはなく、一般公演で演奏されるプログラムを嚙み砕いて解説を施しながら聞かせるなど、本格的なものです。

 

幼年期の環境・教育がその後の人生に大きな影響を与えるように、幼いうちから一流の芸術に触れる機会を作ることが文化を育むうえで大切なことなのかもしれません。

日本でもヨーロッパほどではないものの、私たち演奏家が学校などに出かけていって演奏を届けるアウトリーチが行われています。

子供たちがクラシック音楽に触れられる機会が少しでも多くなればと、私もアウトリーチ活動に積極的に取り組んでいます。

 

日本では、アンパンマンやディズニー等の楽曲をリクエストされることも多く、それを勿体ないと感じてしまいます。

もちろん子供たちは馴染み深い音楽を聴いて喜ぶと思います。しかし、それは本当に芸術鑑賞としてあるべき姿なのでしょうか?

 

「子供たちが飽きてしまうのではないかと不安」などの声が聞かれますが、クラシック音楽だけでも、飽きさせないプログラムを組むことは可能です。

私は観客となる子供たちの年齢に合わせて、短めの曲を選んだり、演奏の合間に楽器の説明や曲目解説のトークを入れるなど、工夫を凝らして臨んでいます。

せっかくクラシックの音楽家を呼んでくださるのならば、流行り曲ではなく、機微を重んじる繊細なクラシック音楽で、子供たちの心に訴えかけるチャンスを頂きたいと思っています。

音楽が、学校の通常の科目と大きく異なるのは、正解が無いということです。

各々に想像を膨らませることこそ鑑賞と言えます。

人それぞれの正解があってよいのです。

このことをもっと伝えていきたいと思いますし、鑑賞から得られる想像力は全てに通じるものであり、鑑賞教育はきっと将来的にも役に立つものであると信じています。

 

子供達はとても正直なので、公演では誤魔化しの効かない独特の緊張感があります。

その反面、目を輝かせて聞いてくれたり、演奏中に、しんと静まり返る瞬間があったり等、良い手ごたえを感じるととてもエネルギーをもらえます。

 

今年もいくつかのアウトリーチ、インリーチ(子供達にホールに来てもらい公演を行うこと)の予定があります。

日本の子供たちに、私たち演奏家が人生をかけて取り組んでいる音楽の魅力を少しでも感じてもらえるよう、取り組んでいこうと思います。

今月は5日に、福原彰美さんとストラドホールでリサイタルを行いました。

「ドイツロマン派の旅路」というタイトルで、ブラームスや、女性作曲家のクララ・シューマン、そしてドイツで生まれ育ったイグデスマンという現代作曲家の曲をプログラムに組みました。

日本初演としての責任を感じながらいつも以上に気を引き締めて臨んだイグデスマンのソナタは、お客様にも楽しんでいただけたようで「また聞きたい」という嬉しいご感想を多数寄せていただきました。その声にお応えして、51日の公演で福原さんと再演の予定です。

次の週は埼玉の蕨市のホールで、弦楽四重奏とサンドアートのコラボレーション公演に出演しました。

プログラムのメインは名作中の名作、モーツァルトとドヴォルザーク。素晴らしい共演者とのフレキシブルなアンサンブルで、スリルと心地良さが共存する、本番ならではの感覚が生まれました。

サンドアートとのコラボレーションでは、サンドアートアーティストの伊藤花りんさんと一緒に選曲した、私のソロによるパガニーニのカプリス第24番と、吉松隆の弦楽四重奏「アトムハーツ」をお届けしました。

アトムハーツはロックの要素を含む作品でメリハリがあり、ストーリーを織りなすサンドアートとの相性が良いようでした。

私が曲から感じていた宇宙的なイメージに重なるように、宇宙をテーマとしたアート作品を披露して頂き、感性が重なったようで嬉しくなりました。

サンドアートはちょっとした動きで絵の内容を大きく変えていくため、前の場面からどのように変化させるかとパズルのように考えるそうで、次々に現れる美しい画面に感動の連続でした。

19日には岡山で行われた邦楽のコンサートにゲストとして出演させて頂きました。

ミュンヘンでの共演で出会った邦楽界の重鎮、箏奏者の米川敏子先生、チェリストの柳橋泰志さんと共演しました。

私を除く出演者は皆華やかなお着物を身につけており、私一人だけがドレスでの出演でした。「ドレスが素敵」と多く声をかけてくださったのですが、私から見ると皆様の着物が美しくて、少し恥ずかしい気持ちになりました。

自分が出演しない演目は客席から聴くことができました。大ホールで聴く大編成の箏や尺八のアンサンブルは、まるで森の中で音楽を聴いているような不思議な感覚に包まれました。森の木々のざわめきや風の音が楽器から流れてくるようで、癒しの時間でした。

26日は、初めての試みとして、ペットも一緒に参加できるコンサートでした。

高校からの同級生で、ミュンヘン音大でも共に学んだピアニスト、則行みおさんとの共演で、クライスラーやサラサーテの名曲をお届けしました。

多くの可愛らしい犬達がグランドピアノのあるピアノカフェ・ベヒシュタインに集まり、開演前は活気あふれる雰囲気に。しかし演奏が始まると落ち着きを取り戻し、温かい雰囲気の中で、休憩込み2時間のプログラムがあっという間に感じました。

「わんちゃんと一緒にリラックスできた」「音楽を通してわんちゃんとより良いコミュニュケーションが取れたようだった」等の嬉しい感想をいただき、また開催してほしいとの要望にお応えして、早速次回の公演が決定しました。5月21日にまた大好きな犬に囲まれて演奏できることが今から楽しみです。

今後のコンサートは、3月8日に美竹サロンにて「北欧の巨匠たち Vol.1」と題し、尾崎未空さんと共演します。

フィンランドのシベリウス、ノルウェーのグリーグ等を取り上げます。

あまり演奏される機会が多くありませんが、妖精の国と言われるような神秘的な雰囲気と、海や大地からのエネルギーを感じるような雄大な雰囲気を併せ持つ曲たち。あたたかい音色を持つ尾崎さんのピアノ、そして太い低音と繊細な高音を持つアマティとの相性が良いように感じています。

難曲の多い大変なプログラムではありますが、北欧の音楽に特別な魅力を感じながら準備を重ねておりますのでぜひ皆さまお越しくださいませ。

 

会場で皆さまにお会いできるのを楽しみにしております。

鈴木 舞&尾崎 未空 北欧の巨匠たちvol.1
2023年3月8日(水) 19時開演   
美竹清花さろん(渋谷)地図  
共演:尾崎 未空(ピアノ)
詳細はこちら
全国ジュニア音楽コンクール入賞者記念演奏会 作曲部門
2023年3月19日(土)11:15開演
桐朋学園 仙川キャンパス 宗次ホール 地図
作曲、共演:和田なごみ(ピアノ)
ポール・スチュアート ヴァイオリン リサイタル
2023年4月23日(日)、5月7日(日)14時〜、15時〜
ポール・スチュアート 青山本店(外苑前)地図
入場無料
オマージュとヒストリエ
2023年5月1日(月)2日(火)19時開演
杉並公会堂 小ホール(荻窪)地図
共演:福原彰美、齊藤一也(ピアノ)他
Concert with DOGs
2023年5月21日(日)
ピアノカフェ・ベヒシュタイン(御成門)地図
共演:則行みお(ピアノ)
ペットやお子様にもお越しいただけます。
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2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
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