ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.62

1学年40人の音楽高校

3月、温かくなり桜の舞う季節となりました。この時期になると学校の卒業や受験合否の報告などが飛び交い、私も自分の高校や大学受験を思い出します。

私は東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校(通称:芸高)という、音楽に特化した高校で勉強しました。

 

芸高は、普通科の高校とは異なる部分が多くあります。

試験科目は一般の学科に加え、音楽科目の専科実技演奏、副科ピアノ演奏、ソルフェージュという楽譜を読んだり歌ったりする訓練、音楽理論の楽典、音楽を聴いて楽譜に書き起こす聴音等が受験内容でした。

また、附属高校といえども芸大にはエスカレーターで入れるわけではなく、外部の受験生と同じ条件での受験となります。

高校受験のための舞台練習

クラスは一学年にひとつで、教室にはグランドピアノがありました。人数は40人ほどで、そのうち半分くらいを占める地方出身者は、高校時代から既に独り暮らしです。ピアノ10人、バイオリンは10人弱、その他弦楽器、管楽器、邦楽科、作曲、声楽など。年によっては、合格者がいない科もあります。

3年間クラスメートも担任の教員も変わりません。受験科目と同様に、一般学科と、オーケストラ等の音楽関連の授業がありました。

 

ソルフェージュ等の一部の音楽科目では、全ての学年の生徒をレベルによって10程のクラスに分け、他の学年の生徒と一緒に授業を受けます。年齢の違う人たちと共に学ぶのが当たり前の環境で、すぐに学年を超えて打ち解け、敬語を使わなければならない雰囲気もなく、上下関係は厳しくありませんでした。

同じ門下の仲間と入学式で

高校に入るまではバイオリンと受験科目だけを勉強してきた私は、今となっては恥ずかしい話ですが、それ以前にはリコーダーとクラリネットの違いもよく知らなかったのです。

しかし芸高では様々な楽器を専攻する友人との交流が自然と生まれ、世界が広がりました。

オーボエ奏者の人たちが、演奏時に口を当てる木製のリードの部分を皆それぞれ自身で制作しているのを見て驚いたものです。邦楽の奏者が縦書きの楽譜を使っていたり、楽譜とは異なる高さの音を出す移調楽器の存在もその頃に知りました。

また、ヴァイオリン専攻の生徒は、オーケストラか室内楽の授業の中で一度はヴィオラを演奏することがが必修となっていて、ト音記号やヘ音記号とはまた異なる記号によって書かれ、アルト譜表を読む必要がありました。

普段は皆で協力して授業を受け、音楽を作り上げる仲間ですが、コンクールの時期になると雰囲気が一変します。国内屈指の音楽高校なので、主要なコンクールに同級生たちが揃ってエントリーします。クラスメートがライバルに変わるのです。それゆえ、人間関係も一筋縄ではなかったと感じます。一般的なテストならば回答の正否で点数が出ますが、音楽コンクールは本来点数を付けようがないものでの競い合い。それが時には確執を生んでしまうこともありました。

 

また、修学旅行はなんと演奏旅行。受け入れ先の秋田で、クラスで力を合わせて1つのコンサートを作り上げました。このコンサートはプログラム決めから生徒たちで行いますが、個性や主張の強いクラスメイトばかりでしたから、話し合いも紛糾し、決め事一つするにも本当に大変でした。

学園祭での演奏

秋になるとオーケストラの定期演奏会があります。光栄なことにコンサートミストレスに選出して頂き、一流の指揮者である小林研一郎先生の指揮のもと、演奏を行いました。下振りの指揮者の先生と曲を仕上げ、演奏会直前に小林先生来を迎えて指導を受けました。小林先生が指揮台に立つと、場の空気が引き締まり、オーケストラから普段とは異なる、一層中身の濃い音色や音楽引き出された驚きと感動は、今でも鮮明に記憶に残っています。

作曲科の試験での演奏後にメンバーと

素晴らしい経験も、大変なことも様々にあり、悩みも多い高校時代でしたが、この学校で得た何よりの宝物は、同じように演奏家を目指して切磋琢磨する仲間とアンサンブルできたことでした。

そうやって苦楽を共にした高校時代のクラスメートたちは今第一線で活躍しており、度々共演しています。

今となっては共に音楽をしながら生きるかけがえのない仲間なのです。

そんな当時を思い出してしまうこの季節。新たに音楽大学や音楽高校に入学する皆さんを、苦労もあるとは思いますが、ぜひとも充実した学校生活を送れるようにと、先輩として陰ながら応援しています。

同級生で活動を続けている、東京芸大ストリングス

さて、今月の活動報告です。8日に渋谷美竹サロンで北欧音楽の演奏会がありました。特に大好きなシベリウスの作品「6つの小品」は、まるでコンチェルトを演奏するような熱量と超絶技巧が求められる難曲。その美しい旋律に励まされながら練習を重ねました。お揃いのドレスで出演したピアニスト尾崎未空さんの、包容力あるピアノの音色と共に、大迫力の北欧音楽をお届けしました。

来年に予定されている北欧シリーズ第二弾も今から楽しみです。

19日には作曲コンクールの受賞者コンサートで演奏をしました。新しい桐朋学園の宗次ホールにて、コンクールで一位を獲得した中学三年生の和田なごみさん作曲のヴァイオリンソナタ「オパール」を演奏。彩とりどりの煌めきを感じるフレッシュさのなかにフランスのエスプリを感じる曲で、練習していてわくわくしました。ピアノを担当した作曲家の和田さんと、音楽の方向性を相談しながら綿密なリハーサルを重ね、本番ではお客様も盛り上がり、充実感のあるコンサートでした。

月末には国際ソロプチミストのイベントで演奏しました。共演は高校、大学の同級生のピアニスト、浜野与志男さん。私たちの芸高の演奏修学旅行を協賛してくださった団体の東京支部というご縁もあり、高校時代を懐かしみながらの演奏でした。

今後のコンサートは、4月23日、5月7日の二日間、ポールスチュアートの青山本店で演奏します。音楽をテーマとした香水のポップアップもあります。入場無料ですのでお気軽にお運びください。

4月27日は丸の内の大手町プレイスにて、弦楽四重奏の編成でのミニコンサート。ベートーヴェンなどの名曲をお届けします。

 

5月1、2日は現代音楽のコンサートです。2月に日本初演をして好評をいただいたイグデスマンのソナタや、お相撲のオマージュ作品等、ユニークなプログラムをお楽しみください。

 

会場でみなさまにお会いできるのを楽しみにしております。

ポール・スチュアート ヴァイオリン リサイタル
2023年4月23日(日)、5月7日(日)14時〜、15時〜
ポール・スチュアート 青山本店(外苑前)地図
入場無料
丸の内エリアコンサート
2023年4月27日(木)12:30~
大手町プレイス 地図
共演:土屋杏子 (vn)、橋本恵美(va)、矢口里菜子(vc)
オマージュとヒストリエ
2023年5月1日(月)2日(火)19時開演
杉並公会堂 小ホール(荻窪)地図
共演:福原彰美、齊藤一也(ピアノ)他
Concert with DOGs
2023年5月21日(日)第1部12:00~、第2部16:00~
ピアノカフェ・ベヒシュタイン(御成門)地図
共演:則行みお(ピアノ)
ペットやお子様にもお越しいただけます。
静岡フィルハーモニー管弦楽団 第46回定期演奏会
2023年6月3日(土)18:00開演
静岡市民文化会館大ホール(静岡県)地図
共演:佐々木新平
チャイコフスキー:ヴァイオリンコンチェルト
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2023年6月27日(火)19 時開演
紀尾井町サロンホール(永田町)地図
共演:實川風
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第一番、他
21時より懇親会をいたします。
ご予約、お問合せ
tanaka@gaia-solution.com / 09093177022(田中太郎)
お問い合わせはこのメールにご返信ください。

2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
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鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中!
マイ・フェイバリット ”Mai favorite”
ピアノ:實川風、山田和樹

大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。

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