ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.63

音楽業界にも広がる環境意識

先日、統一地方選挙がありました。皆さまは投票に行かれましたでしょうか。

選挙後に公表された投票率を見ながら、投票率70%という高水準を誇るドイツでの選挙の様子を思い出しました。

投票率もさることながら、何よりも驚いたことは選挙期間中の人々の関心の高さで、選挙が近付くほどに政治の話題で持ち切りとなります。

街ではデモが当たり前のように行われ、友達と集まっても政策の話で盛り上がり、皆が意見を述べます。外国人の私にも選挙や政治の話をしてくれたこともよくありました。

環境やエネルギー問題への関心の高さも驚いたことの一つです。これらの問題にいかに取り組むかが政治の重要課題の一つとして大きく取り上げられています。

農薬から環境を守る「蜂を守ろう」と訴えるデモ。この後、昆虫保護法が法制化された。

そもそも、ドイツを含むEU圏ではエコに対しての意識が高いようです。私は特に電化製品の買い物の際に、そのことを実感しました。お店に並ぶあらゆる電気を使う製品に「エネルギーラベル」というエネルギー効率をA〜Gの七段階でランク付けした指標が書かれており、それを参考に買い物をするのです。電球一つ買うにも、エコを意識させられます。

エコ度の高い製品ほど割高になるものの、各々の経済力と環境意識のバランスを考慮しながら買い物をします。こんなところでも西洋的な道徳観、ノブレスオブリージュの精神が感じられます。

ミュンヘンに住んでいらっしゃる方から最近のドイツの様子を聞かせてもらいました。

高い環境問題への意識は特に若者の間で広まっていて、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんの呼び掛けから始まった「Fridays For Future(未来のための金曜日)」という学校ストライキは、今や欧州で広く普及しており、ドイツでも学校に通う若者たちが金曜日に学校を休んで行うデモ活動が頻繁に行われているそうです。

 

これらの環境活動は音楽界にも影響が広がり、オーケストラのコンサートツアーの組み方にまで波及しているようです。

環境負荷の大きい飛行機での移動を避け、電車などの陸路で回れる範囲でのツアーとしたり、飛行機を使わなければならない遠方へのツアーの際には行った先でより多くの公演を行えるようにスケジュールしたり、といった動きがあるそうです。

ミュンヘンの街の中心を流れるイザール川

日本では、人の集まる場では政治、宗教、野球の話はしない、ということが一種の美徳のように言われることがあります。しかし、殊に政治の話に関しては、私たちが生きるこの世界の様々な問題について直接関与することに繋がります。政治について、ひいては世界の問題について、より良くする為にはどうしたら良いか、一人ひとりが考え、オープンに皆で話し合えるようになれば、と願っています。

4月末のミュンヘンで

今月は、まずワインを飲みながら音楽を聴くイベントで演奏しました。

事前に試飲をし、さまざまな個性を持つ8本のボトルに絞り、それぞれのボトルに対して一曲ずつの演奏を行いました。

ワインの試飲では、その豊かな香りや味わいから飲んだ瞬間に「この曲だ!」と思えるほどに強いインスピレーションを得られたものもあり、音楽との相性の良さを感じました。

味覚に思いを馳せながらの演奏は、普段と異なる趣がありました。

 

23日は青山のポールスチュアート本店での演奏でした。

バッハ、パガニーニ、クライスラーからなる合計30分の無伴奏プログラムを組みました。

普段は旋律楽器としてメロディーを担当することが多いヴァイオリンですが、無伴奏曲の場合はひとりでメロディーと伴奏や和声を奏でる必要があり、それだけ曲の難易度が上がります。

しかしバイオリン一本で奏でる音楽は、特別な魅力があります。ひとりで演奏する孤独感や、全くの自由に音楽を紡げる奔放さ。それらを噛み締めながら演奏しました。

店内ではスクリャービンとドビュッシーの楽曲をイメージした「ラニュイ」による香水のポップアップショップが出ており、その期間内の5月7日にまた同じ会場での演奏があります。

27日には、丸の内プレイスサンクンガーデンにて弦楽四重奏の演奏をしました。

ベートーヴェンがテーマのラフォルジュルネ東京のオープニングイベントで、弦楽四重奏曲、ラズモフスキーの第一楽章と、モーツァルトのディヴェルティメント等の名曲を演奏しました。

お天気に恵まれ、満席の会場で心地よい初夏の青空の下で明るい音楽を奏でながら、来たる夏に想いを馳せました。

来月は1日と2日にオマージュとヒストリエ、二夜連続のコンサート。

私は合わせて6つの曲に出演します。

二日目の最後に演奏するショーソン作曲の詩曲は私にとって思い出深い一曲で、スイス留学で住んでいたモントルーから登山電車で15分程登った、グリオンという小さな街で書かれました。

眼下に広がるレマン湖が、息を呑むほど美しい場所。当時何度もグリオンに足を運び、この曲を深めました。その時々のお天気や時間帯によって、万華鏡のように、時に透き通るような、時におどろおどろしいような、様々な表情を魅せる風景に包まれながら、詩曲に思いを馳せました。演奏するたびに当時のことが脳裏に鮮やかによみがえります。

佐原詩音さんの絵画鑑賞のためのバイオリンソナタでは、ムンクやゴッホ、そして現代の若手画家の四宮スズカさんの絵画作品をアニメーションで観ながらの演奏をお聞きいただけます。

ヴィヴァルディの四季より「春」は、會田瑞樹さんによるアレンジで打楽器との新しいコラボレーション。

野村誠さんの「土俵にあがる15の変奏曲」は、なんとステージ上に力士が登場するユニークな作品です。

久保哲朗さん作曲「雲と鳥」では、ヴァイオリンは儚い雲、ピアノは鳥を担当しながら曲が進み、想像力が掻き立てられる曲です。

多くの新曲初演に立ち会えるコンサート、是非お運びください。

 

5月22日は、わんちゃんやお子様と一緒ににお聴きいただける「with DOGs concert」。

今年2月の公演で大変好評をいただいたシリーズの第二弾です。今回はポーランドやロシアの濃密な音楽をチョイスしました。

 

6月頭には、佐々木新平指揮、静岡フィルハーモニー管弦楽団とチャイコフスキーの協奏曲の共演が予定されています。この協奏曲も、実は住んでいたスイスのモントルーの隣町、クラランで書かれた曲。私のルーツもある静岡での演奏、今からとても楽しみです。

 

会場でみなさまとお会いできますのを楽しみにしております。

オマージュとヒストリエ
2023年5月1日(月)2日(火)19時開演
杉並公会堂 小ホール(荻窪)地図
共演:福原彰美、齊藤一也(ピアノ)他
ポール・スチュアート ヴァイオリン リサイタル
2023年5月7日(日)14時〜、15時〜
ポール・スチュアート 青山本店(外苑前)地図
入場無料
飛鳥Ⅱ 横浜発 新緑の別府・博多クルーズ
2023年5月13日(土)
共演:浜野与志男(ピアノ)
詳細はこちら
Concert with DOGs
2023年5月21日(日)第1部12:00~、第2部16:00~
ピアノカフェ・ベヒシュタイン(御成門)地図
共演:則行みお(ピアノ)
ペットやお子様にもお越しいただけます。
静岡フィルハーモニー管弦楽団 第46回定期演奏会
2023年6月3日(土)18:00開演
静岡市民文化会館大ホール(静岡県)地図
共演:佐々木新平
チャイコフスキー:ヴァイオリンコンチェルト
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2023年6月27日(火)19 時開演
紀尾井町サロンホール(永田町)地図
共演:實川風
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第一番、他
21時より懇親会をいたします。
ご予約、お問合せ
tanaka@gaia-solution.com / 09093177022(田中太郎)
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2023年7月16日(日)14時開演
横浜市港北公会堂(大倉山)地図
共演:實川風
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第一番、他
ご予約: 080 8424 5108
鈴木舞&杉田恵理 デュオリサイタル
2023年8月20日(日)15時開演
美竹清花さろん(渋谷)地図  
共演:杉田恵理(ヴィオラ)
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
詳細はこちら
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2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
詳細はこちらからご覧ください。

https://maiviolin.com/fanclub/

鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中!
マイ・フェイバリット ”Mai favorite”
ピアノ:實川風、山田和樹

大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。

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