ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.64

【洋上のコンサート

豪華客船『飛鳥II』に乗ってきました。人生初の船旅は、船内のリサイタルに出演するための演奏旅行。緊張と興奮が入り交じった旅でした。共演ピアニストは、高校からの同級生で、大学でも一緒に学んだ仲間である浜野与志男さんです。

横浜から博多へ3泊4日の旅。17時に出航すると、セイルアウェイ・パーティーと呼ばれる出航時のセレモニーが港とデッキにて行われ、軽快な音楽の生演奏と共にシャボン玉が飛び交い、気分が盛り上がります。

デッキと対岸で人々が手を振り合う中ゆっくりと船が動き出す様は、まるで映画のワンシーンのようで感動的でした。

 

コロナ明けの今回の旅では、定員800名乗りの船に、これまで100人程度だった乗客が久しぶりに500人を超え、多くの乗客で賑わっていました。乗客の平均年齢は68.5歳と聞いていましたが、その数字を疑うほど若々しく、元気に満ちあふれていました。

乗船してすぐにコンサートの打ち合わせをし、その後船内を案内してもらいましたが、クルージングが初めての私にとって、船内の様々な施設には驚きの連続でした。

乗船してまず目の前に広がるのは吹き抜けのホール。三越等のショップが並び、お土産やグッズを購入することができます。

11階建の巨大な船内には、ダンスホール、イベントホール、カジノ、お茶室、2つの大きな食堂、カフェ、バー、映画館など、多くの施設がありました。また、プール、ジム、大浴場には露天風呂も用意され、まるで移動する観光街のようでした。あまりにも広い船内は、歩き回るだけで歩数計の数字もどんどん増えていきます。

 

出航から30分ほど経った頃、船酔いになってしまいました。持参した酔い止めの薬を飲み少し症状は和らぎましたが、今後の船上生活に不安が募りました。

 

食事が大変充実していたことも、驚いたことの一つです。

冷静さも失われてしまうほど美味しそうな料理が並んでおり、食べることが大好きな私は、多くの料理に思わず目移りをしてしまい、まるで自分が料理番組の出場者になったような気分でした。

 

夕食をお腹いっぱい食べた後は、移りゆく島々の海の夜景を眺めながら露天風呂にゆっくりと浸かりました。船内では、制限付きのインターネットしか使えなかったこともあり、ベッドに早めに入って、ぐっすりと熟睡しました。

 

翌朝、ハンモックに揺られているような心地の良い揺れを感じて目が覚めました。気分はスッキリしていて、その後も気分が悪くなることはなく、船酔いは克服できたようです。

 

窓の外には、常に広大な海が広がっており、進行方向の右手には遠くに日本大陸が見え、左手には時折島が見えるほかは大海原。開放感溢れる素晴らしい眺めでした。

また、船内では様々なイベントやショーが毎日企画されており、リハーサルの合間に社交ダンス教室を初めて体験したり、海が見えるテラスで心地よい時間を過ごしたりでき、船旅を心から楽しみました。

二日目の夜は、いよいよコンサートです。

普段、立って演奏していると多少の地震には気づかないことが多いので、船内演奏もそれほど揺れは気にならないかなと思っていました。ところが実際ステージに立って演奏してみると、想像以上に揺れを感じました。

 

大きな拍手に迎えられてステージに出ていくと、ぐわんぐわんとゆっくり船が上下するのが身体に伝わり、よろけないように足を踏ん張りながらの演奏は、いつもの倍の精神力と体力が必要でした。

実は、多くのコンサートホールでは、ステージからも客席の様子がよく見えるので、演奏中やトークの間もお客様の反応を視覚的にも感じることができます。

 

しかし、今回私が演奏した船内のホールは違いました。スポットライトが強くあたり、ステージから見る客席は真っ暗でお客様がほぼ見えず、曲間のトークではお客様の反応がわかりづらく、不安になることもありました。

 

ただ、演奏中は、まるで聴き手と一体になったかのような感覚に何度か陥りました。お客様が集中して耳を傾けてくださっている時の独特の空気感が、肌に伝わってきたのです。揺れの中で無我夢中で演奏した直後、割れんばかりの拍手とブラボーの声が飛び交いました。

慣れない船上でのコンサートは、多くの温かいスタッフの皆様に支えられ無事に終えることができ、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

 

演奏後には船内で沢山のお客様から声をかけていただき、コンサートの嬉しい感想を伝えていただきました。

船旅の乗客はリピーターが半数以上を占めることが多いそうで、「また飛鳥に乗って演奏してくださいね」とのお言葉に、また洋上での演奏の機会がありますようにと願わずにはいられませんでした。

 

さて、今月最初のコンサートは、現代音楽の魅力を凝縮した二夜にわたるコンサートでした。

初演した佐原詩音さんのヴァイオリンソナタでは、スクリーンに映された絵画を観ながら音楽をお楽しみいただきました。繊細で色彩豊かな絵画とヴァイオリンの旋律が絶妙に調和して、より想像力が刺激される音楽空間となりました。

 

また野村誠さんの「土俵にあがる15の変奏曲」は、本物の力士が舞台に登場する大変ユニークな作品でした。力士と演奏家たちが一体となり、会場中から驚嘆の声が聞こえました。

 

久保哲朗さん作曲「雲と鳥」は、普段あまり耳にすることのできない特殊奏法を多用した個性的な作品で、ピアノとヴァイオリンの特殊奏法から唯一無二なサウンドが生まれました。

 

さらに、両日のプログラムの最後には、ピアニストの福原彰美さんとの共演で、イグデスマンのヴァイオリンソナタとショーソンの詩曲を演奏しました。前者は12音技法をジャズ風に聴かせるファンキーな作品です。後者はスイス留学中に住んでいた家のすぐ近くで書かれた、思い入れ深い作品でした。

7日はポールスチュアートの青山本店にて先月に引き続きヴァイオリンソロのコンサートに出演しました。今回はお客さまのリクエストに応えながら、1部と2部で曲目を替えて演奏。両方通して聴いてくださるお客様もいらっしゃり大変嬉しかったです。普段多く取り上げない無伴奏では、ヴァイオリン一本で音を紡ぐ孤独感や奔放さを噛み締めました。

21日のわんちゃんもお聴きいただけるコンサートでは、平和への祈りを込めて、ロシア、ポーランド、ウクライナの作曲家によるプログラムをお届けしました。2公演のヘビーなプログラムで全身全霊を出し切り、弾き終えた時はフラフラでしたが、会場で演奏を聴いてくれた人懐っこいわんちゃん達に癒され、和やかで楽しい空気に包まれました。演奏者と聴衆、そしてわんちゃん達との一体感を感じられるコンサートとなりました。

6月は3日に佐々木新平指揮、静岡フィルハーモニーとチャイコフスキーのコンチェルトを演奏します。

一年ぶりに演奏するこの曲は、数あるヴァイオリンコンチェルトの中でも大きなエネルギーが込められているだけでなく、思い入れの深い作品です。留学中にスイスで暮らしていた家のすぐ近くで書かれた作品で、更に私はこの曲を献呈されたアウアーの曾孫弟子にあたります。この曲を自分のルーツのある静岡で演奏できることを、心から楽しみにしています。

 

6月は非公開のコンサートが多い中、唯一都内で皆様にお聴きいただけるコンサートは、27日紀尾井町サロンホールでのリサイタルです。高校、大学の同級生で、一緒にアルバムもレコーディングした信頼するピアニストである實川風さんと、フレンチプログラムをお届けします。

メインとなるサン=サーンス作曲ヴァイオリン・ソナタ第1番は、繊細さと情熱を併せ持ったロマンチックな旋律ですが、ヴァイオリン、ピアノパート共に、まるで協奏曲のような超絶技巧で、視覚にも聴覚にも大迫力。

その上アンサンブルもとてもスリリングな曲です。

實川さんとだから演奏できる華やかなプログラムを、是非とも会場で聴いていただき、終演後は懇親会で皆様と楽しい時間を過ごせましたら幸いです。

 

会場でみなさまとお会いできますのを楽しみにしております。

静岡フィルハーモニー管弦楽団 第46回定期演奏会
2023年6月3日(土)18:00開演
静岡市民文化会館大ホール(静岡県)地図
共演:佐々木新平
チャイコフスキー:ヴァイオリンコンチェルト
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2023年6月27日(火)19 時開演
紀尾井町サロンホール(永田町)地図
共演:實川風
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第一番、他
21時より懇親会をいたします。
ご予約、お問合せ
tanaka@gaia-solution.com / 09093177022(田中太郎)
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2023年7月16日(日)14時開演
横浜市港北公会堂(大倉山)地図
共演:實川風
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第一番、他
ご予約: 080 8424 5108
鈴木舞&杉田恵理 デュオリサイタル
2023年8月20日(日)15時開演
美竹清花さろん(渋谷)地図  
共演:杉田恵理(ヴィオラ)
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
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2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
詳細はこちらからご覧ください。

https://maiviolin.com/fanclub/

鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中!
マイ・フェイバリット ”Mai favorite”
ピアノ:實川風、山田和樹

大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。

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