ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.65

【銘器の持つ魅力〜ヴァイオリン聴き比べ

約400年前、イタリアのクレモナで、ニコロ・アマティという職人が創り出した楽器が現代のヴァイオリンの原型となりました。

アマティの弟子たち、ストラディヴァリウスやグァルネリウスなども才能を発揮し、この3人が作ったヴァイオリンは「三大銘器」と呼ばれています。

この伝統は現代にいたるまでヴァイオリン職人たちによって受け継がれ、 数多くのヴァイオリンが世に送り出されてきました。

 

ご縁があって、それらの様々な楽器を弾き比べるコンサートシリーズで演奏する機会に恵まれました。

約100年前、200年前、300年前に作られた、文化的遺産とも言えるヴァイオリンたちが年代順に並び、ストラディヴァリウスを含む6挺のヴァイオリンが一度に集まりました。

ヴァイオリンはまるで人間のようにそれぞれに個性があります。若い楽器は瑞々しく、真っ直ぐ突き進むような音色が響き、年を経るごとに丸みを帯びてふくよかさが増し、より強い独自の個性をもつようになります。

このような個性的なオールドの楽器は、弾きこなすのも一筋縄ではいきません。

その美しい音色を最大限に引き出すためには、力強い音を鳴らしたくても力任せに弾かず、弓と弦が触れる瞬間に圧力を抜いて、振動を解放させることがコツです。

その力加減の塩梅は楽器によって異なるため、楽器と対話をしながら音色を作る作業が大切です。

 

楽器の鳴り方には、「近鳴り」「遠鳴り」との表現があります。若い楽器は近鳴りする傾向にあり、規模の小さな空間で演奏した場合、非常に大きな音が鳴り響くように聞こえる、つまり耳元で圧倒的な音量を感じることができる鳴り方です。

一方、300年程の時を経た銘器は遠鳴りがし、近くでそれほど大きな音に聞こえなくても、大ホールのような広い空間で音がすみずみまで届き、遠く離れた場所でも美しい音色を響かせるのです。

 

演奏した中でも一番感銘を受けたのは、1682年製のニコロ・アマティでした。

特別な包容力のある深く渋い音色が特徴的で、これまで数多くの楽器を演奏してきた中でも、私自身とシンクロする感覚があり、まるで表現したい感情に楽器が応えてくれるようでした。

 

ヴァイオリニストにとってヴァイオリンは、音楽上のパートナーであり、大切な存在です。

相性の良い楽器の出会いは、まさにご縁。文字通りバイオリニストの音楽を支え、一緒に表現してくれる存在なのです。

奏者に合った楽器は、音楽表現を大いに補ってくれます。

その楽器が表現をより磨き上げ、成長させてくれるのは、ヴァイオリニストにとって何よりも幸せなことです。

しっくりと馴染むヴァイオリンに巡り合うことは、まるで運命のようなものなのです。

ところで、「芸能人格付けチェック」というテレビ番組で、様々なヴァイオリンを聴き比べ、銘器ストラディバリウスを聞き分ける企画がありますが、ご覧になったことのある皆さんは、ヴァイオリンの音色を判別できましたでしょうか?

 

聴き比べクイズについて質問を受けた時、私はF1になぞらえてお話ししています。

F1のレースで最高のタイムを出すためには、様々な要素が必要不可欠です。素晴らしい車、メンテナンスする高い技術を持った技師、F1の車でトレーニングを積んだドライバー、そして最後にF1に適したコースなど。

これらが1つでも欠けてしまうと、良いタイムを出すことはできません。

 

同じように銘器の演奏も、素晴らしい楽器があっても長い間演奏されていなかったり、メンテナンスが不十分だと音質が低下してしまい、その魅力も半減してしまいます。

また、その楽器を演奏する奏者がその楽器に慣れているかどうかも重要で、さらに広いコンサートホールでの演奏環境が、より楽器の威力を際立たせます。

つまり、銘器の本領を発揮するためには、いくつかの要素が揃わなければならないということです。狭いスタジオで、マイクとテレビのスピーカーを経た音では、聞き分けるのが難しくて当然です。

是非演奏会に足を運んで、生のヴァイオリンの音色を楽しみにいらしてください!

さて、今月最初のコンサートでは、静岡交響楽団とチャイコフスキーの協奏曲を演奏しました。

前日に静岡でオーケストラとのリハーサルを行うために新幹線乗り場に到着すると、大雨の影響で新幹線が運休しているという事態に陥ってしまいました。

私より少し早く東京を出発していた指揮者の佐々木新平さんは途中で止まってしまった新幹線に閉じ込められてしまい、その日のリハーサルはキャンセルとなってしまいました。

翌日になっても新幹線は動いておらず、何とかして当日のリハーサルに間に合うように会場に入るため、 熱海まで在来線で移動して、そこから迎えにきてもらった車で静岡に向かうことになりました。

思いがけないアクシデントを乗り越えた本番、 ステージに上り多くのお客様の拍手に迎えられた瞬間、たくさんの方々に支えられて無事にコンサートに出演できた感謝と感動で、目が潤んでしまいました。佐々木さんの柔軟な音楽作りと団員の皆様の団結と集中力のおかげで、一体感あふれる濃いチャイコフスキーとなりました。

コンサートのライブ録音は、7/1の20時よりラジオ「76.9 FM-Hi!」で放送予定で、インターネットからも聴くことができます。

https://www.jcbasimul.com/fmhi

20日は交詢社アフタヌーンコンサートにて福原彰美さんと共演しました。

日本最古の社交クラブの歴史を感じさせる上品な空間に置かれていたのは、1878年製のスタンウェイ。独特の柔らかい音色に合わせて、サロンで演奏されるために作曲された作品を主にプログラムに組みました。

お申し込み開始初日に予約が満席になってしまったとのこと。

お客様がコンサートをとても楽しみにしてくださっていたのが、身を乗り出して聞いていただいている様子からも伝わってきて、嬉しかったです。

27日には紀尾井町サロンホールにて實川風さんとデュオリサイタル。フランス音楽のみで組んだプログラムは、身体、指、そして頭を酷使するような激しい内容でしたが、演奏後には割れんばかりの拍手をいただき、疲れも暑さも吹き飛びました。

また、作曲コンクールの審査会で応募曲を演奏、審査にも参加しました。

ピアノとヴァイオリンのデュオの編成で、それぞれ作曲者のイメージが楽譜からしっかり伝わってくるのが印象的でした。15名の審査員たちは、「どの曲も良い曲で配点が難しい」としきりに話し、最終的に副賞を追加する運びとなりました。優秀曲に選ばれた作品はオーケストレーションされ、秋に飯森範親指揮パシフィックフィルハーモニアと共演し、お披露目される予定です。

7月も個性的なコンサートに出演します。

7日はすみだトリフォニーホールのチャリティーコンサートにゲスト出演。ハープとのデュオで、サン=サーンスのファンタジーをお届けします。高校の時に出会ってからずっと大好きな、幻想的で華やかな作品です。

 

8日は「自由で真っ直ぐな音楽会」。7人の音楽家による、語りあり、演奏ありの盛りだくさんな企画です。赤坂ストラドホールの豪華ながらもアットホームな空間で、普段聞けないトークをどうぞお楽しみに!

 

16日は實川風さんと、サン=サーンスのみでプログラムを組んだ華やかなデュオリサイタルです。出版されたばかりの珍しい作品も演奏予定です。是非お運びください!

 

会場で皆様とお会いできますのを楽しみにしております!

トルコ東南部大震災支援コンサート

2023年7月7日(土)19時開演
すみだトリフォニーホール 小ホール 地図

共演:宮田悠貴(ハープ)

サン=サーンス:ヴァイオリンとハープのための幻想曲

詳細はこちら

 

自由で真っ直ぐな音楽会
2023年7月8日(日)第一部13:00~、第二部17:00~
赤坂ストラドホール 地図
共演:福原彰美(ピアノ)、會田瑞樹(ヴィブラフォン)
ご予約:que315710@gmail.com
詳細はこちら
鈴木舞&實川風 デュオリサイタル
2023年7月16日(日)14時開演
横浜市港北公会堂(大倉山)地図
共演:實川風
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第一番、他
ご予約: 080 8424 5108
舞踏、音楽、美食 夏のコラボコンサート
2023年7月17日(月祝)15時開演
お食事交流会:ランチ13:00~ / ディナー17:00~
IDÉALビル 能舞台「山水」地図
共演:下地優子(ダンスアーティスト)、福原彰美(ピアノ)
詳細はこちら
涼風祭 実力派デュオが贈る珠玉のアンサンブル
2023年8月6日(日) 14時開演
清里の森音楽堂(山梨県)地図
共演:小林侑奈(ピアノ)
詳細はこちら
チケットご予約:0551-48-3151(清里の森管理センター)
Concert with DOGs  
2023年8月11日(金祝) 第1部12:00~、第2部16:00~ 
ピアノカフェ・ベヒシュタイン(御成門)地図  
共演:則行みお(ピアノ)
わんちゃん
やお子様にもお越しいただけます
アンフォルメル
2023年8月16日(水)18:30開演
ルーテル市ヶ谷ホール 地図
共演:鈴木崇弘(サクソフォン)他
詳細はこちら
鈴木舞&杉田恵理 デュオリサイタル
2023年8月20日(日)15時開演
美竹清花さろん(渋谷)地図  
共演:杉田恵理(ヴィオラ)
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
詳細はこちら
お問い合わせはこのメールにご返信ください。

2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
詳細はこちらからご覧ください。

https://maiviolin.com/fanclub/

鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中!
マイ・フェイバリット ”Mai favorite”
ピアノ:實川風、山田和樹

大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。

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