ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.73

1000人と30人のコンサート

チリ南部のテムコでの公演を終え、次なる舞台は、サンティアゴから車で1時間半程の海沿いの街、ヴィーニャでした。カラッとした日差しが温かく、お天気にも恵まれ春のような陽気でした。

車で会場に向かっていると、歩道橋に掲げられた大きなコンサートの看板がお出迎えしてくれました。

3つめのリサイタルの会場は、チリで最初にできた音楽大学の歴史あるホールです。鮮やかな海が見渡せる立地に、美しく品格ある建築が立ち並んでいます。建物の内部、楽屋にも歴史を感ことのできるアンティーク調の美しい家具が置かれていました。

ステージに立つと、衣擦れの音まで拾いそうな繊細で豊かな音響を感じられました。程良い長さの残響が舞台と客席を包み込み、演奏中に会場の向こう側から返ってくる響きは、まさにインスピレーションの源となりました。

特にラヴェルのツィガーヌを演奏している時は、何度も演奏している曲にも関わらず、ホールの響きからインスパイアされた新たな情感が湧き起こりました。自然の息吹や、遠くまで見通せるような澄んだ空気感、華やかな曲調の裏にも心にこびりつく寂しさや哀愁…。

曲間には、次の曲への移行に戸惑いさえ感じるほど、大きな拍手と地響きが鳴り止みませんでした。

この公演も、心に残る特別な経験となりました。

1000人の観客に向けて演奏した翌日には、今度は30人ほどのお客様に私たちの音楽を聴いていただきました。海沿いのラグジュアリーなゲートコミュニティ内で、サロンリサイタルです。

前日と同じプログラムでしたが、会場が変わると演奏のアプローチも異なります。

大きな会場では、広がりのある豊かな残響やダイナミックな響きに包まれる感覚、そこから生まれる大きなエネルギーが魅力です。

一方でサロンのような小さな会場では、観客との距離が近くなるため、例えば内緒話をするような表現の場面などで、より細かな強弱や微妙な音色の変化が可能となります。

特に、まさにサロンで演奏するために作曲されたクライスラーの作品には、繊細な旋律や感情表現が豊かに詰まっています。サロンのアットホームな雰囲気の中で演奏することで、その魅力を最大限に引き出せるように感じました。

観客の皆様はとても温かく、真剣に耳を傾けてくれていたのがじかに伝わってきました。

また、終演後にお客様と交流できるのもサロンの魅力。英語に堪能な方も多くいらっしゃり、直接感動を伝えてくださり、胸がいっぱいになりました。

サロンでの演奏は、大きな会場で演奏するのとはまた違う魅力があります。観客との特別な繋がりや、音楽を手渡しするような感覚は、サロンでしか味わえません。

チリでの最後のリサイタルは、首都サンティアゴの、赤い絨毯が印象的なホールでした。

 

私にとってのチリでの最後のリサイタルは、首都サンティアゴにある印象的なホールで行われました。そのホールはステージが一番低い位置にあり、客席が傾斜している形状でした。これにより、大規模なホールでありながらもステージからお客様のお顔や様子がよく見え、大きな拍手と共に多くの笑顔に勇気づけられる公演でした。

普段のコンサートでは、次から次へと新しいプログラムを組み、挑んでいくことがほとんどですが、今回のツアーでは同じプログラムを異なる会場で何度も演奏し、同じ曲を弾き続ける難しさを実感しました。

根気強い練習によって、曲が頭のみならず身体に刻まれ、演奏の完成度が高まりますが、長い期間同じ曲を繰り返し練習することによる退屈さも感じることもありました。

本番は、会場や観客との一期一会の瞬間ですので常に新鮮な気持ちで演奏に臨むことができるのですが、練習となるとその新鮮さを保ち続けることが難しいのです。

一方で、会場ごとに異なるインスピレーションを受けることで新たな発見がありました。

本番に湧き上がるインスピレーションや経験を通じて、曲への理解が深まり、自分自身の血となり、肉となるような感覚を体験できたのです。

2月はテレビの収録、オーケストラと協奏曲の共演等、特別な機会に恵まれまれた月となりました。

 

初めてのテレビ収録は、まさに貴重な経験となりました。

まず楽屋で監督と打ち合わせをし、セットの準備ができたところで声がかかりました。

薄暗い照明の下、立ち位置を指定され、皆が位置につきます。目の前には俳優の仲村トオルさんが、楽譜を手にソファに腰掛けています。カメラがまわり、監督の掛け声と共に撮影がスタートすると、独特な緊張感が場を支配しました。

身体がこわばっていたのか、最初の一音が良い音が鳴りませんでした。一音のみで演奏をやめ、撮り直しをお願いすると、監督やスタッフの方々が暖かく対応してくださり、そこで作ってくださった穏やかな雰囲気が緊張をときほぐしてくれました。

様々な距離や角度から撮影するため、何度かの小休憩を挟みながら演奏を重ねました。最後のテイクが終わると、監督の「カット!」の掛け声の直後に沢山の大きな拍手をいただき、あっという間に感じた撮影が終わりました。

放送は3/2(土)、21:54〜

「土曜名馬座」 (テレビ東京)です。

時々乗馬に出掛けるほど馬好きな私が馬番組に出演させていただくご縁、とても嬉しく思います。

是非ご覧いただけましたら幸いです!

 

10日はチャイコフスキーの協奏曲を奥田恵悟指揮 東京セラフィックオーケストラと共演しました。演奏するたびに違う風景を見せてくれるこの曲。今回の本番も、また一つ乗り越えた感覚がありました。

綿密なリハーサルを重ね、いよいよステージへ。

本番ではオーケストラの皆さんの集中力がこれ以上ないほど高まるのを肌で感じ、前奏で作ってくださったチャイコフスキーの優美で壮大な世界観に浸かりながら、演奏することができました。

公演のプログラムに掲載されたインタビュー記事が、東京セラフィックオーケストラのホームページにてお読みいただけます。

ヴァイオリンを演奏する上で大切にしていること、辛いこと等をお話ししています。

こちらから、是非お読みください。

3月最初の公演は3日土曜日。尾崎未空さんと、情熱的でファンタジー溢れるグリーグやシベリウスのプログラムです。

なかでもシベリウスの田園舞曲は、晩年の作品。波瀾万丈な人生を送ったシベリウスの、人生を達観したような、そしてユーモアも感じるユニークな曲調で、私のお気に入りの作品です。

メインのグリーグのソナタ第2番は、北欧の涼やかな空気感と大地から湧き上がるエネルギーが共存するダイナミックな作品です。

是非お運びください!

 

30日はわんちゃんと一緒に聴けるコンサート、第5弾。春らしい華やかなプログラムを則行みおさんとお届けします。

小さいお子様もお運びいただけますので、是非ご家族でお気軽にいらしてください。

 

会場で皆様とお会いできますのを楽しみにしております!

「土曜名馬座」(テレビ東京)に出演します

2024年3月2日(土) 21:54〜 

俳優・仲村トオル演じるオーナーが、

人々の記憶に残る名馬たちの活躍を、スポーツ選手や映画、ムービースターなど文化的な切り口から紹介する大人向けのミニ番組。

冒頭でヴァイオリンを演奏しています。

鈴木 舞&尾崎 未空 北欧の巨匠たちvol.2
2024年3月3日(日) 15時開演   
美竹清花さろん(渋谷)地図  
共演:尾崎 未空(ピアノ)
詳細はこちら

Concert with DOGs  Vol.5
2024年3月30日(土) 第1部12:00~、第2部16:00~   
ピアノカフェ・ベヒシュタイン(御成門)地図     
共演:則行みお(ピアノ)  
わんちゃんやお子様にもお越しいただけます。

ヴィヴァルデイ:春

サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ、他

桜コンサート
2024年4月7日(土) 18:15~  
千葉市美術館11階 地図     
共演:アレクシス・バジェホス(ギター)  

ニコロ・パガニーニ: ソナタ・コンチェルタータ

アストル・ピアソラ: タンゴの歴史 より、

ご予約、お問い合わせ

090-2044-6568 / laudista@gmail.com

Virtuose Tonmalerei 

20.04.2024 Einlass 19:00 Beginn 19:30

Münchner Künstlerhaus Festsaal

Lenbachplatz 8, 80333 (ドイツ)

Mai Suzuki, Violine 
Kaori Kashimoto, Klavier 

Ticket 30 € / 15 € Studierende, Kinder

ticket, details are here

ジョン・ウィリアムズ フルオーケストラコンサート
2024年6月1日(土) 15時開演
NHKホール(渋谷)地図     
共演:佐々木新平指揮、日本フィルハーモニー交響楽団

ジョン・ウィリアムズ:シンドラーのリスト

チケット、詳細はこちら

 

お問い合わせはこのメールにご返信ください。

2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。

後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。  
詳細はこちらからご覧ください。

https://maiviolin.com/fanclub/

鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中!
マイ・フェイバリット ”Mai favorite”
ピアノ:實川風、山田和樹

大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。

Twitter
Email
Website
正しく表示されない場合はこちら
アーカイブはこちらをクリック

当ニュースレターは、お名刺を交換させていただきました方に配信しております。 配信先の変更・停止は、お手数ですが下記よりお手続きいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。その他コンサート等のお問い合わせは、このメールにご返信ください。


配信停止 | 登録情報更新