【チリでの音楽教育活動】
南米ツアーは、多くの出会いと刺激に溢れていました。コンサート活動だけにとどまらず、多くの教育活動にも積極的に携わり、学校を訪れ演奏することで学びの場を広げるアウトリーチ活動や、音楽を学ぶ学生たちに向けてマスタークラスに取り組みました。
マスタークラスでは、レッスンを一般の観客の前で公開するという、教える立場では初めての経験をしました。ヴァイオリンの生徒に対するソロのレッスンに加えて、ピアニストのダノールと共同で、アンサンブルの指導も行いました。広々としたステージに用意された講師用の椅子に腰を下ろすと、演奏するのとは異なる緊張感に包まれ、客席を見下ろしながら手に汗を握りました。
ダノールは私と同時に生徒を指導することについて、音楽の方向性などの意見の相違から、舞台上で対立し喧嘩に発展するのではないかと心配していました。
実際にマスタークラスが始まってみると、私たち二人の生徒たちへのアプローチが全く異なることに気づきました。
私は演奏をしてみせながら具体的なテクニックを示し実践的な指導を行う一方で、ダノールは言葉を使って音楽の時代背景や歴史について語り、論理的なアプローチで生徒たちに指導していました。
しかし、私たちの意見や目指す音楽の方向性はほとんどの場面で一致しており、衝突することなく進んでいきました。
異なるアプローチ方法による指導は生徒たちにとっても有益な経験になったことでしょうし、私自身もこのマスタークラスを通して新たな刺激を受け、学びとすることができました。
生徒たちからのリアクションは明快で、私たちの指導をしっかりと受け取ってもらえていることを感じることができました。彼らの音楽への情熱ややる気が鮮明に伝わってきて、何よりも彼ら自身が音楽を楽しんで演奏していることが伝わってきました。その姿からは、私自身もエネルギーをもらいながらレッスンを進めることができました。
ソロ、アンサンブルのマスタークラスともに、才能と意欲に満ちた生徒たちとの時間は、長時間続いたレッスンも苦にならず、あっという間に過ぎていきました。
アウトリーチ活動は全部で4公演行いました。一般の小中学校の生徒たちのために、ピアノのない学校には財団からの支援を受け、グランドピアノを搬入してコンサートを開催しました。
チリの子供たちの反応は圧倒的で、ステージに上がった瞬間から大きな歓声が沸き起こり、私は一瞬スーパースターになったかのような錯覚を覚えました。演奏中は彼らは前のめりになり、曲間には弾けるような笑顔で一生懸命に拍手を送ってくれたり、手でハートの形を作ったりと感情を表現してくれて、彼らが本当に楽しんでくれていることが伝わってきました。
また、チリの子供たちは日本やアジアの文化に大きな関心を持っているようでした。私がリクエストに応えて日本語で簡単な挨拶をすると、彼らは大いに盛り上がって喜んでくれました。
演奏が終わると、子供たちが舞台に駆け寄ってきて、ハグしたり、写真やサインを求めてきました。その中で驚いたのは、一部の子どもたちが、サインを紙ではなく、スマートフォンやタブレットの画面に求めてきたことです。電子的にサインをする経験は私にとって初めてのことで、時代の変化を実感することとなりました。
サンティアゴにある日本人学校でも、コンサートを開催しました。生徒たちが音楽ホールに足を踏み入れる際、皆謙虚に頭を下げ「失礼します」と挨拶を交わし、教育が行き届いている様子が伺えました。
チリではコンサートを含め、時間通りに物事が進むことがなかなかありません。しかし日本人学校では開始時間よりも早く全員が着席し、先生が前に立つと一瞬にして静寂が広がり、まるで日本にいるかのようでした。
生徒たちは礼儀正しく、集中力をもって音楽に耳を傾けていました。私たちがトークの中で質問を投げかけると、彼らは元気よく手を挙げ、積極的に演奏から感じた豊かなイメージを語ってくれました。
音楽において、個人の感じ方に正解はありません。自由に感じ表現できる音楽の楽しさが少しでも伝わるように心を込めてトークをした結果、日本人学校の音楽の先生でもある校長先生から、的確な声かけをしてくれたとのお言葉をいただき、音楽を通しての教育活動に自信を深めることができました。
チリでの音楽教育活動は非常に中身の濃い時間でした。生徒たちが真剣に私たちの演奏と言葉に耳を傾け、それぞれが独自の形で感じたことを表現してくれたことは、心に残る経験となりました。
次回は、いよいよオーケストラとの共演で披露するメンデルスゾーンの二重協奏曲の様子をお伝えします。お楽しみに!
3月最初のコンサートは、尾崎未空さんと北欧がテーマのリサイタルでした。グリーグのソナタ第2番を中心に、アウリンやシベリウスの作品を取り上げました。北欧の音楽は、さまざまな表情を持っています。まるでフィヨルドを思わせるような神秘的なメロディや、雪のような冷たさと透明感、独特な民族的なリズム感、そして大自然の雄大さを感じることができます。さらにユーモアや憂い等多様な表情が飛び出しますが、その中でも一段と響くのは、やはり人間のぬくもりです。
「演奏が終わってもいつまでも心がポカポカと温まるよう」との感想もいただきました。尾崎未空さんと第三回公演は来年。今から楽しみです!
30日には愛犬と一緒に聴けるコンサートの5回目が開催されました。今回も本当に多くのわんちゃんたちにお越しいただき、会場は賑やかな雰囲気に包まれました。
第1部ではわんちゃんたちが一緒に歌うように合いの手を入れてくれる場面があり可愛い声に場が和みました。
一方で第2部では、演奏中には会場は静寂に包まれました。わんちゃんたちのつぶらな瞳が舞台に釘付けになり、静かに耳を傾けてくれたのです。
そして、拍手が沸き起こると、彼らも一緒に鳴き声を上げ、歓声を送ってくれました。
どちらの回も、人々とわんちゃんたちが一体となって音楽を楽しむ時間となり、音楽によって人と犬の絆を深め、心温まる瞬間が生まれました。
4月は月初に山梨、京都にて桜覧イベントで演奏します。
7日は千葉市美術館にて、ギタリストのアレクシス・バジェホスと共演。パガニーニが恋人と共演するために作曲家したバイオリンとギターのためのデュオやピアソラの作品等、新しいプログラムに挑戦します。
後半にはミュンヘンで3公演を予定しており、ドイツの一番好きな季節である春にまた滞在できること事をとても嬉しく思います。
会場で皆様にお会いできるのを楽しみにしております!
桜コンサート 2024年4月7日(日) 18:15~ 千葉市美術館11階 地図 共演:アレクシス・バジェホス(ギター)
ニコロ・パガニーニ: ソナタ・コンチェルタータ
アストル・ピアソラ: タンゴの歴史 より、他
ご予約、お問い合わせ
090-2044-6568 / laudista@gmail.com
Virtuose Tonmalerei
20.04.2024 Einlass 19:00 Beginn 19:30
Münchner Künstlerhaus Festsaal
Lenbachplatz 8, 80333 (ドイツ)
Mai Suzuki, Violine Kaori Kashimoto, Klavier
Ticket 30 € / 15 € Studierende, Kinder
ticket, details are here
ジョン・ウィリアムズ フルオーケストラコンサート 2024年6月1日(土) 15時開演 NHKホール(渋谷)地図 共演:佐々木新平指揮、日本フィルハーモニー交響楽団
ジョン・ウィリアムズ:シンドラーのリスト
チケット、詳細はこちら
デュオリサイタル 2024年6月19日(水) 19時開演 共演:萩原麻未
詳細はお待ちください。
デュオリサイタル 2024年7月20日(土) 共演:福原彰美
2020年から「鈴木舞 後援会」が発足し、会員の募集がスタートしました。
後援会主催コンサートへの無料ご招待や懇親会へのご案内、一部コンサートの優先案内・優先予約、オーディオ付きお誕生日メールなど盛りだくさんの特典をご用意して入会をお待ちしております。 詳細はこちらからご覧ください。
https://maiviolin.com/fanclub/
鈴木舞 デビューアルバム 好評発売中! マイ・フェイバリット ”Mai favorite” ピアノ:實川風、山田和樹 大好きなフランス音楽の中でもお気に入りの曲を集めました。タイスの瞑想曲 などの名曲から、愛と死、そして政治をもテーマに据えたプーランクのヴァイオリン・ソナタ。銘器、アマティの音色でお楽しみください。