ヴァイオリニスト 鈴木舞 ニュースレター Vol.79

楽器と共に紡ぐ旅

演奏家の仕事には旅がつきものです。楽器を抱え、本番の衣装や靴を詰め込んだスーツケースを引きながらの移動は、まさに大荷物の旅。特に今月は、河口湖、2度の軽井沢、大阪、神戸と様々な場所での演奏の機会に恵まれ、移動が続きました。そんな中で今回は演奏家の旅模様をお話しします

まず何より大切なのは、楽器の管理です。移動中は肌身離さず、お化粧室に行く時ももちろん一緒です。

楽器にダメージを与えないため、カーボンのケースの上からクッション性のあるケースを被せ、二重にしています。そうすることで、外気や振動の影響を受けにくくなり、楽器の状態が格段に安定するようになりました。ケースのポケットには楽譜等を入れて持ち運んでいます。

二重のケースで通常のバイオリンのケースよりも大きく膨れ上がり、重量も増します。先程重さを測ってみたら、なんと10キロ程もありました!まるで子供のようです。それでも楽譜の代わりにタブレットも使用するようになってからは、持ち歩く紙の楽譜の量が減り、荷物が軽くなりました。文明万歳ですね!

 

身体のケアも重要です。長時間の移動や慣れない環境、本番への緊張で体が固まりやすいため、腱鞘炎になるリスクも高まります。

夜は必ず湯船にゆっくり浸かりよく温まりながら、特に荷物の持ち運びと演奏で酷使をした腕や肩周りなど、疲れが溜まっていると感じる部分をマッサージします。

数種類の湿布と痛み止めを持ち、またビタミン剤やエナジードリンクも常備しています。 

演奏家ならではの持ち物も忘れてはいけません。予備の弦はもちろんのこと、楽譜を見るためのタブレットと譜めくりペダル(リモコン)、それらの充電器も必需品です。また、リハーサルの録音を確認するための音楽用録音機も手放せません。

そして、宿泊先での練習のために、折りたたみの譜面台と、周囲に配慮して音出しするための弱音器も欠かせません。

 

新幹線や高速バスの移動中には、音源や録音を聴きながら楽譜を読み込んだり、仮眠を取ったりします。勉強に集中したり、もしくは眠り込んで乗り過ごさないように、イヤフォンだけに音を鳴らすことのできる目覚まし時計のアプリを使っています。降りる直前の時間にセットしておけば、周囲に気を使うことなく、予定の降車駅で確実に降りることができます。これで安心して睡眠や勉強に集中できます。

演奏旅行の中で特に楽しみにしているのは、さまざまな出会いや文化に触れる瞬間です。

初めて訪れる土地での新しい会場や、その地域ならではの文化に出会えるのが何よりの喜びです。また、以前に演奏させていただいた会場に再び伺うと、まるで「帰ってきた」という心温まる感覚が芽生えることもあります。

お客様一人ひとりの温かい歓迎や、スタッフの皆さんが心を込めて準備してくださる姿に触れるたびに、演奏への情熱がますます高まります。

これらの経験が私の音楽活動をより豊かにし、公演が、ただの演奏にとどまらず、地域の皆さんとの心の交流になることが何より嬉しいのです。こうした旅の中で得られる新しい発見や感動を胸に、これからも各地で音楽を通じて皆様と充実した時間を共有できるよう精進していきたいと思います。

8月の最初のコンサートは、軽井沢の美しい別荘でのホームコンサートから始まりました。全国各地から多くの方々が集まり、明るくポジティブなエネルギーに満ち溢れていました。軽井沢の涼しく湿気の少ない気候、そして青々とした夏の緑に心からリフレッシュ。愛用のアマティも、まるでこの場所を楽しんでいるかのように、柔らかく響いてくれました。 

次に訪れたのは河口湖 音楽と森の美術館。ここでは、小林侑奈さんとのデュオでのコンサートでしたが、2回目の公演直前に突然の雷鳴とともに大雨が降り始めました。ヴィヴァルディの『四季』の「夏」第2楽章には雷が鳴り響くシーンがありますが、その演奏中にまさに外で雷鳴が轟き、音楽と自然が一体となる貴重な瞬間を体験しました。そしてこの日の夜は、美術館の近くの別荘でプライベートなホームコンサート。チェリストの内田麒麟さんも加わり、トリオの編成での演奏となりました。大理石の床と高い天井が生み出す音響の素晴らしさは格別で、演奏しながら音色が空間を優雅に巡るのを感じ取ることができました。

9日には、東京文化会館で會田さんの編曲によるヴィヴァルディ『四季』全曲を打楽器とともに演奏しました。一人でソロと合奏の両パートを演奏するという挑戦的な作品でしたが、文化会館の素晴らしい音響に支えられ、力強さと霊感を感じながら演奏しました。打楽器の躍動感溢れるビートに触発され、時折ロックな気分になりながら、新たな『四季』の一面を発見しました。この特別な演奏はCDとしても発売され、配信でもお楽しみいただけます。ぜひ新しい『四季』の魅力をお聴きください。

その後、再び軽井沢へと戻り、田部井剛さん指揮、アウローラ管弦楽団と大賀ホールでのコンサートに臨みました。大賀ホールは素晴らしい音響で、オーケストラのリハーサル中にホールに足を踏み入れた瞬間、音圧の力強さに圧倒されました。ここで演奏した大好きなサン=サーンスの協奏曲は、一瞬一瞬が特別な体験となりました。

その後、大阪での公演では、アマービレフィルとの共演で同じくサン=サーンスの協奏曲を演奏しました。松岡究さんの指揮のもと、リハーサルから本番まで音楽を一緒に作り上げていく過程が非常に充実していました。会場はほぼ満席で、ロビーでは「素晴らしかった」と多くの方々から声をかけていただき、大阪のフレンドリーな雰囲気に心が温まりました。熱気溢れる公演は、演奏者としても嬉しい経験となりました。

休む間もなく次の神戸の公演に向けたリハーサルを経て、聖愛協会での公演を迎えました。午前中に教会の礼拝でバッハなどを演奏し、午後にはドイツで学んだトリオのメンバーとコンサートを行いました。教会の豊かな響きに包まれながら、神聖な気持ちで演奏に臨みました。

希望と癒しをテーマにしたプログラムで、東京での公演は31日(土)14時より、赤坂ストラドホールで開催予定です。

わずかばかり残席ございますので、是非お運びください。

9月には、いくつかのプライベート公演に加えて、大阪で日本文化の公演に出演します。日本舞踊の名手たちが集う「尾上菊見 卒寿踊り納めの会」にて、能の道成寺を題材にした『沈鐘』という作品で共演させていただきます。日本の伝統芸能とヴァイオリンが交錯するこの舞台は、私自身にとっても非常に特別なものとなりそうです。

 

また、9月はテレビの収録も予定されており、こちらも楽しみなプロジェクトの一つです。まだ詳細をお伝えすることはできませんが、発表の際にはぜひご注目ください!

 

会場でみなさまとお会いできるのを楽しみにしております!

希望と癒しのコンサート ~音楽の響きに包まれ心整う時間~ 東京公演
2024年8月31日(土) 13:30開場 14:00開演
赤坂ストラドホール 地図
共演:杉田恵理(va)、柏本佳央理(pf)
モーツァルト:ヴァイオリンソナタ K.304ショスタコーヴィチ:5つの小品 、他
全席自由(税込):一般5,000円/学生2,500円
お問い合わせ Duck Ken (本間健) Tel: 090-6304-4476 hommasama@gmail.com
詳細はこちら

「尾上菊見 卒寿踊り納めの会」

2024年9月27日(金)14:30開演/17:30終演予定

大阪・国立文楽劇場

お問い合わせ:03-3541-6344(尾上流事務所)

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