街を歩き、美術に触れるなかで、「美とは何か」を問いかけられているような時間でもありました。
特にパリでは、食そのものからも“芸術”や“感性”を受け取る場面が多くありました。香り、色彩、盛り付け、器、空間、すべてに「余白」があり、一皿の料理が文化的体験そのものであることを思い出させてくれました。
そこには、フランス音楽にも通じる“間”や“エスプリ”のようなものが存在していました。
パリ滞在で芸術を「浴びる」ようにして過ごした時間は、演奏家としての自分を再構築するような時間でもありました。
日常や経験のすべてが、少しずつ今の自分をかたちづくっている。文化や生活、演奏活動すべてが地続きであるということ。
表現するとは、自分の内にあるものだけで完結するのではなく、外の世界にどれだけ“開かれる”ことができるかでもあるのだと、あらためて気づかされた数日間でした。