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Nov 2017 | Vol.09

商業不動産に特化した最新マーケット情報と、日系企業のオフィスに関するケーススタディをお届けする「リダック商業不動産通信」。

最新号は、老朽化が進むオフィスビルの再開発を促進するため、ゾーニング変更の法案を満場一致で可決させたマンハッタン・ミッドタウンイースト地区の最新マーケット情報に加えて、「更新オプション」を保有・行使することのメリット・デメリットを解説致します。


北米における拠点管理・運営を行う上で、少しでも皆様のお役に立てれば幸甚です。

最新オフィス・マーケット情報 | ニューヨーク
ミッドタウンイースト地区の再開発に期待

ニューヨーク市の伝統的なオフィス街であり、多くの日系企業も事務所を構えるマンハッタンのミッドタウン。その中のミッドタウンイースト地区が、次世代を見据えて生まれ変わる一歩を踏み出しました。

ミッドタウンイースト地区には、マンハッタン内で最も高級オフィスが多いプラザ地区と、比較的リーズナブルなクラス Aオフィスが多いグランドセントラル地区が含まれます。1スクエアフィート(sf)当たりの年間募集賃料は、リーマンショック前のピーク時でプラザ地区が$96.6、グランドセントラル地区では$77.2と、$19.4の差がありました。それがここ数年で差が縮小し、最新の2017年第3四半期ではそれぞれ$71.3、$69.6と差が$1.7までになりました。

<マンハッタンの募集賃料の推移
(画像のクリックで拡大表示)

同地区内のオフィスビルの平均築年数が75年と老朽化が進み、テナントのニーズに応えられていないのが主な要因と考えられています。プラザ地区からハドソンヤード、ダウンタウンへのテナントの流出も顕著で、ハドソンヤードのテナントの9割がミッドタウン地区からの移転と言われています。

そうしたことも踏まえて、前市長時代には否決されたミッドタウンイースト地区のゾーニング変更(建ぺい率の増加)の法案が、2017年8月に満場一致で可決されました。この法案により、プラザ地区を中心にグランドセントラル地区を含む78ブロックで、680万スクエアフィートの新たなオフィススペースの追加と、既存のクラスAビルの660万 スクエアフィートの改装が進むと予測されています。ハドソンヤードの新築オフィスビルでは建設中にもかかわらず、新規テナントとの賃貸契約が順調に進む中、行政としてもミッドタウンイースト地区の再開発促進が不可欠と判断された様です。

法案は可決されたものの、オフィスの賃貸契約はいわゆる定期借家契約なので、既存ビルの建て替えとテナントの退去には時間が掛かります。再開発が完了するには今後20年程度掛かると言われています。

中長期的なミッドタウンイースト地区の再開発で、ミッドタウンが全体として更に活性化されることに期待したいと思います。

CREアドバイザリーサービス
「更新オプション」:契約更新をオーナーに強制させる権利

米国における商業不動産の賃貸借契約は、一般的に定期借家契約(契約期間が定められており、自動更新されない契約)です。契約更新にはテナント、オーナーの双方合意の基、新たに契約を結び直す(再契約する)必要があります。

そのため、テナントが契約更新を望んでいても、オーナー都合で応じない事態が発生し得ります。例えば、同じフロアの大型テナントが拡張用に貴社オフィススペースを欲しがっている場合、オーナーは大型テナントを優先し、貴社との契約更新に応じない可能性が高まります。

このような場合、賃貸借契約書内に「Renewal Option」(あるいはOption to Renew、Renewal Clause)と呼ばれる「更新オプション」が入っていると、テナントは強制的にオーナーに契約更新を応じさせることが可能です。

賃貸借契約書内の更新オプションの項目には、一般的に、以下のポイントが定められています。

●通知期限
テナントが更新オプションの行使を希望する場合、いつまでにオーナーに書面で通知しなければならないかが定められています。マーケット毎に異なりますが、契約期限の6~12ヵ月前が一般的です。ギリギリまで他の選択肢を比較検討出来るため、通知期限が契約期限に近い程テナントにとって有利になります。

●契約期間
更新オプションを行使した場合の契約期間は、事前に定めてられていることが一般的です(現契約期間と同期間、あるいは5年間など)。

●契約賃料
契約賃料は事前に定められることもありますが、より一般的なのは「Fair Market Value」、つまり行使時点でのマーケット相場を基にする、という形です。実際には、周辺の同レベルのビルなどを参考に、テナント、オーナー双方合意の基でFair Market Valueが決められます。万が一、合意に至らなかった場合には、第三者の調停者の意見を基に定めることになります。

このように更新オプションはテナントにとって有利な権利ですが、デメリットがない訳ではありません。

テナントは、先に更新オプションを行使する意思をオーナーに通知した上で、契約賃料を交渉することになるため、どうしても交渉レバレッジは低くなってしまいます。また、予め賃貸借契約書内で、更新オプション行使時にはフリーレント期間はなし、オーナー提供工事費もなし、などと決められていることも良くあるケースです。

間違い易いのは、更新オプションを保有していないからといって、契約更新出来ない訳ではない、という点です。オーナーが契約更新を望んでいれば、通常の更新交渉は勿論可能です。

従い、例え更新オプションを保有していたとしても先ずは行使せず、行使期限前に時間的な余裕を持って、更新交渉における最大のレバレッジである移転の可能性を示唆しながら、オーナーと通常の更新交渉をすることが重要です。オーナーがなんらかの理由で更新に応じず、テナントがどうしても更新したい場合に限り、行使期限前に更新オプションを行使することをお勧めします。

自らの手足を縛ることになる更新オプションを賃貸借契約書内に含めないオーナーが増えていることは確かです。ただ、現オフィスの内装仕様やインフラ設備に多額の資金を掛けた企業にとっては、オーナー都合による望まぬ移転は避けたいところです。契約期限時の選択肢を確保するためにも、商業不動産ブローカーを窓口として、更新オプションを賃貸借契約書内に含めるように交渉し、条件内容を不動産弁護士と協業しながら詰めてみて下さい。

お知らせ

「オフィスの新規賃貸・契約更新・移転検討についての無料セミナー」を開催致しました

弊社ニューヨークオフィスでは、9月15日(金)午後2時より、第1回「オフィスの新規賃貸・契約更新・移転検討についての無料セミナー」を開催しました。
当日は、リダックニューヨークオフィスのセミナールームにて、日系企業の経営陣やオフィス担当者を中心に、多数ご参加いただきました。セミナーではニューヨーク商業不動産マーケットの最新動向やオフィス賃貸契約の流れ、注意すべきポイント、また、オフィスを知的創造の場として捉えた”Workplace創り”のポイントについて、具体的なオフィスレイアウトの事例を交えながら解説しました。
参加者からは、「今後のオフィスの方針を定める上で、具体的な事例を知る事できてとても参考になった。」、「賃貸契約時に重要なポイント、一連の流れやタイミングなどが知れて、とても勉強になりました。」とのコメントを頂きました。
弊社では、こうした商業不動産に関するセミナーをニューヨークに限らず他拠点でも開催していく予定です。

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