皆様、こんにちは!
Sygnite Tokyoの小林です。
地球温暖化をダイレクトに感じるこの季節、お変わりありませんか。
ちょっと炎天下を歩くと店内に入るときの体温検問にビクビクしてしまいがちです。
数年後は真夏の大工さん仕様、「服に扇風機が仕込まれた服」がスタンダードになっても
おかしくないですね。イメージは『ONE PIECE』の「天竜人」です。
さて、そんな、頭に陽炎が生じそうな季節に契約書とか聞きたくないですけど、という
ご意見はごもっともなので、本日は冷房下にいらっしゃる方のみを対象といたします(笑)。
制作会社の方から、そこそこの頻度で「広告の著作権は誰が持つのでしょうか。」
または、「自分たちが作ったキャラクターは自由に使えるのでしょうか。」という質問を受けます。今日はその点について書いてみることにします。
まず、すべての広告が著作権で守られるのか、という点もありますが、そのあたりから書くと安眠効果が発動しそうなので本日は割愛し、著作物である前提で進めていきます。
■グラフィック広告について:
広告を創作した者に著作権は発生しますので、例えば広告主が制作会社に制作を委託した場合、基本的には制作会社に著作権が発生します(発注者の指示を忠実に形にしただけだった場合は、その限りではない可能性があります。)
また、手を動かした個人ではなく、会社が著作権を持つのが一般的で、これを「職務著作」といいます。
■ムービー広告について:
ムービー広告は著作権法上の「映画の著作物」と考えられ、こちらは誰が著作権を持つのか、やや複雑です。基本的には(諸条件によって異なります)、以下のように考えるのですが、この「映画製作者」がだれかの判断が実に難しい印象があります。
✕映画を創作(映画著作物の全体的形成に創作的に寄与)した者に発生。
〇「映画製作者」(映画の製作に発意と責任を有する者)に発生。
ある裁判の事例では、ムービー広告の制作における「映画製作者」は、広告主、広告代理店、広告制作会社のうち、広告主であるとしたものがありますが、無条件にすべてのケースで同じ判断になるかは議論の余地が残されるという法律家も少なくありません。
このように、映画の著作物に類するムービー広告は、他の著作物とは異なる考え方が適用されるので、より権利に自覚的である必要があるのだな、と思っていただければ今日のテーマにおいては差支えがありません。
さて、ここまでが著作権の帰属先についての法的な考え方になります。
それでは、具体的に広告主目線で検討してみましょう。
広告の著作権を制作会社が保有している場合、広告主が当初想定の期間外の使用を希望する際は、制作会社に改めて使用許諾を得る必要があるということになります。
(タレントや音楽を使用している場合と同じです。)
広告主は、当該広告の使用許可を都度得るのではなく、今後も自由に使いたい場合は、著作権の譲渡を受ければ可能になりますが、いわゆる「買い取り」にあたり、使用許諾よりは当然高くなる、というのが著作権の考え方になります。
なお、その広告の構成要素であるキャラクターを作ったのが、制作会社ではなく外部のデザイナーで、キャラクターの著作権が制作会社に譲渡されていない場合は、広告主は当該広告を制限なく使うことができないという点も注意が必要です。
(キャラクターが制作会社の制作であっても、当該広告の権利の譲渡に際し、キャラクターの権利が含まれていない場合も同様です。)
さらに「著作者人格権」(過去のNewsletter「著作者人格権ってなんだっけ?」をご参照ください。)は著作者(創作した者)に留保されるものなので、広告主は著作権の譲渡を受けていても、キャラクターの色味を変える等キャラクターデザインを勝手に改変することはできません。
この点も自由に行いたい場合は、キャラクターの権利の譲渡の際に制作会社や外部のデザイナーなど著作権を保有するところと、「著作者人格権を行使しない」という取り決めが必要です。
ここまででお分かりいただけると思いますが、
そうなのです、大事なのは取り決め(=契約)です。
現時点では、慣習や商流に沿ったやり取りが主流だと思われますが、カメラマン、イラストレーター、作曲家など、広告の構成物の著作者の権利意識は少しづつ変わってきており、曖昧にしておけなくなっています。遅かれ早かれルールを作らざるを得なくなるでしょう。
広告制作を委託する際に、著作権の帰属や利用許諾の範囲を予め定めておくことで、関係者間での認識の齟齬は防ぐことができるように思います。
「天竜人」化と広告制作委託契約のスタンダード化、どちらが早いか。
時代に順応しながら、All Happyを目指していければと思います。
本日はここまで。
次回をお楽しみに!
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