皆様、こんにちは!

Sygnite Tokyoの小林です。

 

ようやく初夏を感じる日が増えてきました。

新入社員でもなければ、人事異動も関係ないものの、五月病(コロナ以外の病の存在感が薄れており、なんだか長閑な印象がありますが)を誘発しそうな天候が続いていましたが、元気を出してまいりましょう!

 

 

さて、本日は謎に包まれた「肖像権」について。

 

まず、何が謎なのかと言いますと日本には「肖像権」という名称の法律は無い、というところから始めたいと思います。

 

「え?」ですよね。私も意外に思いました。

 

「じゃあ、法的な根拠は無いから、そこまでシビアにならなくてもいいのか?」と

短絡的に結論を求めたこともあります(遠い目)

 

しかし、それは逆にいろいろな角度からクレームが起こり得る余地があるということなのだと知るのでした。

 

広告業界におけるリスク判断は、「法的な視点」と「実務的な視点」のどちらが欠けてもよろしくないというお話は過去のNewsletterでも触れたことがあります。

それでは肖像権の場合の法的な視点は何をベースにしたらいいのでしょうか?

 

 

肖像には「プライバシー権」と「パブリシティ権」の2つの側面があります。

 

○プライバシー権=誰でも持っている権利で、「人格権」に基づいています。

○パブリシティ権=著名人が持つ権利で、こちらは「財産権」に根差しています。

 

そうなのです。

「肖像権」という法律は無いものの、判断基準となる法律はあるのです。

ただ、その規定では実務上、間に合わない事例が多くあるのが難儀な点です。

いくつか事例を挙げてみます。

 

  • 故人の肖像権:

日本において一般的には、「肖像の権利は人格権であり、すなわち本人しかもちえないため、当該人物が亡くなってしまえば、その時点で消滅する。」と言われているのですが、パブリシティ権については、決してこのような見解が定説となっているわけではなく、特に広告のように、肖像の使用によって利益を生むことを追求する目的においては、ご遺族なり近しい存在になんらの恩恵も無いのはおかしい、とする専門家も多くおり、いまだ明文化には至っていません。

そして諸外国では期限を指定している国も含め、没後も権利が守られている国が多いようです。

 

  • 物の肖像権:

これについては明確に否定した有名な判例がありますが、例えばソフトバンクロボティクスの有名なヒューマノイド「Pepper」には使用のガイドラインがあり、そこには「肖像権に準ずる権利を有しているという立場に立ち」という記載があったりします。

もちろん仕組みを紐解いていくと、肖像権を認めるか否かという視点とは別のルールによって、使用にあたっては許可を取らなければならないことになっているのですが、

結局のところ、これと似たような判断が必要なケースはヒューマノイドのように「人型」でなくとも、多く存在します。

 

 

 

最後によくある勘違いをご紹介して終わりたいと思います。

 

20091月、アメリカで初のアフリカ系の大統領が誕生したときに集中したお問い合わせです。

 

「広告に大統領を起用したい。」

結構カジュアルにご要望される感じが個人的にはツボでした(笑)。

一個人がホワイトハウスに連絡を取る!

いえ、テーマはそこではありません。

 

「政治家は公人でプライバシーが無いと思うので、肖像は許可なく使えますよね?」
 

いえいえ、そんなことはありません。

報道など公のメリットが大きな場合は、一般人に比べるとプライバシーが認められる範囲が狭いだけです。まして、広告起用はその限りではありません。

そして、もっと言うならば一国を背負う人物(起業家もしかり)が一企業の広告に出演したら、大騒ぎです(笑)。なんだか怪しいつながりを疑われますし、見識を問われる人物になってしまいます。

 

 

「では(上の続きです)、物真似をされているタレントさんを起用すれば、大統領の肖像権の許可は不要ですよね?」
 

いえいえ、そんなことはありません。

そのタレントさんは大統領を演じるのですから、タレントさんの肖像と大統領の肖像の

2つの許可が無いと実施できません。

 

 

キャスティングをはじめ、日頃から肖像を使用しているものの、使い慣れているからこそ、逆になかなか面と向き合って考えることが少ないのが肖像権かもしれません。

 

 

 

 

本日は、ここまで。

次回をお楽しみに!

 

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