こんにちは!

Sygnite Tokyoの小林です。

 

さて、前回は、本国アメリカでパブリックドメイン(PD)入りした初期ミッキーについて、

日本での著作権保護期間はいかに?!

ということで、ひとまず最短だと「団体名義の映画の著作物」として1989年、

最長だと「個人の美術の著作物」として、2052年。実に63年の開きがある!という

気持ちの悪いところで終わってしまって、すみませんでした。

 

正直、著作権マニアでもない限り、ファスト映画愛好者ばりに、結論だけ聞かせてよ、という

気持ちになってしまいますよね。

しかし、端折ると、それはそれで、なんでそうなった?という謎が深まる映画の保護期間。

そういう事情ですので、ここは堪えどころ、と無理やり鼓舞して後編です。

 

さて、なぜ答えが綺麗に出ないのか。

その原因の一つに、「著作権者は誰問題」があります。

 

 

「団体名義」なのか「個人名義」なのか。

 

それを考えるには、有名な「チャップリン事件」が参考になります。

この判決では、「監督の他に映画会社の名義も併記されているとしても、チャップリンが

著作者であることは明確なので、彼の死後38年で計算する」と判断されました。

この判例により、古い映画の保護期間は、ほとんど団体名義では計算されないということになったのだそうです。そうしますと、1989年PD説は、ちょっと旗色が悪いと考えられます。

 

 

 そこで次に、映画の著作物であって、個人名義」と考えてみます。

そうしますと、旧著作権法での保護期間が大幅に変わり、「公表から33年」でなく、

「死後38年」となります。

では誰の死後なのか(=著作者とは誰か)といえば、当時の映画ポスターにクレジットされている人物は、「ウォルト・ディズニー」です。

 

彼の死後38年ということで、2004年(+戦時加算)=2015年(ここまでが旧著作権法)。

つまり、2004年の著作権法改訂(改訂の流れは前編をご参照ください)時点で保護期間は残っていることになるので、新ルール「公表後70年」(+戦時加算)=2009年(現行法)。

すると旧著作権法での保護の方が現行法で計算するより長いため、旧著作権法が適用され、(こちらも前編を・・・)、2015年となります。

 

おや?1989年でないとしても、ここでPDだったのか?

 

 と、思いきや、『蒸気船ウィリー』の公開時のクレジットは、下記の通り。

 

『蒸気船ウィリー』ディズニー・スタジオ公式YouTubeより

 

by UB IWERKS.


実はアブ・アイワークスが作者?

すると保護期間がどう変わるかというと、彼はウォルトより5年長生きだったので、2020年までということになるのです。(ちなみに共同著作物であったとしても、結論は同じです。)
映画 「蒸気船ウィリー」 について、であれば、これが最長の保護期間ということになりそうです。

 

しかし!前編で問題提起したように、美術の著作物として考えた場合はどうでしょう。

つまり映画は、「アブ・アイワークスが描いた原画を原著作物として作られたものだ」 という

考え方です。

 

その場合、死後38年+戦時加算で、2020年。

ここまでは映画と一緒です。

しかし、美術の著作物である場合、2018年改訂にかすってしまうのです。

つまり、死後70年。

そこに+戦時加算=2052年。

 

 

本国より30年も長い保護期間。

感覚的には、なんだかとってもありえない・・・・。

ミッキーマウスは、

 

アブ・アイワークス創作の映画として2020年5月までの保護か、

アブ・アイワークス創作の美術として2052年5月までの保護か、

 

のいずれか、ということになりそうです。

 

 

本国の、「古い作品(1923年から1977年の間に発行された著作物)は、法人の著作物の

場合、発行後95年で著作権は消滅」というシンプルさがうらやましい。

 

「著作権者の問題」/「旧法の兼ね合い」/「戦時加算」という3重苦により、非常に複雑化している日本の著作権。

利用者にとってはGreat Wall過ぎて萎えます。

 

 

法の専門家の方々も、同様に悩んでいるらしい、この問題。

スパっと、旧法を引きずるのをやめて、日本にのみ課された不平等条約の誉れ高い

戦時加算も解消してもらいたいものです。

 

 

 

【結論】

 

すみません、出ませんでした。

うーん、本当のところどう考えるべきなのか。

日米貿易赤字に確実に加担しているであろう、この、ねずみ君。

こんなにBig Starなのだから、判例を待たずに見解が欲しいところです。

 

 

 


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