こんにちは!

Sygnite Tokyoの小林です。

少しご無沙汰しておりまして、すみません。

わたしはいたって元気です!

 

 

今年も残すところわずかとなり、恒例の何ともいえない焦燥感的なものを感じる季節と

なりました。それにしても、11月で夏日とか信じられません。

うっかり窓を全開にして空気の入れ替えなんぞをしては、風邪を引きそうになっております。皆様もどうぞご自愛下さい。

 

 

さて、本日ピックアップするトピックは、過去にも一度取り上げたことがありますが、

ここのところ示し合わせたかのように同じ質問が舞い込んできた「写り込み」についてです。

お問い合わせが多いということは、広告においてポピュラーな表現であり、トラブルになる芽も多いということだと思いますので、今後も角度を変えつつ、取り上げていければと思います。

 

 

「写り込み」に関するご相談のアプローチはいくつかパターンがありますが、どのケースも「写り込み」であってほしい、という気持ちが感じられるのが共通点です。

いずれも写す対象は著作権保護中の著作物である前提です。

 

 

【自己暗示型】

 著作物が写っていますが、あくまでも、たまたまなんで。

 意図的でなければ、大丈夫ですよね?

 

企画上、写っていた方が良い理由がありそうな気配がしますが、

大事なところを説明いただけないケース。

質問を重ねるとその著作物がKeyであることが判明しやすいのが特徴。

 

 

【説得型】

著作物を写してますけど、「写り込み」ってあるじゃないですか?

企画を見てもらえればわかると思うんですけど、その著作物をメインで撮る目的じゃないんで大丈夫ですよね?

 

気概が感じられます。

しかし「写り込み」の規定は思いのままに活用できるといった類のものではありません。

 

【リスク度探求型】                   

著作物が写るんですが(どちらかというと写したいんですが)、許可を取らない場合、

どの程度のリスクがありますか?

 

ひとまずお勧めしたいのは、リスク判断は、「高低」よりも「有無」で

判断された方がよろしかろう、ということ。

そして、できる限りのリスクヘッジや検討をした上で、

次善策としての「高低」であるべきかと思います。

 

 

これらは、非常に広告業界らしい、「為さねばならぬ」情熱が抑えきれないパターン。

 

もし、これらのご相談に対し「そうおっしゃるなら、大丈夫かな。」

「使用期間が短いからリスクは少ないかも。」などと背中を押せば、はたして使用に踏み切ることができるのでしょうか。

 

「法務や弁護士は何も判断してくれないんです。」という言葉はよく聞きますし、私たちは、そんな時に具体的なソリューションを提示したいとの思いでご相談に対応していますが、いかにも押してください、と言わんばかりの背中を見ると、反作用的にストッパーをかける気持ちもわからないではありません。

権利侵害の判断は、どの企画にも一律に適用できるようなものではありませんので、「今回のケースは、この要件によって問題無いです」の言葉が、えてして相談者には、「問題無いです」しか残らないものであることも影響していると思います。

ひとつのケースに対する判断が、伝言ゲーム的に間違って伝わってしまったら、法の専門家にとっては悪夢です。

 

 

それでは、そもそも「写り込み」という規定がなぜ生まれたのか、という、この規定の意義を理解した上で、「写り込み」に該当するケースとは、の順でお話を進めていきたいと思います。

 

 

ご存じのように「写り込み」であれば他人の著作物を許諾なく利用できますが、あくまでも例外的な規定であって、それは「権利者保護と文化の発展」のバランスの上で成り立っています。

いわく、

 

「その著作物の利用が本来の目的ではなく、付随的な使用であることから、権利者が

被る不利益が軽微だと考えられるから」

 

かつ、

 

「付随的な使用がすべて著作権侵害となるなら、生活に浸透した表現行為が制限され、文化の発展という著作権法の目的を阻害しかねないから」

 

                   ☆

 

「写り込み」に関する規定は、実は意外と新しく、2012年に制定されました。

2020年には、さらに改定が入り、今に至っています。

 

 

2007年 iPhoneが発売され、携帯電話の概念が変わりました。

2010年 日本語版Twitter(現X)でRT(リツイート)が可能になり、「Instagram」もリリースされました。

2012年 携帯電話が4G」化しました。

 

これらの技術的進化により、他人の著作物がより鮮明に、スピード感をもって共有されやすい土壌ができました。このままではだれもが著作権を侵害するリスクがあると同時に、技術の活用もままならないことになります。

 

そこで、現在「写り込み」に該当する範囲や行為は拡大し、条件も修正されました:

 

  • 「写り込み」とされる行為の範囲が拡大

今まで対象行為は「写真の撮影、録音および録画」についてのみだったのですが、

改訂後は、生放送、生配信、スクショ、コピペ、模写、CG化なども対象行為になりました。

 

 

  • 「分離困難」の要件は削除

「写り込み」であるかどうかの判断において、撮影対象から「分離することが困難であること」が必要でしたが、この要件が不要になりました。

例えば親戚が一堂に集まった記念写真に写る孫が、キャラクターのぬいぐるみを抱き抱えていたというような場合、改定前は、その人形は「分離困難」とは考えられなかった可能性がありましたが、改定後は、「主体(家族の肖像)に付随した軽微は構成部分(1人の持ち物)である限り」、著作権者の被る不利益は少ない、いう考え方のもと「写り込み」に該当すると判断できる可能性が生まれました。


ただし、広告制作はすべてが意図的であり、広告主の経済活動にあたるため、必ずしも

一般的な解釈が当てはまらない場合があります。

 

 

 

ここで、今一度「写り込み」の該当要件を確認しておきましょう:

 

①主たる被写体に付随して写りこむ事物/音であること

軽微な構成部分にとどまること

正当な範囲内であること

 


さて、それでは具体的に以下のような映像作品を制作する場合、「写り込み」に関して

どのように判断していくべきか、一緒に考えてみたいと思います。

判断対象は<イラストポスター>です。

 

Ep1:

主人公である「相須大志」君は、半導体の会社の新人研究員。

毎日疲れて帰ってくる部屋の壁には、彼の尊敬するアインシュタインがアッカンベーをしたイラストポスター(著作物とします)が貼ってある。

彼の部屋にある小物なので、机や椅子、コーヒーカップなどと同様に写り込んできますが

それ以上特にフィーチャーはされていません。

 

Ep 2:

忙しい毎日と、多少偏屈な性格のため、彼には友人と呼べる友人がなかなかできない。

大して変化のない日常を過ごしていたある日、幼稚園の時になぜかいつも自分に付きまとっていた子とよく似た男性と道ですれ違う。

「彼」はなにかと自分に突っかかっては、アッカンベーをして、走って逃げる子だった。

 

この日以来、コンビニで遭遇したり、電車が一緒だったりするようになり、いまやその「彼」だという確信があったが、仲が良かったわけでもないし、話かけてみようという気まではおきなかった。

 

Ep3:

ある日、後ろから誰かに肩をたたかれ、振り返ると大きなアッカンベーをしながら、からかうように笑う「彼」が立っていた。

それからは目が合えば二言、三言交わすようになり、1か月くらいたったころ、会社から帰宅すると、コンビニの袋を持った「彼」が扉の前で煙草をふかしながら立っていた。

 

「彼」の登場による大志君の日常の変化に、アインシュタインのポスターが毎回、効果的に使われ、その使われ方の意外性を楽しみにする視聴者も回を追って増えているようです。

 

 

さて、私のなけなしの創作能力も限界なので、ストーリー設定はここまでとします。

 

 

Ep1では単なる装飾小物(付随的)でしたので、気づく人もいる程度の使われ方でしたが、回を追うごとに大きく撮影されたり、尺も長めに映ることがあり、露出頻度も高くなっていきます。どうやらストーリーにも関係がありそう。

 

こうなってくると作品における<付随的>な使用とは言えないでしょう。

 

<軽微性>についてはどうでしょう?

作品全体の中で該当著作物が占める割合(「面積」や「時間」で考慮)の他、著作物の再現精度、作品における著作物の重要性などを考慮して判断されます。

今回の印象的な使われ方は、軽微な使用には当たらないのではないかと思います。

 

最後に<正当な範囲内>か、どうかです。

利益を得る目的の有無、該当著作物が果たす役割などをもって判断します。

 

まず、「利益を得る目的での使用かどうか」ですが、本作品の制作自体は営利事業ではあるものの、手にする利益は制作に対する対価であり、ポスターを見せることの対価ではないので、一つめはクリアできるのではないかと思われます。

次に、作品における「該当著作物の重要性」はありそうですので、要件外の使用になるだろうと考えます。

 

結論としては、“取り上げられ方によって「写り込み」に該当するかどうかの判断は変わってくる”ということになりますので、要件に照らしてご検討いただければと思います。

 

ドラマのストーリー仕立て、という下手なチャレンジをしたことにより、逆に理解の妨げになってしまったのではないか、という虚脱感に見舞われていますが、次回取り上げるときまでに腕を磨いておきます。

 

 

本日は、ここまで。

また次回をお楽しみに。

 


 


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