皆様、こんにちは!

Sygnite Tokyoの小林です。

 

 

私事ではありますが、デジタル音痴です。

 

お恥ずかしながら、

「パソコンが動かなくなりました。」

「お使いの環境を教えて下さい。」

1LDKです。」という会話にシンパシーを感じるレベルです。

 

しかし、そんな私も気が付けばNewsletterの配信、電子契約への移行、オンラインでプレゼンや名刺交換という、デジタルウェーブのただなかにおります。

日々行われる機能アップデートに対し「便利!」よりは「厄介~(泣)」と感じる日が来るのでは!と慄きつつ、ふと、映画などで頻繁に描かれる「機械に支配された世界」とは、「ある日突然機械が意思を持つほどに進化し、制御できなくなった世界」ではなく、「自分の知識、興味が新しい技術に追いつかなくなった世界」ということなのでは?と思い当たり、今まで観たいくつかのSFを、脳内でそっとホラーカテゴリーに移し直しました。

 

今回はそんな私が「メタバースにおける権利」について、思ったことをメモ的に残しておこうという、ちょっと今までとは毛色の異なる内容でお送りします。

メモを配信するんじゃないよ!というご意見もあろうかとは思いますが、なんせ、まだまだ定まらぬ世界、それがメタバース!

今は考察の入り口くらいの感じでお付き合いいただけたら幸いです。

 

 

さて、メタバースは「たくさんの人が同時に参加できる、ネット上に構築された3次元の仮想空間」ですね。私が初めて「こういう世界かぁ」とリアルに感じたのはスピルバーグ監督の映画「レディ・プレーヤー1 を観たときでした。森崎ウィン君演じる「トシロウ」のアバターが三船敏郎さんから生まれたもの、というのが観るきっかけだったのですが、その他にも80’Sカルチャー満載のクロスオーバーワールドが存分に繰り広げられており、「け、権利処理、すげー!」という、違う視点でもワクワクした作品です。

(権利処理だけで数年要したとも。)

個人的にはウィン君のセリフ「俺はガンダムで行く!」に鳥肌でした。

 

驚くことに、設定は2045年!

SF映画って、もっとずっと先の未来が描かれるもんだと思っていましたが、手が届きそうなほど近すぎる未来です。

 

とはいえ、ビジネスとしてのメタバース環境は、まだ整備されているとは言い難い状況。

当然、そこでの権利だって同様です。

 

利用規約のほか、運営主体や利用者などによって日本とは異なる準拠法が適用される可能性もあるでしょうし、著作権を含め、商標権、意匠権など登録国別に発生する権利については、日本法では保護されないことも考えられます。

 

まったく新しい世界が、今までとは圧倒的に異なるスピード感で構築されていく中、法整備よりも先に現実の使い勝手がルールを決めていくこともあるかもしれません。

メタバースは現実と異なる世界なのか、はたまたクロスオーバーする世界なのか、そもそも現実を生きるとは何なのか、考え出すと地面が揺らぐような感覚を覚える問いです。

とはいえ、勢い任せに風呂敷を広げすぎると、それこそ着地する地面を見失いそうなので、まずはこの議題を取り上げるきっかけをご紹介。

 

ある日、MetaBirkinsの名称でエルメスのバーキンがNFT化された可愛い画像を見つけました。

興味を引いたのは可愛さもさることながら、本当にエルメス?という点です。

そして、進出の速さを競うには、ちょっと危うい世界かも、とも。

 

メタバースの中にデジタルツインを置く場合、もしくは空間自体がデジタルツインの場合(=ミラー・ワールド)の権利処理ってどうでしょう?

 

 そんなわけで、本日はメタバースにおける「商品の権利」について、いくつかの側面から考えてみたいと思います。

 

 

(1) 著作権

フィジカルの世界では、服などの実用品はそもそも「応用美術」とされ、著作権の保護対象とはされにくいものです。よって、メタバース上で再現しても著作権侵害にはなりません。(例外有り)

 

(2) 商標権

メタバース上で、店舗やアイテムなどにロゴマークを表示するときがありますが、

次のような理由から、商標権侵害とならない可能性があります。

 

a)「指定商品・役務」:

商標権は、登録の際に対象商品や役務(サービス)を指定する必要があります。

例えば、“Sygnite”というブランドを立ち上げ、「被服」を対象に指定した場合、

同じ名称の文房具を販売しても、必ずしも商標権侵害にはなりません。

これと同様に、現実世界の「被服」とメタバースにおける「衣服のデジタル画像」は異なると判断され、商標権の効力が及ばない可能性があります。

 

(b)「商標的使用」:

商標権侵害は、その使用が自他商品等識別機能または出所表示機能を生じさせる場合に

認められます。

メタバース上のアイテム売買は仮想空間内で完結します。中にはダウンロードできず、

利用はログイン中のみ可能というものもあります。

このようなことから、メタバースで取引されるアイテムに商標を付す行為は、商標的使用にはあたらず、他人の商標を使用したとしても侵害とならないという見解もあるようです。

 

() 意匠権

意匠権は、その用途、機能に従った使い方で用いることに及ぶため、メタバース上での使用には、意匠権が及ばない可能性があります。

 

() 不正競争防止法

メタバース上で、他人の「周知」又は「著名」な「商品等表示」を使用した場合には、

不正競争になり得ます。

「商品等表示」=業務に係る氏名、商号、商標、標章や商品の容器・包装その他の商品

 又は営業を表示するもの

 

(a)   混同惹起

 広く知られた他人の商品等表示を無断で使用し、需要者を混同させるおそれを生じさせた場合には、不正競争に該当する可能性があり、「商品等表示」を無断使用された商品がメタバースに進出済みであれば、「混同のおそれ」が認められやすいように思います。

ただ「商標的使用」と同様に、そもそもメタバースでの表示が商品等表示の「使用」にあたるか否かといった問題はあります。

 

(b) 著名表示冒用

 著名な「商品等表示」については無断で使用した場合、「混同のおそれ」がなくても、不正競争になり得ますが、混同惹起と同様に「使用」といえるかどうかという点があります。

 

(c) 形態模倣

 「模倣」とは、他人の商品の形態に依拠して「同一の形態」の商品を作り出すこととされています。ちなみに「商品の形態」とは、商品の形状のことをさし、形状との結びつきがある場合は、模様、色彩、光沢なども含まれると言われています。

 メタバース上での表現が「商品を作り出す」ことになるのか、またその表現は「形態」と言えるのかどうかが気になる点です。

 

さて、こうしてみると現状メタバースは、現実世界とクロスオーバーしない、フィジカルではない別の世界という段階なのだな、とわかります。

メタバースの成熟に合わせ、ぐっと法律も守備範囲が広がって現実と遜色ない権利保護が進むのかもしれません。

 

最近は、NIKEなどアパレル系メーカーを中心に、メタバース上の利用を踏まえたような商標出願も行われているようです。

 

 

さて、話はMetaBirkins に戻ります。

このデジタルバーキンを制作、販売したデジタル・アーティストのメイソン・ロスチャイルドさんは、しっかりエルメスに訴訟を起こされておりました。

エルメスが米国特許商標庁で登録している商標は「バッグ、革製品等」についてであり、NFTは含まれておりません。よって、MetaBirkinsとの間に混同が生じ得るのか、という新たな論点であったことから、注目されていました。

 

そして「NFT分野における商標権侵害」という新たな論点について2022518日に、

ロスチャイルドさんによる「エルメスによる申し立て」の却下は認められなかったようです。これから続くこの訴訟の続報が気になりますね。

 

さて、長くなりましたが、次回は同じくメタバースにおける建物について考えてみたいと思います。

 

本日はここまで!

お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

©Sygnite Tokyo Inc.

 

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