皆様、こんにちは!

Sygnite Tokyoの小林です。

 

 

 

気温も緩み、一気に春めいてきた関東の桜開花時期は、今年は3月20日頃とのこと

です。私が幼かった頃より1か月ほど早い開花です。

 

初々しくランドセルを背負って桜の木の下で写真撮影、というビジュアルは、今でも

どこかしらで使われている気がしますが、今の子供たちは、少し不思議に思ったり

しないのでしょうか。

今後、さらなる温暖化によって2月に満開になろうとも、新しいことの始まる4月と桜の

組み合わせは、日本人のDNAに刻まれている変わらぬ風景なのかもしれません。

 

 

さて、前回は「メタバースにおける商品の権利」についてお送りしましたが、今回は

「建物の権利」と「アバター」について考えてみます。

 

まず建物ですが、空間の再現というのは結構始まっているのですね。

 

身近なところで調べてみたら、私の古巣である伊勢丹が展開している、スマートフォン向け仮想都市空間サービスREV WORLDS仮想伊勢丹新宿店や、弊社所在地の渋谷区では、渋谷区公認配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」がありました。

また一昨年、熱海市の伊豆山で起きた土石流の被害規模が早々に掴めたのは静岡県独自の

取り組みVIRTUAL SHIZUOKAが非常に有効だったのだそうです。

 

 

さて、建物については過去のNewsletter でも触れたように、様々な視点から検討が必要ですが、まずは著作権について。

 

 

 【建物の権利】

 

(1)著作権

 

使用したい建築物が著作権の保護対象であったとしても「実際に同じ建築物を建てる」

といった場合でなければ、著作権は及びません。

また、「映り込み」や「風景の一部として」であれば、問題はありませんでした。

広告においては、あまり無い事例ですが、ポストカード、カレンダーとして販売するというような「専ら美術の著作物を販売目的で複製する場合」には、著作権者の承諾が必要となり得ます。)

 

そう、今のところは「現実世界における、建築物としての複製」が著作権の侵害にあたる

わけで、メタバース上で再現しても、「建築物としての複製」にはあたらないのです。

しかし「映り込み」については、フィジカルの世界のまんまとはいかないかもしれない点がありますし、「同一性保持権」への配慮も必要です。

 

なぜなら、仮想空間を歩き回ることにより、建築物や、そこに掲載されている実在の広告などを大きく表示することが可能なため、今までのように映り込みとは言えない事象がおきるからです。また「建築物を破壊する、装飾を施す」といった演出がしやすくなりますが、

これらは著作者の同一性保持権(人格権の一つです)などが問題となる可能性がありますし、さらに、メタバース上の建物を販売目的で利用した場合には、著作権者の承諾が必要となるような気がします。

 

 

 

(2) 商標


建築物の中には「東京タワー」や「東京スカイツリー」のようなランドマーク的建築物のほか、「かに道楽」のような看板など、その立体的形状などが商標登録されているものがあります。


    東京タワー

   (5302381号

   東京スカイツリー

   (5476769号

 
 
 
 
 
    かに道楽
   (6041906号

 


このように、商標登録されている建築物であっても、単にメタバースの背景としての表示であれば、おそらく商標権侵害にはならないと考えられます。

なぜなら商標権の侵害は、「出所を明示、又は他の商品・役務と区別するような使い方(いわゆる「商標的使用」)の場合」とされているからです。

 

よって、メタバース上で商標登録された建築物を店舗として使用し、物を販売する場合は「商標的使用」と判断されるのではないかと思います。

 

 

(3) 意匠

意匠権とは、デザインを保護する権利ですが、20204月から建築物や内装も意匠登録することができるようになりました。  

意匠権は、登録意匠と同一又は類似の意匠に及び、意匠の「使用」とは、その用途や機能に従った使い方で用いることをいいます。現実世界の建築物や内装は、リアルな生活空間ですが、メタバース上の建築物や内装では実際の生活はできません。

よって意匠登録された現実世界の建築物や内装を表示しても、用途や機能が異なるため、意匠権侵害にならないのではないかと思います。

 

 

【アバター】

 

(1) 著作権 / 肖像権 


メタバースでは、ユーザーの分身としてアバターが様々な活動を行います。

アバターのデザインを考えたり、選んだりするのはメタバースの楽しみの一つですよね。
自分はいつも空間に紛れるような地味なキャラクターを作りがちです。

スパイなどへの憧れが出てしまうのではないかとひそかに思っています(笑)

 

現実世界の人物には誰でも肖像権があり、タレントなどの著名人にはパブリシティ権(肖像を商業的に利用する権利)もありますので、自分のアバターとして、他人の肖像を使えば、肖像権の侵害になるでしょうし(なりすまされて、あんなことや、こんなことをされたりするのは考えただけでも怖いですよね)、既存のキャラクターなどを許可なく使用した場合は当然、著作権侵害となります。

 

では、オリジナルで作成したアバターを使う場合はどうでしょう?

完全にオリジナルのアバターであれば、作った人に著作権が帰属すると考えるのが一般的かと思いますが、多くはメタバースの運営者が用意した各種パーツを組み合わせて作るアバターだったりします。

 

その場合、使用者は単に組み合わせただけと解され、運営者に著作権は残されるということも考えられますので、利用規約の確認も必要です。

 

 

 

(2) 実演

 

アバターは歌ったり、踊ったりすることができます。

 

バトルロイヤルゲーム「Fortnite」内で2020年4月に行われたTravis ScottのバーチャルLIVEは10分にも満たない尺だったにも関わらず、バーチャルであることを存分に活かした技術を用い、同時接続数1230万を記録し、話題になりました。

 

こうした著作物の伝達行為は、著作隣接権(実演者などの権利)として保護される可能性があります。

著作権法上の「実演」は、著作物を、演劇、舞踏、演奏、歌唱、口演、朗詠その他の方法で演ずることのほか、著作物を演じてはいないが、芸能的な性質をもつ行為(例:奇術、曲芸、腹話術、物真似)も含まれます。

 

アニメにはキャラクターを演じる声優の音声が登場したりしますが、声優も実演家です。

であるならば、アバターを介しての歌唱も「実演」に該当する場合があると思われます。「竜とそばかすの姫」の主人公Belleなんて、Official YouTubeチャンネルをもっています。


では、ダンスなど体を動かす表現物についてはどうでしょうか。

現状では、プログラムとして組み込まれた動きなど、制限されていることが多いと思いますので、その場合は「演じる」といえないように思いますが、今後モーションキャプチャーなどにより、ユーザーの動きがダイレクトに反映されるようになれば、著作隣接権の保護対象になるのかもしれないという気がします。

 

 

ちょっと苦手なデジタル領域ですが、考えてみるのはいい勉強になりました。

 

ふぅ。

 

本日はここまで。

次回をお楽しみに!

 

 

 

 

 

©Sygnite Tokyo Inc.

 

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