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サバイバーで写真家の木口マリさんは、闘病中に「子宮と卵巣と、それに付随するものをすべて取る」と言われたころ、踏切の夢を見たそうです。
夕暮れ時、木口さんは1人、小さな踏切の前に立っていました。なぜか重く沈み込むような空気が漂っています。カンカンカン。金づちを叩くような警報音。気づくと、何もかも忘れて、フッと足を踏み出していました。
轟音ととともに巨大な電車が現れ、目の前を勢いよく通り過ぎます。驚いて動くこともできず、心臓はバクバクでした。轢かれなくてよかった。安堵したのも束の間、何度も同じことを繰り返してしまうのです……。
夢を通じて、自分の心の奥底がギリギリの精神状態であることを自覚したそうです。
このとき木口さんは、「夢が無意識に心を整えてくれるのと同じく、人知れず心を回復させる能力が、人には備わっているんじゃないか」と考えたそうです。辛さに抵抗せずに身をまかせ、ある程度気持ちが落ち着くのを待ちます。水中に舞い上がった塵が、ゆっくりと湖底に沈んでいくのを待つように。
心の「治そう」とする力を信じてみるのです。「心穏やかに」。木口さんの友人が贈ってくれた言葉です。優しい言葉ですね。気持ちが楽になります。