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東京大学医学部附属病院に「カバーメイク・外見ケア外来」があります。
立ち上げたのは、乳腺・内分泌外科の医師で、がん相談支援センター副センター長の分田貴子(わけだたかこ)先生。
「治療なんだから、患者さんも困っていない」
ある治療でひどい跡が体に残ってしまった患者さんを目の当たりにした分田先生が、周囲の医師に問いかけたときに返ってきた言葉だそうです。
「本当に、そうだろうか」
そんな疑問が原点でした。インタビュー調査をすると、「跡が無いに越したことはない」「半袖が着られない」「温泉に入りたいけど入れない」といった声が集まりました。
分田先生は、カバーメイクの研究を始めます。渡英して研修を受け、さらに発展させ、日本のメーカーと協力して製品開発につなげました。2018年度には、日本対がん協会のリレー・フォー・ライフ・ジャパンへの寄付をもとにした助成金も受けました。
外来で診療を開始したとき、最初に受診したのは、手術の傷跡のあるサンバダンサーの女性。「もう一度、カーニバルに出たい」との思いがあり、再び踊れるようになりました。
緩和ケアが寿命を延ばすことは知られています。いま、分田先生は、外見ケアで元気が出ることが寿命を延ばすことを研究したいそうです。
笑いは免疫力をアップするという研究があります。エビデンスがあれば、外見ケアが医療の一環になる時代が来るかもしれません。