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国立がんセンターにも勤務していた田中雅博先生は、住職をしながら診療所で、緩和医療や看取りにも力を注ぎ、終末期の患者さんの安寧をサポートしてきました。いわば「看取りのスペシャリスト」です。
そんな田中先生が、2015年12月、末期のすい臓がんとわかりました。NHKのBS1が、究極の理想の死を記録しようと密着取材を始めます。それは、2017年3月に田中先生が70歳で亡くなるまで、450日に上りました。
奥さんも医師で僧侶、娘さんも医師という一家です。田中先生は、意識がはっきりしている時に、いざとなったら蘇生術はしないと決めていました。
たまたまこのドキュメンタリー番組を見ていた都立駒込病院名誉院長の佐々木常雄先生は、「田中先生は生への執着を捨てられたのだろう。平穏な死を迎えるに違いない」と予想したそうです。
ところが、予想は見事に覆され、意外な展開を迎えます。
佐々木先生はそこに、「他ならぬ、自分たちの死」の本質を見ます。世界的ベストセラー『死ぬ瞬間』で知られる、あのキューブラー・ロスの最後の日々も思い浮かべながら――。
いったい、田中先生は、どんなふうに旅立ったのか? レジェンド医師はそこから何をすくいとったのでしょうか?