がんマンは夕陽に向って合掌す
2016年にステージ4の前頭洞がんとわかったジャーナリストの牧村健一郎さん(69)が作った川柳です。
朝日新聞で長く文化記者だった牧村さんは、「朝日川柳」の選者も務めていました。入院中、毎朝きまって、病院の廊下の大窓から、日の出を拝んでいるおばあさんがいました。その気持ちが、よく分かったそうです。1965年の西部劇映画「夕陽のガンマン」になぞらえてこの句が生まれました。
牧村さんのがんは、文字通りの希少がん。副鼻腔周辺に広がっており、脳にも一部、浸潤があったようです。20時間に上る開頭手術を受けて、おでこも少しくぼみました。
手探りで病気と向き合い、綿密に記録を続けました。そこからは、希少がんの患者・家族にとっても、ほかのがんと向き合っている方にも通じる心構えが浮かび上がってきます。
生家が松竹大船撮影所の目の前で、1歳にして杉村春子と“共演”したという“名優”の記録を5回をめどにお届けします。