◼︎ Column 工房長のサイケデリックな日々 Vol.28
テーマ「オドロキノコラボ」
何年か前の展示会(IFFT:東京国際家具見本市)で、
カリモク(カリモク家具株式会社)の家具制作部門のスタッフだと名乗る方々が工房のブースにやってきたことがある。
カリモクといえば、年商200億円越えの日本を代表する家具メーカーの1つだ。
その時私は、「ヤベっ、本物が来た!」と思わず口に出してしまった...
ご存知の通り、
石巻工房の家具スタイルはDIYとデザインが基本コンプセプトになっている。
DIYと言っても、
組み立てKITを提供しているわけではないので(一部KIT商品もあるが)、
時として誤解を招いてしまう事があるのだが、
ラインナップの殆どは完成品としての家具を販売している。
では何を持ってDIYなのかと言えば、
さほどの技術や特殊な工具がなくともある程度の形が作れてしまうというシンプルさ。
言い換えれば、
作ろうと思えば、クオリティはさて置き、誰でも作ることの出来る家具であり、
そこに、デザインというスパイスを効かせたのが石巻工房の特徴でもある。
故に、
直線的な傾向のデザインが多くなり、
各部材の結合はビスで直接固定するといったものがほとんどで、
ビスの頭が露出し、時には鉄材を使って構成される事もあるが、
その制作工程は材料の切り出しから磨き、組み立てまで全て手作業での工程を踏む。
賢明な読者は既にお気づきであろう、
詰まる所、ハイテクノロジーな精密加工を極めて苦手とするアナログな家具屋。
「5軸制御CNCルーター」って新しいスイーツの名前ですか?
それが石巻工房の正体なのだ。
件の国際家具見本市。
日本の名だたる家具メーカーの方々が出展されている家具業界の晴れ舞台に、
どこの馬の骨とも分からない新参者が毎年結構なスペースを使って出展してるし、
しかも、毎回トリッキーなブース構成で、
髭面で琴風似のおおよそ営業マンには見えない風貌のオッさんが立ち、
それまでの家具の常識を覆すプロダクトが並ぶ石巻工房とかいう家具メーカー。
「出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打たれない」を地でいく石巻工房は、
他の同業者からも”ちょっと気になる存在”になっていたらしい。
冒頭でやってきたカリモクの職人の方々に工房の説明をやや自虐的に説明すると、
意外にも「一度見てみたかったんですよ」との答えが返ってきた。
素でナンデ?と聞き返すと、
「僕たちは、ビスを見せたくても見せられないんです」
「ホームセンターで売っているカラーボックスもビスをシールでわざわざ隠してますよね」
「正直言って羨ましい...」
そんな事を言われるとは予想もしていなかったので、とても驚いた事を今でも覚えている。
と同時に、家具の業界ではビスを見せる事はタブーであるという事も知った。
鮨屋で言えば、“秋刀魚を刺身で食べる事”と一緒か。
数年前までは刺身で食すなど、それこそタブーだったのだから。
さて、
それから数年後の今年、
変態家具...もとい、
「Metamorphosis」な石巻工房とカリモクとのコラボレーション企画が始動することになった。
その名も、「石巻工房 by karimoku」
兼ねてから世界展開しているメイドインローカルの謂わば日本版となるこの試みは、
「石巻工房のプロダクトをカリモクが作ったらどうなるの?」
から始まった。
カリモク副社長の加藤洋氏曰く、
「普段の家具づくりでは用いない個性的な樹種「メイプル」
(木そのものが出す樹液の濃淡と、表情豊かな虫喰い材)を使ってみた。
すると、余白とラフさが特長の石巻工房のスツールとは似て非なるものになった。」
「つくってみて、シンプルなプロセスでも家具として十分使える、というのは新しい発見だった。
むしろシンプルだからこそ、特殊な木材が格好よく使える」
と、新しい可能性を見出して頂いた。
中華料理店で食事を共にした際、
木材や家具に対する深く熱い思いを少年のような輝きの目で話して頂いた加藤氏。
かたや、
コラムの締め切りと制作、納期に追われ、濁った瞳の私とでは雲泥の差があるのだった。
今回のIFFTでは、
12コマ(12M x 6M)という大きなブースを活用して、
カリモクと石巻工房のコラボレーションを正式に発表する機会を得た。
カリモクで出来ない事を石巻工房で。
石巻工房で出来ない事をカリモクで。
その全貌は、
是非とも会場に足をお運び頂き、体感して貰えると嬉しい。